25.10.16
控除拡大で恩恵も!今年の年末調整の変更点

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の学習院大学・非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
「控除拡大で恩恵も!今年の年末調整の変更点」
吉田:今年も10月も半ば、企業では「年末調整」の準備を進め、働く従業員の方にも、勤務先からお知らせが届く時期になりました。今年は、2025年度の税制改正の影響で変更点がいくつかあります。そこで、「年末調整」の変更点を塚越さんに教えていただきます。
ユージ:塚越さん、今年の「年末調整」なぜ、変更点があるのでしょうか?
塚越さん:もうそんな時期になって恐ろしいなと思います。今年、話題になったのが「年収103万円の壁」でした。所得税のかからない扶養のままでいられるのが103万円ですが、これだけ賃上げがあると労働時間を抑える必要があり、人手不足が進行してしまいます。また物価高対策も必要ということで、税制改正が行われまして、上限の壁は人にもよりますが、場合によっては160万円くらいまで広がります。少し多めに働いても税金がかかりにくくなります。対象は主に3つあります。働く人本人の控除、家族の扶養控除、そして大学生世帯の子どもがいる世帯の控除です。この改正は12月1日に施行されるのですが、11月まではこれまで通りで12月からは改正後の規定が適用されます。ただ、途中までは旧制度でも、最終的には「新しい制度でまとめて計算調整」されるので、慌てずに年末調整のお知らせを確認してください。今回は、損をしないように今のうちに変更点を抑えましょう。
吉田:では、年末調整の変更点、順番に教えてください。
塚越さん:はい。まずは働く人本人に関する「基礎控除と給与控除」の変更です。つまり、同じ年収でも税金が減る可能性があるということです。基礎控除は所得税を計算する時に一定額が合計所得から引かれるものですが、これまでは一律48万円でした。これが合計所得金額に応じて、58万円〜95万円と最大でほぼ2倍になります。ただ、これは今年と来年の暫定的な措置で、2027年以降は一律58万円になります。これまでより10万円は控除が増えるということです。次に「給与所得控除」。これは給与で働く人が経費の申告ができない不公平を是正するもので、税金の計算の時に「経費」として自動的に差し引くことができる制度です。これまでは年収に応じて控除額が最低55万円だったのですが、これが65万円に引き上げられます。
ユージ:この2つの控除は、多くの人に影響がありそうですね。続いての変更点は何ですか?
塚越さん:どんどんいきます。次は家族がいる人に向けた、「扶養控除・配偶者控除」の所得要件の緩和です。先ほどの基礎控除と給与所得控除が引き上げられたので、子どもを扶養している人や配偶者の所得要件も見直しされます。なので、去年までは103万円を少し超えると扶養から外れていた家族(配偶者や子ども、親など)も、個々の所得に応じてではありますが、およそ123万円までは扶養の対象に入るケースが増えます。また勤労学生控除についても、合計所得金額の要件がこれまでの「75万円以下」から「85万円以下」と引き上げになるので、アルバイトの収入がある学生も控除対象になります。要するに、103万以上働いても控除される可能性があるということです。
吉田:共働き世帯や、お子さんが働いている方は、要チェックですね。
塚越さん:はい。そして、3つ目は、「特定親族特別控除」という、難しい名前ですが新設されるものです。これは、19歳以上23歳未満の大学生世代の子どもがいる世帯に向けたものです。簡単にいえば、これまで103万円までにバイトを控えていた学生も、親の所得に応じて、最高で63万円から段階的に控除が受けられるというものです。要するに、これまでの基礎控除や扶養控除なども加えると、最大で子供が188万円くらいまでは稼いでも控除が受けられる、というものです。ただ、この控除を受けるためには、特別な申請書(「給与所得者の特定親族特別控除申告書」)を提出する必要があるので、該当する人は覚えておいてください。
ユージ:変更点を踏まえて、今年の年末調整で気をつけることは何でしょうか?
塚越さん:今、お話し聞いただけで、少しお腹いっぱいですよね。正直、分からなかったと思います。私も色々調べながら喋ってもこれだったので、難しいと思うのですが、とにかく変更があるということです。国税庁のホームページに「令和7年分 年末調整のしかた」というのが公開されています。気になっている方は、チェックしてください。経営者の方は、従業員へ説明も必要なので、なかなか大変ですよね。国税庁がコールセンターを開設しているので、経営者の方はこちらチェックしてみてください。とにかく、税金が色々変わってきたのでここをチェックするということだけは、忘れないでいただきたいと思います。