25.10.01
『改正育児・介護休業法』が10月に全面施行…子育てのための『柔軟な働き方』を義務化

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の学習院大学・非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
【『改正育児・介護休業法』が10月に全面施行…子育てのための『柔軟な働き方』を義務化】
吉田:育児と仕事の両立支援を強化する改正育児・介護休業法が1日に全面施行され、子育てのための「柔軟な働き方」の制度の整備が、企業に義務付けられます。塚越さん、この「改正育児・介護休業法」について、詳しく教えてください。
塚越さん:この「改正育児・介護休業法」は段階的に施行されています。今年4月には、育児目的のテレワーク導入など行われまして、今回は、仕事と育児の両立制度を使うかどうかというのを社員に確認して配慮するということが事業者に義務化されることになりました。会社から社員に意向を尋ねることで、この制度の利用を促すのが狙いとなっていまして、4月の施行も含めて、今日から法律が全面施行ということになります。この法律では、子どもが3歳から小学校入学までの間は、従業員はテレワークや時短勤務など、子育てのための柔軟な働き方が選べるようになります。特に0歳〜2歳までの支援はそれなりに厚いのですが、3歳から支援が行き届いてなかったので、その部分の支援ということになります。一方で会社側は「時差出勤」、「時短勤務」、「月10日以上のテレワーク」、「年10日以上の支援のための休暇」、「保育施設の設置」など、5つの選択肢の中から2つ以上の働き方を導入してくださいということです。社員はその中から選択することになります。特に会社は社員の意思を確認したり、社員やその配偶者の妊娠出産などで、勤務時間や勤務地などの希望を確認することも義務付けられています。なので、育児や介護をする人にとっては、働きやすい職場環境になりますね。
吉田:子育てのための「柔軟な働き方」の整備が、企業に義務付けられるということですが、課題もあるようですね?
塚越さん:基本的には柔軟な働き方はいいことですよね。人材不足の時代にも良い制度ですが、一方で、どうしても同僚には負担が増えてしまいますよね。育児も介護も重要ですが、それによって職場の社員の間で溝が出てしまう懸念があります。ネットでもたまに議論になったりします。実際、パーソル総合研究所が去年行った調査だと、仕事をフォローする同僚の42.6%がこの制度の利用者に不満があると答えています。確かに、フォローする社員は他の社員に比べて平均して残業時間が5時間半ほど多い、というデータもあります。こうした現状だと気を遣ってこの制度を使わない、ためらう人も出てきますよね。どうこの溝を埋めるのかというのが課題です。そこで、例えば三井住友銀行は、男性社員の1ヶ月の育休取得を原則必須として、特に男性の育休取得を進めます。それによって男性でも女性でも、取得した人とそのチームに対して、5万円の報奨金を支払うというものです。本人以外の同僚にも支払うというところが特徴です。
ユージ:僕も興味深いと思いました。
塚越さん:いいですよね。別の取り組みとしては、LINEヤフーコミュニケーションズです。今年4月から、週休3日や時短勤務など、法律以上の制度をつくっているのですが、ここでは「ノーワーク・ノーペイの原則」をつくっています。上司と相談して働き方を決めるのですが、休んだ分は給料が減って、それを肩代わりしてくれた同僚には手当がつくという仕組みです。もちろん、法律で決まっている休業給付金などは出ます。基本時には「ノーワーク・ノーペイ」ということで原則として働かない分は出さないということがあります。これがあれば、不公平感はないと企業は考えています。いずれにしても、会社ごとにいろんな方法を模索しているのかなというところです。
ユージ:「改正育児・介護休業法」と、その課題。塚越さんは、どうご覧になっていますか?
塚越さん:法律で義務化されて、色々制度を使いやすいのでそれはとてもいいことですよね。色々なやり方を試して欲しいのですが、これができるのは体力のある大きい企業ですよね。中小企業は、対象にはなっているのですが人数が少ないと人間関係も密なのでハードルが高いですよね。ここをどうしていくのかというのが、むしろ課題なのかなと思います。こういうのが解消できないと、日本の労働環境が変わらなくて少子化も進みますし人材不足にもなります。これについては、厚生労働省が「両立支援等助成金」というものがあり、中小企業への支援です。中小企業の経営者の方は、「両立支援等助成金」というのも探していただいて、色々な支援もありますよ、ということです。「制度は使わな損!」ということで、会社員の方は4月から始まっている「出生後休業支援給付金」と「育児時短就業給付金」というものが雇用保険から支給されるので、会社に言えば会社がやってくれるということですが、雇用保険の方はこういった給付金もあります。10月から制度が変わってきますので、こういったものを単語レベルで調べていただくと色々出てきますので、特に経営者の方や中小企業の方は、調べていただいてとにかく色々な制度を知って、できることを増やしていくということが我々のできることかなと思います。