23.12.20
“減税”を前面に押し出した、来年度の税制改正大綱
ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターは引き続き、情報社会学がご専門の城西大学助教、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら！
「“減税”を前面に押し出した、来年度の税制改正大綱」
吉田：自民、公明両党は先週木曜、来年度の税制改正大綱を決定しました。所得税などの定額減税、賃上げ税制の拡充など「デフレ脱却」のための減税メニューが並んでいるということです。塚越さん、まずは「税制改正大綱」とは何なのか、改めて教えてください。
塚越さん：翌年度以降の増税や減税といった「税制」についての内容や検討事項をまとめた文書になります。例年、秋から自民公明の両党がそれぞれの税制調査会で議論して、最終的に12月に与党としてまとめるのが恒例となっているとのことです。この文書をもとに税制改正法案を政府が作成し、来年1月の通常国会に提出することになっています。
吉田：その税制改正大綱、来年度は“減税”が前面に打ち出されているのですか？
塚越さん：そうですね。とにかくたくさんあるので、代表的なものを簡潔にまとめます。先に全体の印象を述べれば「減税」を押し出しつつ、重要な部分は曖昧だなというのが私の印象です。まず、以前から報道されていた、1人あたり4万円の定額減税については、年収2,000万円を超える人は外すという所得制限がつきました。とはいえ、2,000万以上の人は全体の1％程度であくまで不公平感を取り除くものになっています。また、減税は来年の実施だけでなく、再来年以降も柔軟に対応、つまり場合によっては実施するといった内容になっていて、柔軟というより、曖昧な表現だなというところがあります。次に、児童手当を高校生まで拡充することで、高校生などを扶養している場合の扶養控除を縮小する案を出たのですが、大筋で目処はついたものの正式決定は来年に持ち越されたので、正式決定前にもう一度議論が再燃する可能性もあります。正式決定にならなかったのは自民党と公明党で意見が割れたことも一因ですが、これも曖昧だと思います。一方、賃上げを実施した企業の法人税を減税する「賃上げ税制」は、読売新聞の表現では「アメとムチ」を使い分けることです。大企業の場合、これまで税制優遇となった賃上げ率3％以上4％未満の企業の控除率は下げて、新たに賃上げ率5％以上と7％以上を新設し、賃上げするほど控除率を上げることになりました。多くの大企業ではすでに4％以上の賃上げが行われているので、さらに賃上げをしなさい、ということだと思います。一方中小企業でも、赤字であっても5年以内であれば黒字になるまで減税の優遇措置を繰り越せる制度を導入することになっています。同じく半導体や電気自動車といった成長分野には「戦略分野国内生産促進税制」を新設しました。「EV一台あたり40万円」など、生産量に応じて減税することになりました。
ユージ：購入した側が減税対象ではなくて、つくる側が減税対象ということでしょうか？
塚越さん：そうです。製造側が安くなります。逆に設備投資が行われなければ税制優遇はなくなるので、積極的に開発にお金をかけるということです。要するに、アメとムチなのかなと。
ユージ：“減税”を前面に押し出す一方で、「防衛増税の開始時期」や「トリガー条項の凍結解除」に関する記載は今回、見送られましたか？
塚越さん：去年の今頃に発表された税制改正大綱では、防衛増税の開始時期は示しませんでした。今回も先送りなんです。財務省出身の宮沢税制会長は今年中に開始時期を決定したがりましたが、結局、岸田総理が見送りを決定しました。増税には政権の体力が必要ですが、現在の自民党の政治状況では厳しい、といった発言されています。もともと支持率が低いところに、裏金問題がダメ押しになったという感じです。私は防衛増税には反対ですが、結局「先送り」が多すぎて、決定しないままの持ち越しだらけというのはどうなのかなと思います。ガソリン税の上乗せ部分を停止する「トリガー条項」ですが、こちらは国民から望む声も多かったです。自民、公明、国民民主で引き続き協議するとされましたが、こちらも決定はせず見送りになっています。
ユージ：これずっと言われていますよね。
塚越さん：こちら色々言われていたのですが、国民民主党が内閣不信任決議案に賛成したことが問題視されたということです。そもそも国民民主に関係なく、やるならやるべきでしょうと思いますね。
ユージ：来年度の税制改正大綱、塚越さんは、どうご覧になりましたか？
塚越さん：先ほども話したように、曖昧なことが多いです。岸田総理はそもそも何をやりたいのか分からないと言われていたのですが、ますますそういうところで分からない点が多いという印象ですね。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET#ユジコメ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) December 20, 2023
「“減税”を前面に押し出した、来年度の税制改正大綱」について…
#ユジコメ②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) December 20, 2023
日本は自動車大国で、国内の物流に関しては、車が中心になっています。生活の中でも大きく影響する部分でもありますが、これまで通りの価格に戻る見込みがあるから発動しないのか、その理由が明確に明かされていない点が、個人的に気になりました。#ワンモ
#ユジコメ③
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) December 20, 2023
国民にとって、税制のどこが上がって、どこが下がったかというよりは、財布からどれくらいの税金が取られるのか、それが正しく使われているのか、今後の政府の動きに注目していきたいなと思います。#ワンモ
