25.10.15
『高市トレード』が一転、日経平均株価は1,200円超えの下落…その背景と生活への影響は?

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の学習院大学・非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
【『高市トレード』が一転、日経平均株価は1,200円超えの下落…その背景と生活への影響は?】
吉田:昨日の東京株式市場は、日経平均株価が下落し、終値は10日と比べて1,241円48銭安い4万6,847円32銭でした。政局の混迷で、自民党高市総裁の財政政策の実現が不透明になったことを嫌気した売り注文が優勢となった、ということです。10日までは「高市トレード」と呼ばれる株高が続いていましたが、連休明けの14日は、一転、株価が下落しました。塚越さん、まずは、この「高市トレード」について、改めて教えてください。
塚越さん:はい。先週は動きが激しかったので、簡単に振り返ります。4日、高市氏が自民党の総裁に選ばれました。高市氏は積極財政、拡張的な政策を掲げています。市場はこれによって景気刺激策等を期待しまして、総裁選前は45,000円台だった株価が総裁選後には48,000円台へと3,000近く上がり、これが「高市トレード」と呼ばれました。日経平均株価は過去最高値あたりで推移する一方、円相場は円安が進行して、およそ8ヶ月ぶりの水準となる1ドル153円台と総裁選前から5円以上も下げました。なので、「円安株高」というわけです。これに加えて高市氏は、積極財政派なので国債の発行も増やすとみられています。国債が増えることで価格が下がると、受け取れる利子の割合、つまり利回りが上がる仕組みになっていて、価格が下がるなら国債を売ろうという動きもあり、長期金利が上昇します。これにつられて、長期金利の代表的な指標である10年物の国債の利回りが10日が一時1.7%と、およそ17年ぶりの高い水準となりました。つまり先週の市場は、「円安・株高・債券安・高金利」という状態になったわけです。
吉田:この「高市トレード」が一転、14日は株価が下がりましたね?
塚越さん:はい。色々、市場は反応しているのですが、もともと高市氏を総裁選で支援した麻生氏は財務大臣も経験があって、財政規律にも配慮のある立場です。なので、高市氏がどこまで積極財政ができるかには懸念がありました。そんな中で10日に公明党が連立離脱を表明しました。これが報道されたのは取引終了後だったのですが、すでにあった離脱の警戒感を感じて、多少なりとも市場は株安・円高の動きもありました。つまり、高市氏が総理大臣にならないかもしれない、ということで「高市トレード」の逆回転になるんじゃないかということです。これは先週の段階。いずれにせよ、10日の日経平均株価の終値は48,088円でした。そして13日がお休みだったので、市場が開いたのが14日からです。やはり公明党の連立離脱の影響で、高市トレードが逆回転して一気に下がるかと予測されていました。市場が開いた瞬間に、すぐに700円ほど下げました。さらに下がって終値は、10日と比べて1,241円安い4万6,847円ということで下がりました。ただ、1,200円ほど大きく下がってはいるのですが、高市氏が選ばれてから3,000円近く上がったということを考えると「暴落」やパニック売り、ところまではいえないと私は思います。他にも米中の貿易摩擦などの影響もあります。同じように円相場も円高に動くとみられましたが、そこまで変わることがなく、おおむね152円台の円安。総裁選前が147円台だったので、あまり大きく変わっていない。債券市場についても、10年ものの利回りは1.66%と先週の1.7%から少し下げましたが、依然として高水準です。「高市トレード」が、完全に「逆回転」という感じではまだありません。ただ、今日も含めて、これから1週間どうなるかなというところで市場は様子見という状態なのかなと思います。
ユージ:「高市トレード」が一転して、株価が下落したことは、私たちの生活には、どんな影響があるのでしょうか?
塚越さん:今お伝えしたように、逆回転までは言えないかなと思うので、とりあえず政局によりますが、高市トレードの状況が続いた場合、どうなるのか考えると、円安なので輸出企業や株価が上がるわけですが、逆にいうと輸入コストが上がっちゃうので少し物価上昇になる可能性があります。そうすると物の値段が上がるので、生活が苦しくなります。ただ、高市氏は景気刺激策を考えているので、物価上昇以上に賃金が上がれば円安のある種のデメリットを賃上げや大規模な投資などが上回るかがポイントかなと思います。
ユージ:「高市トレード」をめぐる動き、塚越さんは、どうご覧になっていますか?
塚越さん:誰が総理大臣になるかわからない状況じゃないですか。それで乱高下しているという状態です。来週の20日または21日に首班指名選挙となっていますが、フランスでは政権が決まらないということで、すごく混乱しています。なので、政策を戦わせることも大事ですが、どこかでは決まっていかないといけません。野党の話もありますが、どこかでは国民も政治家も色々話はあるけど決まっていかないとずっと混乱になります。多党制のいいところでもありますが、厳しいところでもあるかなということで理解する必要があります。