25.11.18
高校授業料の無償化が決定しましたが、負担は授業料だけではありません。あがり続ける制服代 問題を考えます。

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は、ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。
「高校授業料の無償化が決定しましたが、負担は授業料だけではありません。あがり続ける制服代 問題を考えます。」
吉田:高校授業料の無償化が決まりましたが、負担は授業料だけではありません。インフレの影響で中学や高校の制服代が高騰、子どもの支援団体や保護者からは、負担軽減を求める声もあがっています。そこで、制服の値上がりの現状と求められる対策について、神庭さんと考えます。
ユージ:制服代は、どれくらい上がっているのでしょうか?
神庭さん:総務省の統計によると、この10年で男子の学校制服の平均価格は約3万1,000円から4万円超へ9,000円以上も値上がりしています。女子の方も10年前の3万円弱から今は3万9,000円ほどですから、やはり9,000円超のアップです。インフレもあるとはいえ、家計負担はずっしりと増してきている状況です。「高校無償化、無償化」といいますが、あくまで授業料だけの話で子どもが大きくなると様々にお金がかかってくるということです。
吉田:思った以上に上がっていますね。保護者の負担は実際、どれぐらいなのでしょうか?
神庭さん:子どもの支援に取り組む公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンのアンケート調査によれば「どのような費用を用意するのが難しいか?」という問いに対して、8割ほどの保護者らが制服代と答えています。運動着、学校用の靴、カバン代なども負担感を訴える割合が高かったです。時代を感じるところでは、新・中1の21.1%、新・高1の56.6%が「パソコン・タブレット代」と答えています。「卒業・入学準備の費用をどのように捻出するのか?」という質問には、6割ほどが「他の生活費を削る」と回答。このうち7割が「親自身の食事量を減らしている」、6割超が「冷暖房をあまりつけないようにしている」と答えたということです。なかには家族や知人からの借金、キャッシング、消費者金融のローンで賄なったという回答もあり、苦しい生活ぶりが浮き彫りになっています。
ユージ:これは予想以上に厳しいなという感じがします。新品の制服じゃなくても、古着という選択肢もあると思いますが、その辺りはどうでしょうか?
神庭さん:実際、そういう取り組みも広がっています。「学生服リユースショップさくらや」は、着なくなった制服や学校指定用品を回収、クリーニングをかけて名前の刺繍をほどくなどして、廉価で販売しています。「制服がどこで売られるか不安」「ブルセラショップに流れるんじゃないか」と不安を抱いている保護者の方もいると思います。そういうことにならないように、NPO法人学生服リユース協会では優良店の認定制度を設けて認定書やステッカーを交付しているそうです。学校公式で制服の譲渡会やバザーをやっているケースもあるので、安く手に入れたい人はそういう催しをチェックしておくのも手かなと思います。
ユージ:僕は、いつもこういうところで学生時代、母親と一緒に買っていましたよ。
吉田:古着ではなく、制服レンタルのサービスもあるそうですね。
神庭さん:そうです。AERA DIGITALなどによると、北海道十勝地域の中学生の3人に1人は、制服を購入せずレンタルサービスを活用しているそうです。帯広市の「ぎゃくし」という企業が提供する「定額学生服レンタル借りホーダイ!!」サービスだと、3年間のレンタル料が税込で4万3,890円。普通に買うと4〜5万円なので大して変わらないのでは?と思う人もいるかもしれないですが、中学生は成長期でサイズがどんどん変わります。買い替えのコストも含めて考えると、常にジャストフィットの制服をレンタルできる方がお得という考え方もあります。ただ、このビジネスが成り立つのは十勝ならではの特殊事情もあるそうです。冬場はマイナス20度近くになるため、普段の登下校はジャージです。制服を着るのは入学式、終業式、修学旅行などの限られた機会だけなので制服がそもそも傷みにくいです。毎日のようにガンガン着倒していたら、あっという間に擦れたり破れたりしてしまいますが、年に数えるほどであれば、その心配もないということです。
ユージ:レンタルがあればいいですが、レンタルも中々難しいとなった場合は、例えば新品の制服を安くする必要が出てくるんじゃないかと思うのですが、それができることあるのでしょうか?
神庭さん:私自身は制服のない公立高校に通っていたので、いっそ制服なくしてもいいのでは?とも思いますが、「制服がないと毎日着る服を考えるのが大変」とか、「私服は貧富の差が如実に出るので良くない」といった意見も根強くあります。なので、今回はあえて制服を残す方向で少しでも安くする方法を考えたいと思います。1つ目は、大手メーカーの制服を活用する。ユニクロ制服を導入した、さいたま市立大宮北高校では、もともと1着4〜6万円した制服の価格が、3分の1から4分の1まで下がったそうです。2つ目は、DXで効率化を図る。「UOS」(ウオス、UNIFORM ORDER SYSTEM)というサービスを使うと、これまで制服メーカーや学校がやってきた生徒の採寸や注文集計の作業をオンライン化できます。スマホで撮った全身写真からAIが身体測定してリモート採寸できるのでコストカットすることもできます。3つ目は、地域共通制服の導入です。学校ごとに小ロットでつくるから値段が高くなります。今は自治体ごとに共通の制服を導入する動きが全国で広がりはじめています。これを、なんなら都道府県単位でまとめられると、大量生産で劇的にコストを下げられるんじゃないかなと思います。強制力の強い制服ではなく、一定の基準を満たした「標準服」として、メーカーや細かな仕様までは問わないようにする、というやり方もアリじゃないかなと思います。