25.11.12
税金の無駄遣い、2024年度は540億円…会計検査院が指摘した事業は?

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターは、情報社会学がご専門の学習院大学・非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
「税金の無駄遣い、2024年度は540億円…会計検査院が指摘した事業は?」
吉田:会計検査院は11月5日、2024年度の決算検査報告を高市総理に提出しました。「税金の無駄遣い」を指摘するなどした事業は319件。金額はおよそ540億8100万円でした。塚越さん、こちらの検査報告について詳しく教えてください。
塚越さん:まず会計検査院とは、国の予算の使い方をチェックして、税金が正しく使われているかを調べる内閣から独立した行政機関で、先日2024年度の報告書が提出されました。これは内閣に送られ、そこから国会に提出されるのですが、国会の決算審議などで重要な資料になります。先に結果を言うと、税金の無駄遣いなどを指摘した事業は319件で540億8100万円。中でも法令違反や不適切な予算執行は271件で、86億円を超えました。また、改善を求める「意見表示・処置要求」は17件で、金額は334億3000万円程度となっています。500億以上という大きい金額ですが、これでも件数、金額ともに去年度を下回っています。会計検査院が指摘する対象ですが、「税金や社会保険料の徴収不足や逆に取りすぎたものはないか」とか「工事などでかかった支出額が多すぎないか」「補助金が過大に出されていないか」などになります。また、有効に活用されていない資産の額など、様々な観点から検査が行われます。2023年度までは検査の重点はコロナ対策関連でしたが、今回提出された2024年度の報告書は、社会保障やインフラ、防衛、デジタルなど、分野が幅広くなっています。ただ、指摘件数自体は前年度より全体で2割ほど減りました。
吉田:法令違反や不適切な予算執行と指摘されたのは、どういった事業なんですか?
塚越さん:法令違反や不適切な予算執行の「不当事項」は271件で合計およそ86億円になりますが、目立ったのは医療福祉分野で、中には虚偽申請で支援を受ける事業者などのケースもありました。例えば、障害者や高齢者の就労を支える「職業訓練機関」は、2019年度〜2024年度にかけて、厚生労働省から奨励金を5億2000万円程度不正受給していたということです。これは経歴を偽って申請していたという悪質なもので、4億9000万円は国に戻される手続きをしましたが、残りの3000万円程度は返還請求ができませんでした。他にも、コロナ禍の中小企業向けの支援策も指摘の対象となっています。ビジネスモデルを変えたり、新規事業を後押しする「事業再構築補助金」は、20の事業者で合計およそ3億4000万円の不正受給を認定しています。事業者側の架空の経費計上などがあったということです。他にも不正ではないですが、108の事業者で24億7000万円分の支援金が対象外の事業に使われるケースもあり、報告書ではチェックする側の体制の甘さなどが指摘されています。
ユージ:インフラの安全上の不備に関する「指摘」もあったようですね?
塚越さん:そうですね。例えば、群馬県を走る国道上の橋梁(要するに橋)の一部や、福島県や広島県の水路の擁壁(ようへき)、壁が安全基準を下回っていました。これは委託した業者の設計が不適切で、自治体の検査も十分ではなかったということです。こうしたインフラに関わる問題も多く指摘されています。会計検査院側も、災害発生時にインフラが機能しないと大きな問題になると指摘しています。
ユージ:会計検査院の検査報告、塚越さんはどうご覧になっていますか?
塚越さん:国民の税負担が増えているので、無駄はないほうがいいですし、関心が高いです。我々の税金が使われている事になりますので。難しいのは、スピード重視と検証不足です。補助金などはスピード感が大事ですが、だからこそ不備も生じやすいです。AIを活用すれば、こうした不備を減らすことができるはずです。また報告書では「デジタル化が進まないこと」「紙などを使っているから起きる不備が多い」という指摘もあるので、やはりデジタル化もキーワードになると思います。検査は面倒ですし時間もかかりますが、AIを利用したり検査員側も効率化するという事も大事だと思います。細かな作業にこそ目を向けないといけないのは、私たちの日頃の生活でも同じです。昨今ではビジネスでも、外部からの監査が非常に重要になっています。法律を守るのはもちろんのこと、資金が有効に活用されていないなど、無駄を省いたり、今後問題になるかもしれないことを事前に発見することにも役立つので非常に重要な作業だと思います。