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このコーナーでは、暮らし、仕事、社会、私たちの身近な
ところにあるデジタル化の動きを紹介していきます。
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2023 01.09
災害現場などでの活躍が期待されるサイボーグ昆虫

このコーナーでは「暮らし、仕事、社会」、私達の身近なところにあるデジタル化の動きをご紹介しています。

去年、理化学研究所、早稲田大学、シンガポール南洋理工大学の研究チームが生きたゴキブリに極薄の太陽電池や無線通信装置を背負わせた「サイボーグ昆虫」を開発したと発表しました。開発したのはプロトタイプですが、今後センサーやカメラを搭載するなど工夫、改良することによって人間が入り込めない災害現場の調査や環境モニタリングなどでの活用が期待されています。

今回は、このサイボーグ昆虫の研究開発をしているシンガポール南洋理工大学の佐藤裕崇教授と早稲田大学の梅津信二郎教授にお話を伺いました。

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まずは、そもそもなぜ、サイボーグ昆虫なのか、佐藤教授によると、実はこんな事情があったそうです。

「人工のロボットや機械の場合は、どうしても歩くだけ飛ぶだけでも、非常に大きなエネルギーが必要なんです。簡単にいいますと、燃費が悪いということですね。機械の場合だと1000ミリワット、数百ミリワット必要なんです。これは小さな数字ではなくて、かなり大きい数字です。というのも、小さなロボットや機械には小さな電池しか載せられません。コイン型の電池だとか、小さいリチウムの電池とかありますけれども、それでも電池が小さいのに、機械は非常にパワーがいる。燃費が悪いので、その小さな電池だと歩くだけで、3分くらいで止まってしまうんですね。
一方で昆虫を使えば、昆虫が自分で歩いてくれるので、背中に乗せた電池の電力を使う必要がないわけです。もちろん、電気刺激をしたりするので、その刺激のための電力というのは必要なんですけれど、それは0.2ミリワットぐらいなんです。さっきの10000分の1とかの数字になるわけですよ。そうすると、もう歩くことに対して、ほとんど電力が必要なくなります。そうすると、背中にのせた小型の電池のエネルギーをセンサーやカメラ、無線通信など他の電力が必要な機能に使うことができる。なので、歩くのは虫に任せる。センシングとか無線通信だとか、そういうことは、背中に乗せた機械ボードに任せるということが、サイボーグ昆虫の1番のメリットです」

佐藤教授によると、サイボーグ昆虫には、さらにこんなメリットもあるそうです。

「レスキューの隊員と何回もコミュニケーションをとっていて話を聞くと、瓦礫の下を探索するには、やはり小型の探索機が必要なんですね。今、その技術が全くないので、レスキューの隊員の方々の経験で、どこにどれくらいの生存者がいる、どこを捜索しなければいけないというのをやっているそうなんです。なので、探索機は非常に必要だと。しかもそれが大量に必要なんです。
例えば1回の災害が起きたら、それが1000とか2000とか必要。そうすると、先ほど小型のロボットのデメリットの話がありましたけれども、電力以外のデメリットとして、細かいので非常に小さい部品を組み上げて作らなきゃいけないので、大量生産が大変なんですね。サイボーグ昆虫は、大量に自然から生み出されるゴキブリに、ボードは大量生産するのはそれほど大変なことではありませんので、1000とか2000体を即座にレスキューに使うというのは、非現実的ではない、現実的だということですね」

ただ、まだ課題もあって、梅津教授によると、こんな課題や反対意見もあるそうです。

「倫理的な話で、ELSI(エルシー)という分野がありまして、我々は理系的な観点からだけでなく、文系的な倫理的な尺度からも同時に研究を進めている状況にあります。それも踏まえて、サイボーグ昆虫のバージョンアップを図っていきましょうと。技術的に改良して、どんどん実用化に向かうという理系的な軸と、そして文系的な、ゴキブリは嫌いですという人に対して、どういう風に受け入れてもらえますかと。ゴキブリは嫌いだったけれど、そんなに活躍してくれるので、逆に申し訳ないという風に思ってくると、ちょうど逆さまのような感情ですけれども、色んな人がおります。そういったどういう人からも受け入れてもらえる、ぜひ欲しい技術だよねと思ってもらえるような、そういう風な意見を取り入れての技術改良を進めている状況であります。ですので、こういう風なことをどんどん進めていって、技術的なものが完成した後、色々ちゃんとしたことが社会的に導入されるというような方向に向かっていってくれれば、と思っております」

佐藤教授も「同じ能力を持つロボットの開発には、まだ時間がかかる。災害はいつ起こるかわからない、待ってはくれないので、現状で可能性の高いサーボーグ昆虫の研究を進めている」とお話されていました。また、「僕らの夢は、災害が起きた時の、行方不明者をゼロにすること。もちろん、これは現実的ではないと思いますが、でも、それに向かって、うちの学生もスタッフもすごく真剣です」と、おっしゃっていました。

佐藤教授、梅津教授、貴重なお話、ありがとうございました。

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