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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

25.11.19

今年7月〜9月のGDP、6期ぶりのマイナス成長…政府の経済対策はどうなる?

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の学習院大学・非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


「今年7月〜9月のGDP、6期ぶりのマイナス成長…政府の経済対策はどうなる?」

吉田:内閣府が17日に発表した今年7月〜9月期のGDP=国内総生産の速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前の期と比べてマイナス0.4%、年率換算はマイナス1.8%でした。マイナス成長になるのは「去年1月〜3月期」以来、6期ぶりです。塚越さん、マイナス成長になった理由を詳しく教えてください。


塚越さん:いろんな要因があるのですが、GDPの半分を占める個人消費は0.1%ですが増えています。夏の時期なので、飲料や外食、鉄道などが増えています。またプラスとしては、設備投資も1%増と4四半期、つまり1年連続でプラスです。ただ、全体としてはマイナスで、大きいのは「トランプ関税」です。輸出が1.2%減と、半年ぶりにマイナスとなりました。自動車は当然のことながら、統計上は輸出になるインバウンド消費もマイナスになりました。もうひとつ大きなマイナス要因は、「住宅投資」で、なんと9.4%のマイナスです。なぜかというと、4月に省エネ基準などをめぐる制度の改正があり、建設コストや手続き負担が増えるということもあります。3月までに駆け込み需要があり、その反動が今回きたとみられます。なので、この住宅投資に関しては、10月以降は持ち直すとみられています。


吉田:今回はマイナス成長でしたが、次の四半期=10月〜12月のGDPはプラス成長に戻るとみられていますよね?


塚越さん:そうですね。先程の住宅投資の件などもありますし、トランプ関税に関しても、関税率が9月に15%に落ち着きました。もちろん影響は大きいですが、企業としても、ある程度時間も経って対応ができるようになります。こうした要因もあって、民間のエコノミストの多くは、次の10月〜12月期のGDPは小幅ながらプラスになるんじゃないか、という見方をしています。ただ後でお話するように、中国の問題があるので、懸念もあり楽観視はできません。


ユージ:こうしたなか、政府は21日に経済対策を閣議決定する見通しです。どんな物価高対策が盛り込まれるのでしょうか?


塚越さん:政府は、来年1月〜3月の3ヶ月にわたって、電気ガス代の補助を行います。一般的な4人家庭でみると、3ヶ月合計で6,000円程度の補助になる方向です。他にも、地方自治体には「重点支援地方交付金」を拡充する方向で、この中には食糧購入支援をするための推奨メニューを国が提示します。あまり評判のよくない「お米券」の配布等もありますが、自治体がある程度決めることができます。他にも、年内にはガソリンの暫定税率が廃止されるので、自動車を利用する家庭は負担が減りますね。いずれにせよ、報道によれば、今年度の補正予算の一般特別会計の支出や大型減税など、合わせると17兆円を超える規模とのことです。去年が14.8兆円なので、それと比べても、高市政権の「責任ある積極財政」がみられるかなと思います。ただ、今回に関しては石破政権の頃から進めてきたものもあると思われるので、次の経済対策になると、さらに高市カラーが出るかなと思います。


ユージ:「7月〜9月のGDP」と「政府の経済対策」。塚越さんは、どうご覧になっていますか?


塚越さん:トランプ関税が落ち着いたのは間違いないのですが、関税自体は15%と高いので、ここは引き続き課題があります。また政府の経済対策は額が大きくなりますが、結局のところガソリン減税を除くと、「いつもの対策」という感じで、国民が高市氏に期待しているものとはちょっと違うかな、とも思います。また、高市氏が重視する「積極財政」は、インフレ圧力物価上昇を呼び込む可能性もあるので、長期的にはやはり日本経済が成長するしかないと思います。それ以上に経済にとっての課題は、高市氏の台湾有事をめぐる発言から、中国との摩擦の問題ですよね。中国からも日本への渡航自粛要請が出されましたが、これ1月から9月のインバウンドの消費額をみると中国は国地域別でトップの1兆6,443億円と、全体の2割強を占めています。これが半分になると結構な打撃になります。そう考えると、日中の摩擦の中で「観光客が減るのは良いこと」という意見もSNSにみられますが、そんなに簡単な話ではありません。この問題に関しては、様々な歴史的な話の中で出たものなので簡単にこれが良い悪いというのは、判断が難しいと思うので色々な勉強が必要になってくると思います。このままいくと、不買運動や輸出・輸入の規制を中国はする可能性があります。これを考えると、日本としては冷静になって話し合いをして解決するためのことをまずは政府が頑張って欲しいなと強く思います。


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