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25.11.05

副業を容認する企業が過去最高…新たなキャリアパス『副業転職』とは?

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の学習院大学・非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


【副業を容認する企業が過去最高…新たなキャリアパス『副業転職』とは?】

手島:パーソル総合研究所が実施した「第四回 副業の実態・意識に関する定量調査」で、副業を容認する企業の割合が64%と過去最高になったことが分かりました。


ユージ:塚越さん、まずは、この調査結果について詳しく教えてください。


塚越さん:まず、厚生労働省は2018年に、モデルとなる副業規則を改定しています。これによって、実質的に副業が解禁になりました。パーソル総合研究所は、その実質解禁になった2018年の副業の実態や意識を定量的に調査しています。今年の調査は8月の頭に、20代〜50代の正社員と企業の人事担当者を対象にインターネットで実施しました。その結果、従業員が副業することを容認する企業は64%で、前回2023年の調査から3ポイント上昇しました。一方で、副業で働く人を受け入れると答えた企業の割合も29%と5ポイント増えて、いずれも過去最高となりました。全体として20代など、若い層で副業実施が多くなっています。


手島:この調査結果には、聞き慣れない「副業転職」という言葉も出てきますよね?


塚越さん:はい。あまり聞き慣れないですよね。「副業転職」は簡単にいうと、副業として働いていた仕事がメインになって、副業先の企業に「正社員として転職する」という、新しいキャリアパスのことを指します。この調査では、副業経験者全体の6.7%が、副業先に実際に転職したことが分かりました。副業転職も若い層ほど高く、20代だと経験者のうち13.6%となっています。もちろん、働く人全体の中でまだまだ副業転職は多くありませんが、今後はもっと増える可能性もありますよね。なので、企業としても副業先に社員が転職してしまうリスク対策だったり、逆に副業する人の転職を受け入れるかどうかを考える上でも、副業の潮流を捉えておく必要があると考えられます。今回の調査では、副業人材を受け入れている企業に、副業で働く人が自分の会社に転職してきたことがあるかを尋ねると、55.6%は「ある」と回答しています。この割合は2023年の調査から上昇していて、副業経由で入社することも、珍しくなくなってきたことになりますね。こうしてみると、副業転職は個人にとっても企業にとっても、最初に副業という「お試し期間」があるため、入社後のミスマッチを減らす機会にもなると思います。また副業転職をした人は、働くことにやりがいを感じるなどのポジティブな状態(「ワーク・エンゲイジメント」)も、通常の転職者と比べて高いことも分かっています。最初から副業で仕事をしていますので、入社してからの期待と現実のギャップも少なくなるかなということです。さらに副業転職者を、一般的なプロセスで転職した人と比べてみると、副業から転職した人は、キャリアに対する上昇志向が一般的な転職者より高く、仕事と生活の調和など、安定志向は低いという結果が出ています。どういうことかというと、副業転職者は、全体として意欲の高い人になるといえますね。もちろん、働きすぎなど気を付けるべきところもありますが、副業転職者は一般の転職者と比べて、もともとの勤め先への不満が大きかったというデータもあります。不満がある会社は、最低限の働き方しかしなくなる「静かな退職」というのが問題になっています。逆に考えると副業転職者は、その逆の「アクティブ転職」といえるのかなと私は思いました。


ユージ:新たなキャリアパス「副業転職」。塚越さんは、どうご覧になりましたか?


塚越さん:私は、とても良いことかなと思います。色々なキャリアのパスがありますし、会社全体も社会として副業を容認するようになったので、なかなか止められないですよね。その上で、ミスマッチも減らしながらどんどん転職するという方は転職されて、いきなり転職するよりも最初から働いて分かるといいですよね。人材不足なので、そうなると職場環境も良くしないといけないですよね。企業は、どんどん人が出ていかないように良くしていかなきゃいけません。まわりまわって職場環境もよくなるし、働く人も色々な働き方ができるということになります。逆に、良い職場環境をつくっておけば副業していた社員の人が「やっぱり我が社はいいな」と思ってくれるかもしれません。


ユージ:そうそう!チャンスでもありますよね。


塚越さん:元々の会社の忠誠心が高くなるということもあると思います。なので、副業はある種、比較の対象になるのでそういうことをしながら、働く人がどんどん働きやすくしていくといいと思います。職場環境も、それに合わせて職場を良くしていくという、この循環をしながら進んでいきますので、転職を考えている方はこういったものもあるんだ、と頭に入れておいていただけるといいかなと思います。


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