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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

25.12.18

今日施行「スマホ新法」で変わること

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。

情報社会学がご専門の学習院大学 非常勤講師の塚越健司さんにお話を伺います。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら!


『今日施行される「スマホ新法」について』


吉田:スマホアプリ市場の独占を解消し、競争を促進しようと、今日、『スマホソフトウェア競争促進法(スマホ新法)』が全面施行されます。『スマホ新法』で、スマホの使い方がどう変わるのか?塚越さんに教えていただきます。


ユージ:まず、『スマホ新法』の狙いは何でしょうか?


塚越さん:今回の法律の中心は、スマホ市場で特に強力なプレイヤーであるGoogleとAppleを問題視して、“より公正な競争環境を整えよう”というものです。EUでは、こうした動きが早くからあったので、そちらを参照したり、今回は日本の公正取引委員会が制度設計にも関わっています。その上で、まず、スマホのOSはGoogleの『Android』とAppleの『iOS』がありますが、この2つで日本のシェアの9割を超えているんですよね。皆さんもだいたいこの2つのどちらかだと思います。他にも、アプリストアではGoogleの『Google Play』やAppleの『App Store』でほぼ独占。ブラウザや検索エンジンなどでもこの2社が大きいということで、今回はこうしたプラットフォーマーによる管理をもう少しアプリの提供者に開いていこうというものです。


吉田:では、スマホを利用する私たちにはどんな影響がありそうですか?


塚越さん:例えば、iPhoneには『Amazon』や『Kindle』といったアプリがありますが、電子書籍はアプリからは直接買えないんですよね。なぜかというと、アプリ経由で電子書籍やゲーム内課金といったデジタルコンテンツを買うと、その分の手数料を(この場合は)Appleに払わないといけないんです。これを嫌がってAmazonの電子書籍はアプリからは買えないんですね。物理的な商品はOKなのでそういうのは買えるんですよ。実際、ゲームや電子書籍、動画配信のアプリ決済の金額は、国内で年間2兆円台と巨大ですが、GoogleとAppleは決済で最大30%の手数料をアプリ事業者に事実上強制してきました。これが海外などで非常に大きく問題になって、訴訟が起きたこともあります。日本でも、例えばですね、私が最近、『DMM TV』というアニメに強い動画見放題のサービスに入ろうかと思ったんですが、iPhoneやAndroidからのアプリ内だと月額650円で、ウェブサイトから支払うと月額550円なんですよ。どちらからでもサービスは変わらないんですよ。


ユージ:あれ?値段が違う??


塚越さん:そうなんですよ。これもおそらくは、大きな要因として手数料なのかなと…。そういうふうに設定しているところもあるということで、今回の法律によって、決済の方法が広がり、競争が生じるようになれば、手数料の負担が軽くなる可能性があります。実際、GoogleとAppleは、法律施行までにアプリ事業者と決済に関する規約を改定する見通しということなので、日本でも決済の自由化が進めば、簡単にいえば、私たち一般ユーザーは、もう少し安い価格でコンテンツを楽しめる可能性があるということですね。


ユージ:利用者には良いことが多いように感じるんですけど?


塚越さん:確かに良いこともあるんですけど、実際は課題もあって、例えば、Appleのアプリストア『App Store』は、登録に審査が必要で、その過程で悪意のあるデータ収集をするものや若者に有害なアプリを排除してきました。ですが、「うちは手数料いらないよ」という手数料の安い別のストアが出てくると、こうした審査が緩くなって、利用者のリスク、特に若い人へのリスクが高まる懸念もあります。知らないうちに違法アプリを使っていたとかですね。


ユージ:なるほど!Appleの『App Store』は結構、厳しいんですね?


塚越さん:そう、厳しいんですよ。だから、手数料を取る分、ある程度セキュリティのコントロールができていたとも言えるわけです。消費者団体からも、安全性が確保されていないと利用者の利便性向上につながらないといった批判もありますし、先程のアプリストアの問題もありますが、今回の新法では、別の企業がiPhoneのOSのもう少し深くまでアクセスできるので、例えば、AirDropなどでは、Apple独自の基準が迂回されてプライバシーの面でリスクが上がる可能性もあるので、Appleは公正取引委員会に対して、こうした規制が強くなると、新しいサービスのリリースが遅れるとも言っていまして、『Apple Intelligence』というAIを使ったサービスは、先に厳しい法律を作ってしまったEUでは、そのせいでサービスの提供開始が遅れてしまいました。このように新商品・新製品が遅れたり、一部機能制限ということもあるので、より良い競争バランスをどうすればいいのか?というところがですね、法律を作ったあともいろいろ推移を見ないといけないと思います。全体とすると、Googleはわりとオープンな制度を作っていて、Appleはかなりクローズドに作っているので、今回の件に関して打撃としては2社を比べると、Appleの方が大きいかなと思います。


ユージ:塚越さんは『スマホ新法』どうみますか?


塚越さん:やっぱり、料金が安くなるとか、自由度が高くなる可能性はあるんですけど、未成年などのスマホの設定がよくわからない人にはちょっと怪しいサービスにアクセスしちゃう可能性があるので、自由になる代わりに問題も生じるということなので、技術に詳しい人以外は、基本的にはデフォルトのものを使うとかですね、今まで通り基本的なものを使い、そこから少しずつ詳しくなれば変えていくとか、そういった使い方がいいかなと思いますね。


ユージ:いや、今回、塚越さんのお話があるまで、手数料とかで違いがあることを知らなかったです。あとは、このアプリいいな!でも、Android版しかないんだよな…とか、逆に、こっちはiPhone版しかないんだ…とか、その理由もなんとなくわかりました!


塚越さん:そうですよね、あまり知られていないんですよ。そういうところにも関係しているんですよね。

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