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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

25.07.17

長期金利がおよそ17年ぶりの高水準、私たちの生活にどんな影響?

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の学習院大学・非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


「長期金利がおよそ17年ぶりの高水準、私たちの生活にどんな影響?」

吉田:15日の債券市場で、国債を売る動きが強まりました。「日本相互証券」によりますと、長期金利の代表的な指標となっている10年ものの国債の利回りが、1.595%まで上昇し、リーマンショック直後の2008年10月以来、およそ17年ぶりの高い水準となりました。


照英:塚越さん、まず、なぜ10年ものの国債が注目されるのでしょうか?


塚越さん:10年ものの国債は、一般に「長期金利」の代表とされていて、住宅ローンや企業の借入金利、生命保険の運用利回りなど、様々な金融商品に影響します。10年ものの国債は財務省が定期的に発行するのですが、売られているのは、保険会社や銀行などが、市場で持っていた国債を手放している、という側面があります。国債はこうして売ったり、それを買ったりする人も多いので、市場の心理がよく反映されるものです。なので、この10年ものの国債は市場の基準、要は「経済の温度計」とみられることが多く、政府や日銀、メディアも注目しています。また10年ものの国債の利回りは、市場経済や金融政策、インフレ動向、海外の動向などが要因で変化するのですが、国債が売られると、これを新たに買ってもらおうとして高い利回りをつけようとします。今回のように長期金利が上昇しているということです。


吉田:今回、17年ぶりの高い水準になりましたが、長期金利は、今までどのように変動してきましたか?


塚越さん:若い人はびっくりすると思いますが、バブル期は6%を超える水準でした。銀行の定期預金も5~6%ありました。それがバブル崩壊で徐々に下がって、2003年にはデフレもあって過去最低の1%を切りました。その後は少し上がったのですが、2008年のリーマンショックもあり、その後、アベノミクスと超金融緩和、マイナス金利が導入されて、ものすごく低かったとのことです。2021年くらいまで超低金利だったのですが、日本は2023年に政策転換して上昇しました。そして今年の頭には1.1%だったのが、1.595%まで上昇したということです。


照英:今回、なぜ国債が売られて、長期金利が上昇したのでしょうか?


塚越さん:いろんな要素がありますが、大きいところを2つあげると、ひとつは今回の参議院選挙で減税や給付拡大といった拡張的財政政策が掲げられていることです。国債の発行が増えて財政が悪化するのか?という懸念から国債が売られているんじゃないかということです。もうひとつは海外の要因で、特にアメリカのトランプ関税です。関税になるとアメリカに入ってくるものの値段が上がるので、アメリカ国内がインフレになるとみられています。すると、アメリカの国債の金利も上昇する可能性もあります。トランプ氏は反対していますが、多分上がるだろうと。そうすると、日米の金利差の拡大といった要因から日本もつられて金利が上がっているとも考えられています。


吉田:では、長期金利の上昇、私たちの生活にどんな影響がありますか?


塚越さん:まずメリットとして考えられるのは、資産が増えるということです。銀行の定期預金をはじめとした色々な金利も動きに合わせて上昇する傾向があるので、単純に言えばリターンが増えて資産が増えやすくなる、ということです。また、金利上昇で多少なりとも円高に振れる可能性もあるので、そうなると輸入品を買ったり海外旅行など、個人の生活にはプラスになる側面もあります。


照英:でも、良いことばかりでは、ないということですよね?


塚越さん:そうですね。メリットもあれば、デメリットもあります。デメリットとしては、ローンの返済額が増えるということです。特に変動金利型などはローンの返済額が増えるので負担になりますし、新規に住宅を購入する場合、固定金利も上がります。住宅以外にも教育ローンや自動車ローンも金利は上がりますし、そうすると消費が冷え込む傾向も出てきます。あと、身近なところだと大家さんの賃貸経営にも金利の影響が出るので、賃貸の人も更新料の引き上げ、家賃引き上げの可能性もあります。都市部では、ただでさえ上がっているので、辛いところですね。企業も調達コストが増えるので、投資を控えたり、給料や雇用といった人件費にも影響が出てくる可能性があります。金利に関係ない生活をしている方、私は関係ないと思っている方も実は関わってきます。しかも、日本だけでなく世界の動きも関連してくるということです。


照英:塚越さんは、今回の長期金利の上昇、どうみられていますか?


塚越さん:色々な動きがあると思いますが、やっぱり長期的に上がっていくというのは今年の頭から言われていました。しかも、昔に比べるとずっと低かったので上がっていくということは、ある程度、前提に考えるべきなのかなと思います。色々な細かい要因があると思いますが、そうなってくると資産運用やローンの見直しなど、個人で見直しをできる習慣がまだあるので各自でみて生活防衛していくことが大事だと思います。


照英:プラスなことが沢山増えてくれば嬉しいですよね。


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