25.11.06
衆院議員定数の削減、有権者への影響

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の学習院大学・非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
「衆院議員定数の削減、有権者への影響」
村田:高市総理の所信表明演説に対する各党代表質問が4日から、衆院本会議で行われています。その中で、議題になっているのが、自民党と日本維新の会が連立政権合意で掲げた衆院議員定数の削減です。定数の削減について高市総理は「できるだけ幅広い賛同を得ることが重要だ。各党・各会派とも真摯な議論を重ねていきたい」と表明しています。
ユージ:塚越さん、なぜ今、衆院議員定数削減が議論されているのでしょうか?
塚越さん:定数削減の議論自体は前からありましたが、なぜ今かと言われると、やはり維新を連立に引き入れるための「取引」という側面があります。10月は公明党が連立を離脱して、自民党が連立相手を模索していましたよね。維新の代表で大阪府知事の吉村氏は、自民党に政策合意を迫る際の「絶対条件」として、副首都構想、社会保障改革、そして衆院議員定数の1割削減を提示しています。結局、連立合意書にも衆院議員定数の1割削減を目標として、今年の臨時国会での成立を目指すことが明記されています。もともと維新は自民党の裏金問題に関連して、「企業・団体献金の禁止」を連立の条件にしようとしていたとみられていたのですが、自民がこれを受け入れないとみて、「定数削減」にずらしたという報道もあります。たしかに維新は以前から議員定数の削減を主張していましたが、今回、連立問題が取り上げられて、一気に定数削減が主要なテーマになりましたよね。その裏には、こうした事情があったということです。私は、定数削減は維新の「身を切る改革」という主張を見せる手段にはなりますし、実際そういった部分もありますが、献金禁止の方が大きな意味があり、ちょっとテーマが横滑りしてしまった印象があります。
村田:では、「衆院議員の1割削減」で、何が変わるのでしょうか?
塚越さん:現在の衆議院の議員定数は465人なので、1割削減だと40〜50人減ることになります。また、選挙制度は2つあって、1選挙区で当選者1人を選ぶ「小選挙区」が289人。もう1つが、全体を11のブロックに分けて選ぶ「比例代表」が176人です。どこをどう削減するかといった具体案は自民維新側からは出ていないのですが、維新としては比例で50人削減する案を主張していて、今後大きな焦点になります。ただ、小選挙区と比べて比例は、中小の政党の人たちが当選していることが多いので比例を削ると中小のところには厳しいです。実際、読売新聞の試算では、比例で50議席を削減すると、小選挙区を含めた議席の減少率は、自民で9%、立憲で6%、維新で13%です。公明と共産は25%減、参政党と日本保守党は67%減と非常に影響が大きいです。確かに小選挙区の削減をすると、調整するのが比例より格段に難しいのですが比例だけ削減するとなると中小の政党には厳しいので、全体として反対の声があがっていますし、自民党内でも反対の声はあるということです。
ユージ:有権者には、どんな影響があるのでしょうか?
塚越さん:当たり前ですが、議員が減れば報酬や政務費用など、税金が削減されます。身を切る改革といえば、確かにそうです。一方で、比例代表の定数が削減されると、少数政党や地方選出の議員が減るので、多様な声を代弁する力が弱まります。また世界的にみても、日本というのは、人口に比べて議員の数が決して多くありません。G7でも下から2番目で、こうした点は比例で当選した「チームみらい」の安野貴博議員も述べています。安野議員は、政治家の新陳代謝の進みが遅くなると指摘しています。比例を50人減らすとそういうことになります。確かに議員1人にお金はかかりますが、何千億、何兆円というお金を動かす国会議員の数を50人減らしたとして、財政にどこまで影響があるのか?ということなので、不正は正しく追及する必要がありますが、数を減らせば問題が解決できるかはどうなんだろうと思います。
ユージ:議員定数削減と言われていますが、塚越さんはこれについてどう思いますか?
塚越さん:やっぱり維新が連立入りの条件闘争という面がかなり大きいかなと思います。一気に問題が大きくなってきたということで、議員を削減するにしても代わりに比例の数を増やしたり、小選挙区などバランスも必要です。死票を減らすとか、一票の格差問題をどうにかするためバランスも必要になるのかなと思います。国民が納得できる方法をする必要があるかなと思います。高市政権、人気が高いですが、こういった細かい点がいいのか悪いのか与党全体としてみていく。我々がチェックしていく必要があると思います。