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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

22.12.15

安保関連3文書、明日にも閣議決定

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
引き続きコメンテーターは、情報社会学がご専門の、学習院大学 非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


安保関連3文書、明日にも閣議決定

吉田:政府の“安全保障関連3文書”について、自民・公明の実務者協議が12日に行われ、3文書の改定内容に合意しました。政府は16日にも閣議決定する方針です。


ユージ:塚越さん、安全保障関連の3つの文書について、そもそもどういったものなのか教えてください。


塚越さん:まず1つ目は、「国家安全保障戦略」。外交・防衛の基本方針を定めたものです。2つ目は、「国家防衛戦略」。日本の防衛力整備の指針で、防衛力のあり方や保有すべき水準を規定しています。そして3つ目は、「防衛力整備計画」。国家防衛戦略に基づいて具体的な装備品の整備の規模や防衛費の総額などを定めたものです。これまでは、2019年~2023年度までの5年間の計画で、防衛力整備の水準を総額27兆4700億円程度となっていましたが、今回の改定で来年度から5年間で総額約43兆円と額が大幅に増えることになりました。改定の背景としては、北朝鮮のミサイル開発や中国の台頭やロシアが起こした戦争など、東アジアの安全保障環境の変化が挙げられます。


ユージ:今回の改定のポイントはどこですか?


塚越さん:一言で言えば、これまでよりもアグレッシブに「反撃」ができる体制を整えることになります。ポイントとしては、アメリカ製の巡航ミサイル「トマホーク」を導入することや、防衛費と関連経費をあわせて、2027年度にはGDP比2%以上にすること。そして「反撃能力」の保有を明記することなどが挙げられます。


ユージ:「反撃能力」という言葉は非常に強い言葉ですが、先週のこの時間にも少しお話しがありましたが、政府は一体どう考えているのでしょうか?


塚越さん:2つ目に挙げた文書「国家防衛戦略」の中で、「反撃能力」の保有を明記することが、やはり今回の大きなポイントです。これまではミサイルの使用は相手から打たれた場合の迎撃に限定されていましたが、今回からやむを得ない“必要最小限度”で、相手国のミサイル発射基地などを叩くことが出来ることになります。迎撃だけでは対応出来ないというのが改定の理由です。ただし「反撃能力」は、憲法や国際法の範囲内で行使される必要最小限の自衛措置と定義していて、「専守防衛」の考え方を維持するということです。また来年度から増額される防衛費で、敵の射程圏外から有効な反撃を加えることができる「スタンド・オフ防衛能力」という分野に、およそ5兆円の経費を盛り込むなども「防衛力整備計画」に記載されます。これは国産のミサイルの改良や、アメリカのミサイルの購入等のことになります。


ユージ:その他に、塚越さんが気になった改正内容はありますか?


塚越さん:今回の改定で、ハラスメント対策が明記されることになりました。今年は元陸上自衛官の五ノ井里奈さんがハラスメントを訴えたことで、彼女だけでなく、多くの人が様々な被害を受けている可能性があることもわかりました。女性隊員はもちろんのこと、全ての関係者に徹底してもらいたいです。もう1つは、情報戦部隊の新設もすることになりました。ハッキングなどを含めた「電子戦」への対策を備えるとともに、“フェイクニュース対策”なども行う部隊です。サイバー関連でも状況は変わってきているので重要です。一部報道では、「世論工作を防衛省が考えている」という報道もありますが、防衛省はこれを否定しています。世論工作となると、これはこれで議論しないといけない問題なので、今後の展開に注意が必要だと思います。


ユージ:今回の改定の流れについて、どう思われますか?


塚越さん:個人的に最大の課題だと思うのは、今回の決定に至る実務者協議は非公開で議事録も公表されません。憲法違反を指摘する声もある中で、今回も「閣議決定」で、国会や国民的議論になっていないです。国家の根底に関わる問題を、閣議決定でいいのか?と思いますし、国民的合意がないまま「なし崩し」という印象です。さらに具体的な課題として、「専守防衛」を前提としながらも、じゃあ反撃のタイミングをどう設定するのか?という問題もあります。色んな状況で「反撃だ!」と考えているかもしれませんが、状況によってはこちらは反撃のつもりでも、相手からしたら「先制攻撃」ということで、ミサイルが何処に落ちるとか、発射する前なのかどうなのか細かいルール設定が必要です。これは国際法も関連があることなので、この辺りの調整が必要になりますし、単に決まったことではなく、これから色々なことを考えないといけないことが非常に重要な論点だと思います。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。



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