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25.11.26

介護保険サービス、自己負担『2割』の対象者を議論…厚労省の案は“預貯金を考慮”

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の学習院大学・非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


【介護保険サービス、自己負担『2割』の対象者を議論…厚労省の案は“預貯金を考慮”】

村田:介護保険サービスを使う65歳以上の高齢者のうち、自己負担を「2割」とする人の対象を拡大する議論を巡り、厚生労働省は、20日の社会保障審議会の部会で、金融資産を考慮し、預貯金額が一定額未満の人については現行の「1割」負担を維持する案を示しました。塚越さん、「介護保険サービスの自己負担に関する厚労省の動き」について、お願いします。


塚越さん:まず介護保険サービスは、65歳以上で要介護認定を受けた人が利用するものです。データからいうと、介護保険サービスを利用している人は制度が開始したのが2000年4月ですが、この時点で149万人でした。それが去年の4月には529万人と、24年で3.5倍に増えています。また介護保険サービスの財源は、半分が国や自治体による公費で、他は利用者の自己負担や40歳以上の人が支払う保険料になります。利用者が増えたこともあり、保険料は増加傾向にあります。今年度の平均額でいうと、40歳〜64歳の現役世代の負担は、会社などが負担する分も含めて、月額6,202円。65歳以上の人は月額6,225円です。これは制度開始の2000年時点から2倍以上の金額になっています。実際、サービスの給付費や事業費なども、一昨年は合わせて11兆3,000億円と制度開始から3.5倍になっています。さらに今後は要介護になる人が多くなる85歳以上の高齢者が増加し、2040年には今より300万人ほど増えて1,000万人を超える見通しということです。一方で、2000年の制度開始からこれまで介護保険料を払う40歳以上の人口は増加し続けていたのですが、今後は特に40歳〜64歳の現役世代が減少していきます。つまり、支えては減るのに、サービス利用者は増えるので、課題だということになっています。そこで利用者の負担について議論になっています。こちらもデータをみると、まず現在の利用者負担は原則1割です。これは高齢の単身者だと、年金を含めて収入が年間280万円未満(夫婦世帯だと年間346万円)これが、大体1割負担になっています。これよりも収入が高い人は、単身者だと280万以上340万円以内の人は2割、現役の340万円以上の人は3割負担になっています。9割以上が1割負担の人になっています。今回の厚労省の案ですと、2割負担となる所得の基準を引き下げて、簡単にいえば2割負担になる人を増やそうということです。一方で、所得はあっても預貯金が十分にない場合は1割負担のままにして、サービスの利用控えを防ごうとしています。厚労省は2027年度の制度改正に向けて、具体的な金額や預貯金の金額などを年末までにまとめようとしています。


村田:「2割」負担の対象拡大について、現状、どのような意見が出ているのでしょうか?


塚越さん:20日に開かれた社会保障審議会の部会だと、物価高で高齢者が苦しんでいるから負担は良くないと反対する意見がありました。現役世代は大変だから、2割負担の対象を増やすべきじゃないか、という議論がありました。また、そもそも銀行などの預金、貯金の額で支払い能力があるかどうかを判断することの是非だったり、実務的にも預貯金の把握方法に課題があるという意見もありました。確かに、窓口の事務負担は大変でしょうし、他にも意図的に隠したり、逆に他の人への対応をどうするかなど、課題はあります。個人的には不動産や株式も資産ですよね。ビットコインなどの暗号資産もあります。現状やるのは、銀行の紐づいている預貯金ということですが、他の不動産も持っていてどうやって把握するのか、どこまで調べていいのかも課題かなと思います。


ユージ:介護保険サービスの自己負担額の引き上げというところでは、塚越さんは、どうご覧になっていますか?


塚越さん:現役の負担もあるので、ある部分は仕方ないのかなと思います。例えば、高齢者の方でも3,000万円以上の蓄えがある人もいます。裕福な方は、預貯金などそういうところから判断するのは悪くないことなのかなと思います。先ほど話したように資産は色々あります。「投資をやりましょう」と国も言っているので、そういった意味で資産が分散化されている、その中で預貯金だけでいいのか。そうすると、富裕層の方は預貯金を減らして、その分を投資に回したりして把握できなくなり、割を食う人が出てくるかもしれません。そうなると、ここの詰め方ですよね。あとは、どこまで国がそういった資産を把握していいのか、ということもプライバシーも含めて議論になるので、ここは慎重に議論する必要があるのかなと思います。


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