network
リポビタンD TREND NET

今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

25.11.17

紛失防止タグの悪用規制、ストーカー規制法を強化へ

null

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は、ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


「紛失防止タグの悪用規制、ストーカー規制法を強化へ」

ユージ:貴重品を追跡できる「紛失防止タグ」を悪用したストーカー行為が急増していることを受け、政府は11日、紛失防止タグの悪用を規制するストーカー規制法の改正案を閣議決定しました。そこで、悪用の実態や規制強化について神庭さんに解説してもらいます。まずは、規制が強化される紛失防止タグについて、教えてください。


神庭さん:カバンや財布、カギなど貴重品につけられる小型の通信機器で、どこかに忘れてしまったり、失くしたりしても場所を突き止めることができるツールです。子どもの見守りに使うケースもあります。これは「スマートタグ」とも呼ばれ、一番有名なのがAppleのAirTag。直径3.2cm弱、厚さ8mm、重さ11gとコイン並みに小さく、価格は少し高くて5,000円弱します。他社からはもっと安い、2,000円〜3,000円程度の商品も出ています。私みたいに、すぐ物を失くしちゃう人、いつでも探している山崎まさよしさん状態の人からすると、非常にありがたいお助けアイテムと言えるかなと思います。


ユージ:確かに便利だなというのは、あります。実際に我が家でも紛失して欲しくないものに使っています。この悪用について問題になっていますが、どのくらい増えているのでしょうか?


神庭さん:実際に増えていまして、警察庁によれば紛失防止タグを悪用したストーカー事案の相談件数が2021年はたった3件だったのですが、それが113件、196件と年を追うごとに増え続け、昨年は370件に急増してしまいました。


ユージ:しかも、これって気付いたケースですよね?


神庭さん:そうそう。あくまでも氷山の一角です。


吉田:まさに追われているのかもしれないですね。なぜこんなに増えているのでしょうか?


神庭さん:紛失防止タグの仕組みにも関係しています。2021年の法改正で相手の持ち物に、GPS機器を無断で取り付けることは禁じられました。ところが、紛失防止タグはGPSではなくBluetooth通信を使っています。紛失防止タグが近くを通過すると、周囲のスマホが検知してその情報をクラウドに送る。その結果として位置情報がわかるという仕組みになっています。紛失防止タグ自体が位置情報を発信するわけではないため、規制の網から漏れ、「法の抜け穴」のようになっていました。今回のストーカー規制法の改正法案では、その抜け穴を塞いで紛失防止タグを取り付ける、無断で紛失防止タグの位置情報を取得するといった行為も規制対象となるということです。政府は合わせてDV防止法も改正して、DV加害者が紛失防止タグで被害者の居場所を特定することを禁止する方針です。ともに臨時国会での成立を目指しているそうです。


ユージ:紛失防止タグの悪用にはどんな事例があるのでしょうか?


神庭さん:これ、結構怖くて複数の報道によると、2022年には会社員の男が同僚の女性の車にAirTagをつけ、女性に対して職場で「昨日、病院にいたよね」と話しかけたなどとして書類送検されています。気づかずに運転していた間、情報が筒抜けになっていたとみられます。他にも、紛失防止タグをつけた女性の車に自分の車を衝突させて女性を拉致したケースや、離婚調停中で居場所を秘密にしていた妻と子どもに、紛失防止タグを仕込んだぬいぐるみを渡すといった悪質なケースが確認されています。アメリカでは恋人の浮気を疑った女性がAirTagで居場所を突き止め、車で轢き殺す事件まで起きています。


吉田:怖い事件ばかりですね。紛失防止タグを仕掛けられた側はどうやって身を守ればいいでしょうか?


神庭さん:AppleやGoogleのスマホは、AirTagの不正利用を検知すると警告してくれます。iPhoneなら、自分の持ち物ではないAirTagを周辺で検知した場合、「AirTagはあなたと一緒に移動しています」といった表示が出ます。ただし、iPhoneの設定次第で反応しないこともあるので、心配な人は「位置情報サービス」「iPhoneを探す」「Bluetooth」「トラッキング通知」の設定をオンにしておいてください。加えてAirTagには、長時間にわたって元の持ち主(この場合、悪意を持って仕掛けた人物)から離れると、アラームが鳴る機能があるので、その音で気づける可能性もあるかもしれません。


ユージ:Androidの場合はどうでしょうか?


神庭さん:Androidの場合、「不明なトラッキングアラート」という機能で、近くに不審な紛失防止タグがないかスキャンしたり、音を鳴らしたりして調べることができます。紛失防止タグを無効にする機能もありますが、一部の紛失防止タグはオフにした瞬間に工場出荷時の設定にリセットされ、元の所有者の手がかりになる情報まで消えてしまう可能性があります。そうすると、その後の捜査に差し障るリスクもあるので、そこは警察に相談しながら慎重に進めた方がいいかなと思います。もちろん、バッグから怪しい紛失防止タグが出てきたら誰でも怖いと思います。でも、そこで慌てて、その場で無効化にしたり、電池を抜いたりすると、そこが自宅や職場であるとストーカーに悟られる恐れがあります。「こちらが紛失防止タグの存在に勘づいている」ことがストーカーに伝わり、不用意に刺激してしまうかもしれません。落ち着いて、捜査機関や信頼できる人に相談しながら対応していただきたいです。これだけ、技術の進歩って日進月歩で非常に進んでいて我々便利だなと享受していますが、それって犯罪者にとっても便利になっているということですから、こういった犯罪者の悪用を防ぐために、法制度のアップデートも急いでいただきたいなと思います。


  • X
  • Facebook
  • LINE
Top