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このコーナーでは、暮らし、仕事、社会、私たちの身近な
ところにあるデジタル化の動きを紹介していきます。
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2023 06.26
完成後の音の響きを設計段階で疑似体験できる室内音場シミュレータ

このコーナーでは「暮らし、仕事、社会」、私達の身近なところにあるデジタル化の動きをご紹介しています。

今回取り上げたのは、劇場やホールの設計に関するデジタル化の動き、建設業界のDXです。
高品質な音響が必要とされる劇場やホールの完成後の音の響きを設計段階で疑似体験できる室内音場シミュレータというシステムです。

今回、お話を伺ったのは、この室内音場シミュレータ「STRADIA(ストラディア)」を独自で開発した竹中工務店 技術研究所の建設基盤技術研究部 主席研究員 鈴木和憲さんです。
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改めて、「STRADIA」とはどういったシステムなのでしょうか?

「STRADIAは、設計図の段階で、完成後のコンサートホールや劇場の響きを実際の音として疑似体験するシステムになります。最初にホールの設計図から、ステージ上の楽器から客席までのあらゆる音の伝わり方をコンピューターで解析します。壁や天井からの音の反射や散乱などを考慮して、客席にいる人の耳に届く音の時刻、方向、大きさ、響きを予測します。この予測した音の特性を実際の音楽の響きに変換するために、無響室と呼ばれる響きのない部屋で録音した楽器の音をかけ合わせます。
STRADIAが様々な方向から人に届く音を視聴室内の多数のスピーカーにより再現しているのに対し、可搬型音場シミュレータはヘッドホンを用いて再現します。各スピーカーから耳の入口までの音の伝わり方を解析して音を合成し、人の頭の動きや向きを常に追跡することで、ヘッドホンでも臨場感のある音を試聴できるようにしています」

鈴木さんによると、劇場やホールの設計をする際に、図面の段階では完成後にどんな音になるのかは分からないそうで、設計の段階で音の響きがどんな風になるかというのを予測するそうです。ただその際に、数値やグラフで示すことは可能なのですが、それだけだと、お客さんにはどのような音になるのか?イメージしづらいということで、STRADIAや可搬型音場シミュレータを開発したそうです。
可搬型音場シミュレータは、ヘッドホンと一緒にヘッドマウントディスプレイも同時に装着可能で、頭を動かした時に、音と同時に映像も同じように動くのでより高い臨場感を体験できるそうです。

このシステムですが、具体的にはこういうふうに活用されているそうです。

「特に、響きもそうなんですけれど、よくお客さんのところにプレゼンテーションするのは、例えばホールの壁とか天井、あるいはこういった形状を変えた時に、その音がこんな風に変わりますよとか、現状のままですと変な音がこう返ってきて、それに対してこういう風にするといいですよ、というような提案みたいな形で使うことは結構あります。単純にこんな音になりますと聞いても、良いとか悪いとかはなかなか判断できないと思うので。こうすることによって、音響障害、悪い音が良くなりますよ、こうすることによって聞こえやすくなる、そういったものを実際に音として体感してもらうというような使い方をすることが多いです」

最後に、今後の展開と課題について鈴木さんに伺いました。

「どうしてもパソコンの精度に依存するところがありまして、ホールみたいな大きな空間をきちんと計算しようとすると、やはりスパコン並みのコンピュータの性能が必要になります。スパコンでも結構時間がかかるような特に高い周波数まできちんと計算しようとすると、普通のパソコンではとても計算しきれないぐらいの精度なので、今後、スパコンなどの機器が手軽に使えるようになってくる、あるいはパソコンが並列計算等で十分普通の環境でも大規模な計算ができるようになってくると、その辺の精度というのはだいぶ上がってくると思います。それによって今予測している音に関しても精度がどんどん上がってくると考えています」

鈴木さん、貴重なお話、ありがとうございました。

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