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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

25.11.10

高市政権が外国人政策を強化

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は、ダイヤモンドライフ編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


「高市政権が外国人政策を強化」

吉田:政府は先週、外国人の受け入れに関する閣僚会議の初会合を開きました。高市早苗総理は「一部の外国人による違法行為やルールからの逸脱」があると指摘。外国人との「秩序ある共生社会」の実現に向けた取り組みを指示しました。そこで、高市政権が強化する外国人政策について、神庭さんに解説してもらいます。まずは、この閣僚会議では何が話し合われるのか、教えてください。


神庭さん:外国人の受け入れに関する基本方針を策定し、1月を目途に対応策をまとめることを目指しています。大きなポイントは4点あります。1つ目が、出入国と在留管理の適正化です。不法就労対策を強化し、不法滞在者ゼロを目指して摘発送還します。特定技能制度や育成就労制度に関して、監理支援機関の要件を厳格化します。2つ目が、社会保障制度の適正化です。外国人の税や社会保険料の未納を防止することです。国民健康保険料を滞納している外国人は在留資格を更新できない仕組みを2027年6月から始める方針です。医療費の不払い情報も出入国在留管理庁に共有し、審査を強化します。3つ目が、国土の適切な利用と管理です。外国人による土地取得のルールを見直します。大規模な土地購入に関しては7月から国籍の届出を義務付けていますが、今後こうした情報を国に集約していくということです。4つ目が、観光や短期滞在者への対応強化です。外国人観光客や短期滞在者の犯罪迷惑行為への対応を強化するということです。


ユージ:どれも重要な話ばかりですね。


神庭さん:実は、いま挙げた4つの課題の大半は、石破政権時代の6月に定められた「経済財政運営と改革の基本方針」に盛り込まれているものです。ですから、高市氏が突出して主張しているわけではないですが、対策をどうやって具体化するか、これから議論を深めていくということだと思います。


吉田:では、高市総理はどんな指示を出しているのでしょうか?


神庭さん:「人口減少に伴う人手不足の状況において外国人材を必要とする分野があることは事実。インバウンド観光も非常に重要」としたうえで、外国人の違法行為やルール違反に国民が不安や不公平を感じていると指摘しました。そして、「排外主義とは一線を画しつつ、こうした行為には政府として毅然と対応する」と訴えました。そのうえで、ルールの遵守や制度の適正化を進めるため、各大臣にこんな指示を出しました。不法滞在者ゼロプランの強力な推進。在留資格審査の厳正な運用。国民健康保険料や医療費など各種制度運用の見直し。そして、外国人犯罪への適切な対応といったことです。


ユージ:外国人観光客への対応や、土地取引についてはどうでしょうか?


神庭さん:高市総理は外国人観光客への対応として「国際観光旅客税」、いわゆる出国税の拡充やオーバーツーリズム対策の強化、民泊の適切な運営の検討を各関係省庁に指示しました。土地取引に関しては、「不動産の移転登記時」や「森林の取得の届出時」の国籍把握の仕組みを検討することや国外からのマンションの取引実態の早急な把握と結果の公表。そして、国籍情報を取り込んだ一元的なデータベースの管理などを指示しました。


ユージ:高市政権の外国人政策、神庭さんはどう受け止めましたか?


神庭さん:日本人であれ外国人であれルール違反やズルはダメだよ、ということとか国防の観点から土地取引の透明化を進めるよ、というのは、ごくごく当たり前の話で問題ないかなと思います。一口に外国人政策と言っても、観光オーバーツーリズム、土地取引、移民問題では全然違います。順番としては、観光→土地→移民の順に日本との関わりのグラデーションが濃くなり、政策としての重要度も増していきます。外国人政策担当大臣として小野田紀美氏が入閣されましたので、司令塔となって、その辺りの優先順位づけや交通整理をやっていくのかなと思います。日本はずっと「移民じゃありません」「実習生です」「特定技能です」「育成就労です」と誤魔化して、事実上の移民政策をとってきました。覚悟や責任のないままに「ヌルッと移民」を進めてきた結果、様々な問題が噴出し、かえって反移民感情を強めてしまったと思います。


ユージ:神庭さんは、どんな対策が必要だと思いますか?


神庭さん:誤魔化しはやめて、外国人との共生について真正面から向き合うべきだと思います。人手不足だからと経済の論理で外国人を入れて、尻拭いを自治体や地域社会に丸投げするようなやり方はダメです。受け入れるのであれば、教育や社会統合も含めて、国が責任を持って進めないといけません。あとは、「排外主義とは一線を画す」という高市氏の言葉も重要です。所得格差が大きい地域では、排外主義や外国人嫌悪(ゼノフォビア)が生まれやすくなります。「外国人が優遇されている」という主張がウケるのは、「自分たちは冷遇されている」「大切にされていない」と考える人が増えている裏返しでもあります。外国人問題と言いますが、実際は、日本人問題の鏡写しでもあると思います。「相対的剥奪」という言葉がありますが、「自分は恵まれていない」「奪われている」と感じている人たちをいかに減らしていくか。経済格差を是正していくことこそが、一見遠回りに見えて「秩序ある共生社会」を目指すうえで一番の近道になるのではないかなと思います。


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