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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

20.11.11

『三菱ジェット、凍結』について

null今知っておくべき注目のトレンドをネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します!!

今日は、元経済産業省の官僚で制度アナリストの宇佐美典也さんにお話を伺いました。
宇佐美さんに取り上げていただく話題はこちら!


【三菱ジェット、凍結】


田口:宇佐美さん、よろしくお願いします。Perfumeではあ~ちゃん推し?


宇佐美さん:はい、あ~ちゃん推しなんですよ。Perfumeを見た時に“未来が来た!”と思いましたよね!(笑)


田口:(笑)。そう、本当に!未来を今でも走り続けているところですよね。
さて、今回、お話を伺うのは、『三菱ジェット、凍結』についてです。


エリザベス:三菱重工業は先月30日、国産初のジェット旅客機『三菱スペースジェット』の量産化計画を当面、凍結すると発表しました。これにより、国産初のジェット旅客機の実現はさらに遠のくとみられています。


田口:6度の延期の末、凍結という決断に至ったわけなんですけれども、この背景というものをあらためて教えていただけますでしょうか?


宇佐美さん:『三菱スペースジェット』、通称『MSJ』ですけど、経緯について振り返りますと、2003年に経済産業省が“操作が容易で燃費が良い”という次世代の小型ジェット機開発のために開発プロジェクトを立ち上げて、これに三菱重工が応募したことに始まるんですね。このプロジェクトは計10年間、2013年まで続きまして、試験機の開発を目指したんですけど、なかなか技術的困難が大きかったことと、市場環境が変わって、当初、30~50席くらいのクラスを目指していたのを、途中で70~90席くらいに変更したことで、設計変更が起き、実機開発まで至らずにそのあとは三菱重工が引き継ぐかたちでここまで本格的な事業化まで取り組んできたんですね。
当初、2013年の市場投入を目指したんですけど、その時は日本の技術、日本の部材を中心に設計しようとしたんですけど、やっぱり、先行する諸外国と技術・経験の格差は想像以上に大きくて、量産にあたって必要な、『型式証明』というものが取れなかったんですね。それで、たびたび、計画延期をしたんですけども、ここでなんとかテコ入れしようと、2016年くらいから本格的に先行する外国企業、特にボーイングですね、そこと連携して、外国人比率も増やして、設計も大幅に変更して、ようやく飛行試験までたどり着いて、型式証明まであと一歩というところまできたんですけれども、新型コロナウイルスの影響で旅客機の需要が大幅に減って、断念したというかたちになりましたね。


田口:やはり、ここでも新型コロナウイルスの影響というものが大きいんですね。


宇佐美さん:そうですね、航空業界は今、直撃していますからね。


田口:実際、国内のエアキャリアでも、納入するという取り決めもあるという報道もありましたよね?


宇佐美さん:一部ではだいたい見込みの発注もかかっていたんですけれども、今は開発が優先されていたかたちでしたね。


田口:そもそも、“ジェット旅客機の開発”というのはどういった点が難しいのでしょうか?


宇佐美さん:航空機は人が乗るもので、大勢の人命がかかっているので、そもそも、新しい技術、新しいデザインというものが受け入れづらいんですよね。開発段階だと、非常に長期にわたって、頻繁な設計の改良、見直しが求められるんですけど、逆に、量産に入ると、工程の一切の変更、変化というのができなくて、事後の変更というのは基本的に禁止されるんですよね。航空機部品の取引も、コストより安全・信頼を求められて、長期安定的関係が重視されるので、やっぱり、外から入ってくるというのは非常に難しい市場なんですよね。


田口:参入障壁が高い分、入ればある程度の利益が確保できるということで、政府としても作りたいという話もありましたよね?


宇佐美さん:航空業界は本体で60兆円くらいの市場で、波及効果も含めると130兆円くらいで、部品の数も数百万と言われていたので、日本が未開拓と言われる市場で一番大きい製造業の市場でした。なので、なんとか政府としても実現したかったんですけど、断念に至ったということですね。


田口:サプライチェーンが構築すればね、それだけ働く間口が増えるということで、国としても盛り上がるかなというところだったんですね。ただ一方で、ホンダは『小型ジェット機』の実用化に成功しているということなんですが、『小型ジェット機』と『ジェット旅客機』を比べると、『ジェット旅客機』の方が圧倒的に難しいということなんでしょうか?


宇佐美さん:それは間違いないんですけど、本質的な違いは、“開発にかけた時間”でして、ホンダが小型航空機エンジンの開発に取り組み始めたのは1986年で、実用化したのが2016年で、30年かかっているわけですよね、だから、MSJが取り立てて時間がかかったというわけではないので、やっぱり、新型コロナウイルスの影響というのが結果的に大きかったのかなと思いますね。


田口:今回は凍結とされていますが、今後、国産のジェット旅客機の実用化の可能性という点ではどうお考えでしょうか?


宇佐美さん:そうですね…、これ言いづらいんですけど……、MSJは経産省にとっても三菱重工にとっても“乾坤一擲”、運命をかけたのるかそるかの勝負だったので、今後数十年は無いだろうと思うんですけどね…。ただね、ゲーム業界だと、『MOTHER2』という名作があったんですけど、あれは出ない出ないと言われて、何年もかけて超名作ができあがったので、そういうこともあり得るのかなと期待したいところですよね。


田口:だから“最後まで泣くんじゃない”ということですよね?


宇佐美さん:良いこと言いますね!!!(笑)


田口:(笑)。諦めなければ…、あっ、ザベスさんがポカーンとしてる…。


エリザベス:ついていけない…。MOTHER2…?


田口:なるほど(笑)。そうか、そうなのか。でも、国産のジェット機に乗ってみたいという、いちカスタマーとしての気持ちもありますので、諦めなければね。


宇佐美さん:そうですね、この技術自体は無駄にならなくて、技術自体は部材・材料メーカーなどにも残っていくので、いつかまたそういう勝負ができる日が来るかもしれませんね。


田口:なるほど、そういった未来を信じていきたいなと思います。



そして、今日の #タグコメ はこちら。






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