25.10.08
リチウムイオン電池の事故、5年で推計2千件超え…その背景と予防策は?

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の学習院大学・非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
「リチウムイオン電池の事故、5年で推計2千件超え…その背景と予防策は?」
吉田:繰り返し充電でき、モバイルバッテリーなど多くの身近な製品に利用されている「リチウムイオン電池」が発火する事故が多発しています。消費者庁は10月2日、リチウムイオン電池が発火するなどした事故が2020年度〜2024年度で、合わせておよそ2,350件あったとみられると明らかにしました。塚越さん、まずは消費者庁の推計について詳しく教えてください。
塚越さん:リチウムイオン電池は、私達の身近にたくさんあります。代表的なものはスマホですが、今回は消費者庁と関連機関で運営する「事故情報データバンク」に登録されたものから推計しています。それによりますと、報告された事故情報で一番多いのが「スマホ」でおよそ350件、続いて電動アシスト自転車、モバイルバッテリーなどが続きます。近年増えてきて注目されているのが、64件あったワイヤレスイヤホンと46件のスマートウォッチです。これ身につけるじゃないですか。だから、火傷した報告も多いとのことでここは注意が必要だと思います。
吉田:このところ、モバイルバッテリーが発火する事故、相次いで起きている印象ありますよね?
塚越さん:そうなんです。モバイルバッテリーの事故は去年123件の報告があり、2020年と比べると2.6倍になっています。例えば9月25日には、東京都杉並区のマンションで火災が発生して、男女6人が軽症を負いました。住人によると、スマホをモバイルバッテリーにつないで充電して寝ていて、音がしてみたらバッテリーから火が上がっていた、ということです。これ誰でも被害にあう可能性がありますよね。また、今年7月にはJR山手線の車内で、スマホを充電していたモバイルバッテリーが発火して、山手線が大幅に遅延した事故もありました。このバッテリーは中国製で、2023年6月にリコールが開始されていたということです。こうしたリチウムイオン電池の発火原因はいくつかありますが、1つあげられるのが外部からの強い衝撃や圧力です。異常発熱が起きて発火になるケースがあるということで衝撃です。もう1つの原因としてあげられるのが「高温」です。あまりに熱くなると、電池の発熱を制御できなくなることもあるということです。強い衝撃と、異様に熱くなっている場合には注意が必要です。また、使っているものがリコールの対象になっている製品もあります。これは、消費者庁のHPや独立行政法人の「製品評価技術基盤機構(NITE)」のホームページに書いてあるので、モバイルバッテリーなどで調べてみてください。もうひとつ、とても大切なことがあります。特にモバイルバッテリーと加熱式タバコなどをゴミ収集車に入れてしまって、その後、収集車やゴミ処理場で火災が起きるケースが増えています。事故になると、復旧までに1年以上かかり、費用も数十億円になることもあります。リチウムイオン電池は、分別回収が基本でリサイクルにもなります。これは私たちの全員の生活に関わりますよね。場合によってはゴミ処理できなくなったりします。なので、絶対に捨てる際には自治体のルールを守ってください。リチウムイオン電池の捨て方を頭に叩き込みましょう。
ユージ:このリチウムイオン電池の事故が相次いでいるのは、どんな背景があると思いますか?
塚越さん:先ほど話した理由に加えて、モバイルバッテリーを使う製品が増えたことや粗悪品による問題も課題です。読売新聞によると、モバイルバッテリーは2018年に法律で規制対象となり、安全基準を満たしたものに貼られる「PSEマーク」というものがないと、販売禁止になっています。実際は、中国製の一部などで基準を満たしてないのに「PSEマーク」をつけているものや、国内の消費者が海外から直接輸入した粗悪品が出回っている可能性もあるということです。こうしたことを受けて国は去年、海外の事業者もこの法律の規制対象にする法改正をしていて、今年の12月から施行される予定です。販売にあたっては、日本の基準を守ったり、責任者を日本に置くといった義務が課されますが、どこまで粗悪品を食い止められるか課題になっています。
ユージ:リチウムイオン電池の事故が相次いでいること、塚越さんは、どうご覧になっていますか?
塚越さん:「PSEマーク」は偽装もあります。ちょっと私達じゃ無理ですよね。だから、国の規制も大事ですが、私たちの判断も大事なので、高温や衝撃に気を付けるのは当然のこと。あとは、あまりに安いのはちょっと気を付けましょう。ちょっと危険ということもあります。あとは、手持ちの「PSEマーク」を確認して、不安になる場合はリコールの対象になっている場合もあるので、ここも調べてみてください。このリチウムイオン電池、スマホやパソコン以外にも加熱式タバコやワイヤレスイヤホン、携帯扇風機やスマートウォッチ、コードレス掃除機など色々あります。身近に本当にたくさんあるので、火傷など事故になりますから、ちょっとチェックして頭の中に置いておくのは重要かなと思います。