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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

22.12.19

「没入型消費」、今年の消費トレンド振り返りと来年の消費動向を展望

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は「BuzzFeed Japan」編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


【「没入型消費」、今年の消費トレンド振り返りと来年の消費動向を展望】

吉田:今朝は今年の消費動向を振り返りつつ、2023年の消費動向を予測、展望したいと思います。神庭さん、まずは今年を振り返っていかがですか?


神庭さん:今年の日経MJヒット商品番付には、前頭に「SPY×FAMILY」「silent」「ちいかわ」、小結に「ONE PIECE FILM RED」「トップガン マーヴェリック」、関脇に「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」「ジブリパーク」などなど、アニメ、漫画、ゲーム、映画などコンテンツ系が多数ランクインしました。そして横綱が「コスパ&タイパ」と「3年ぶり」という言葉が入りました。「コスパ&タイパ」というのはコストパフォーマンスとタイムパフォーマンスの略語です。「3年ぶり」というのはコロナ禍で長らく制約があったけれども3年ぶりにいろいろできるようになったね、という意味の言葉ですね。


ユージ:なかでも神庭さんが気になったものはありましたか?


神庭さん:やはり、横綱の「コスパ&タイパ」ですね。特にタイパに関してはこの1年、本当によく聞くようになりました。コンテンツの倍速視聴なんかはその典型です。ここで紹介したいのが、ライターのレジーさんという方が最近出版した『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち』という本です。ファスト教養というのは、ビジネスに役立ちそうな教養を広く浅く、手早く仕入れようとするような風潮を指していて、YouTubeのお手軽な解説動画なんかは、僕もたまに見るので偉そうなことは言えないんですが、ファスト教養の最たるものかなと思います。それを倍速で見るということは、まさしくコスパ、タイパ的な発想ですよね。


吉田:確かにそういう動画は多いですよね。


神庭さん:なぜ現代人はファスト教養を求めるのか?ということなんですが、レジーさんの分析が非常に興味深いです。博報堂生活総研の調査によると「世の中、努力よりも運・ツキだと思う」と考える人の割合が増えていて、特に20代では運・ツキ派が48.8%、努力派が49.3%で拮抗しているそうなんですね。《努力よりも運・ツキに左右されがちな世の中だから、地道に何かに取り組むスタンスは「コスパ」が悪い。それよりも、最小限の努力で最大限の成果を上げる方法を考えたい》ファスト教養が拡大する背景として、こうした考え方があるのではないかと、レジーさんは分析しているんです。


ユージ:ここからは2023年の予想、展望について聞きたいんですが、来年以降もこのコスパ・タイパ消費は続くと思いますか?


神庭さん:それは間違いないと思います。これだけ情報が氾濫しているなかで、短時間で効率よく、意義あるものを摂取したいと考えるのはある意味時代の要請だと思います。一方で、必ず揺り戻しもあると考えていて、コスパを極限まで突き詰めると、生まれてすぐ棺桶に直行するのが一番効率がいいことになっちゃうわけですよね。「わかる」ことと「わかった気になる」ことの間には天と地ほどの差があります。ファスト教養的なものに飽き足らない人たちは一定数いますから、そういう人たちは、より歯応えのあるものだったり、一見ムダにも見えるけど面白いものだったりを求めていくのではないかなと思います。


吉田:そんななか、日経MJの来年のトレンド予測では、「没入型消費」というキーワードが紹介されていますが、これはどういうものなんですか?


神庭さん:この記事では、没入型消費の例として来年3月に劇場公開される「シン・仮面ライダー」や4月に開業する「東急歌舞伎町タワー」、夏にとしまえん跡地にオープン予定の「ハリー・ポッター」の体験施設などが紹介されています。「没入」というのは、テレビやYouTubeを見ながらTwitterでつぶやくようなタイパ的な態度とは正反対にも思えるんですが、タイパで捻出した時間を一点豪華主義で「本当に価値あるもの」「価値のある体験」に投じると考えれば、実はそんなに矛盾しないかなと思っています。消費者の側から見ればそうした厳選志向はさらに強まるでしょうし、エンタメやサービスを提供する側からすれば、消費者の可処分時間の争奪戦はますます激化することになると思います。来年はコロナ禍からの回復、ニューノーマル化がさらに進み、ライブイベントや旅行も当たり前になっていきますから、もはや「何年ぶり」みたいな言葉も話題にのぼらなくなってくるのではないかなと思います。


ユージ:このほか、神庭さんが注目するトレンド、何かありますか?


神庭さん:今年のヒット番付に入った「SHEIN(シーイン)」。中国発のファストファッション通販企業で先日、原宿にショールームをオープンしたことでも話題になりました。SHEINの服はとにかく安いんです。ワンピースが300円、400円とかで買えるので若い人を中心に人気があります。ただ、製造過程で労働者が低賃金で長時間働かされていると海外メディアの報道があったり、何かと批判が絶えない企業でもあるんです。FNNによると、既存ブランドとデザインがよく似ているということで、商標権侵害の訴訟も起きているそうです。意識の高い若者は「高くてもしっかりしたブランドの服を買います」というでしょうし、物価高で生活防衛意識が高まるなかで「そうは言ってもお金がないから、安い服で済ませるしかないんです」という人もいると思います。エシカル消費で倫理的に暮らそうと思ったら、お金がかかってしまいますから、経済格差の拡大もあいまって、来年以降、消費者の間で「意識の高低差」がますます拡大してくのではないかなと思っています。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。





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