25.10.23
ツイートは“著作物”、SNSで気をつけたい著作権

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の学習院大学・非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
「ツイートは“著作物”、SNSで気をつけたい著作権」
吉田:旧Twitter(X)の投稿のスクリーンショット画像を無断転載された原告が、著作権を侵害されたとして、転載したアカウントの利用者におよそ200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で10月9日に東京地裁は、投稿は著作物に当たると認定。およそ40万円の支払いを命じました。そこで、この判決を受けて、SNSの投稿と著作権について塚越さんと考えていきます。
ユージ:塚越さん、まず今回の判決について教えてください。
塚越さん:はい。まずこれは2023年に自分のアカウント画像と一緒に過去に投稿したある俳優を応援するツイート内容をスクリーンショット=スクショされて、ネットの掲示板に転載されました。その時に、「発想がイミフ(意味不明)」などと、揶揄の言葉がついていました。原告はこれが著作権侵害ということで、転載した人におよそ200万円の損害賠償を求めて、裁判では原告の投稿は著作物であると認定して、およそ40万円の支払いが命じられたということです。裁判所は、アカウントの画像や投稿は、個性が現れていて、思想や感情を創作的に表現したと認定しました。ただ、投稿内容の経済的価値は乏しく、損害は限定的だということで、賠償額は低くなったということですね。
吉田:塚越さんは、この判決についてどう見ましたか?
塚越さん:そうですね。同様の事件は2021年にもあって、この時はNTTドコモに発信者の開示請求をした裁判があって、東京地裁が投稿を著作物に当たると判断しています。ただし、この件ではその2年後の控訴審があって、スクショは引用になると認めていて、裁判が覆ったこともあるので、ケースバイケースの場合もあるかなと思います。いずれにせよ、著作権では「引用」する分には問題ないとされていますが、引用する場合も、引用元を示したり、あくまで引用よりも投稿の方が質量的にメインであるなど、いろんなルールがあります。なので、例えばスクショを貼って「これ嫌い」などと一言書くだけのものなどは、批評や報道目的の場合は適法になるものもありますが、やはり著作権的に問われる可能性もあります。ただこうした問題については、引用以外にも、人を揶揄する目的だったり、お金儲け的なことに使うと問題になるのかなと思います。著作権もそうですが、被害を受けた人が感情的に傷つくので、その結果として裁判になりやすくなるということですね。やはり、人の嫌がることは問題になるかなと思います。
ユージ:X以外のSNSも含め、著作権で気をつけることは何でしょうか?
塚越さん:実際のところ、他人のつくったイラストや写真には著作権がありますが、多くの人はあまり意識していません。善意であっても、他人のイラストや写真を無断で自分のアカウントで再投稿するのはNGです。他にも、いわゆる「パクツイ」という、ツイートの内容をそのままパクって投稿するのもNGです。また、アニメやマンガのスクショをSNSに投稿するのもダメなんですね。これ無意識に色々な人が行っているのですが、厳密にはダメです。ただ企業によっては公式ガイドラインなどで、ここまでは使ってもいいと決めているケースもあります。いずれにしても、作品を盛り上げるとか、肯定的に使う場合は、著作権者が言い出したらきりがないので「指摘しない」という場合が大半です。日本の文化の中で二次創作を含めて肯定的に使われた側面があるのですが、厳密にはNGなので、お金目当てのものはもちろん、悪意のあるものなどは訴えられやすくなりますので、これは覚えておいてください。その上で、基本的に自分でスクショなどを投稿するのではなく、SNSにある「引用機能」、あるいは公式のシェア機能を使うと基本的には安全です。ただ、引用投稿でも、誹謗中傷などはもちろん名誉毀損や侮辱罪にあたります。他にも、他人が写っている写真や動画は本人の同意が必要なので、著作権というより肖像権になりますが、事前許可か顔のぼかしなども必要になります。社会通念上、ある程度はいいだろうみたいなところもあるので、厳しすぎるとそれは問題になります。常識的に考えて、ここは消した方がいいかな、というものは削除してもいいです。あと、TikTokやInstagramで使っているBGMがありますが、あれも本当は使えるものが決まっているので自分でやるのではなくて色々契約しているものをちゃんと使うのも大事です。
ユージ:塚越さんは、SNSと著作権の問題、これからどうなっていくのが良いと思いますか?
塚越さん:やっぱり、色々当たり前のように使っているのですが、実は結構問題だということがあります。そこは気を付けないといけません。被害を受けた人が裁判をしても時間もお金もかかるけど、大したものをとれません。なので、ここは制度を変えていて問題のある投稿などを早めに消せるようにするなど、そこをもっと迅速にするということも結構重要だと思います。やっぱり色々な伝統もあって、がじがじにするのも問題ですが、こういうものがあるというのはみなさん分かったうえで使っているということです。そこは気を付けていくべきものだと思います。