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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

25.11.27

最近よく聞く“現役世代の負担減”、負担はどのくらい増えたの?

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の学習院大学・非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


「最近よく聞く“現役世代の負担減”、負担はどのくらい増えたの?」

村田:政府は、株式の配当など金融所得を高齢者の医療費の保険料や窓口負担に反映する方針を固めました。金融資産を多く持つ高齢者の医療費を抑え、「現役世代の負担軽減」につなげようと26年の通常国会に関連法の改正案を提出する方針です。最近、「現役世代の負担を減らそう」という言葉をよく耳にしますが、「現役世代の負担」ついて、塚越さんと考えたいきたいと思います。


ユージ:塚越さん、実際に働く現役世代は、どんな負担をしているのでしょうか?


塚越さん:「現役世代」ですが、基本的には働いて税金や社会保険料を払って、高齢者を支える年代、主に20歳〜64歳くらいまでです。社会に出て働き始めて、定年になるまでの層と言えます。おさらいですが、少子高齢化の中で今の日本はおよそ人口の3人に1人が65歳以上の「高齢者」です。データでみると、1975年は1人の高齢者を現役世代7.7人が支えていましたが、今になると高齢者1人を現役世代2人で支えています。また財務省が公表している「国民負担率」があります。これは国民の所得全体に対する、税金と社会保障費が示す割合です。よく聞くと思いますが、1970年度には国民負担率は24.3%でしたが、55年経った2025年度は、46.2%になる見通しです。ほとんど倍になっています。簡単にいうと、所得の半分近くが税金と社会保障費ということです。


村田:私たちの実感としても負担が重いと思っている方が多いと思います。世界的に見ると、比べたらどうですか?


塚越さん:国民負担率、世界と比べると決して高くはありません。国際比較が可能なデータは財務省が公表している2020年のものがあります。2020年はコロナもあって世界的に高くなっているのですが、日本は47.9%でした。アメリカの32.3%、イギリスの46%より高いですが、ドイツやスウェーデンが54%程度、フランスは70%近くになっていまして、色々な算出方法もありますが、数字としては高くないです。高齢化率が高い割に、それでも負担そのものは国際的にはやや低いかなといえます。ただし、重要なのは負担に見合った福祉、つまり税負担がそれなりに高いのに、給付や福祉がそれに見合っているかどうかが議論になっていると思います。


ユージ:30代から50代の働き盛りの世代は、子育てや親の介護と直面するので、より負担が大きいですよね。


塚越さん:そうなんです。現役世代は子供や高齢者を支えるため、圧倒的に負担が多くなります。子育てをしていると教育費の出費も出ちゃいますよね。さらにいうと、子育てだけではなく介護をする「ダブルケア」の方もいます。毎日新聞の調査ですと、全国で少なくともダブルケアの方が29万を超えていて、そのうちの9割が30代〜40代の現役世代です。ダブルケアを理由に、離職を余儀なくされる方もいらっしゃいます。


村田:そんな中で、現役世代の負担減に取り組む政策は、どうなっていますか?


塚越さん:例えば、一定の所得のある高齢者の方は、医療費などの負担を例えば1割から2割に引き上げる、といった議論がされています。そして冒頭にもあったように、今後は株などの「金融所得」も反映させて、全体としては年金などの所得だけではなく、資産が多い高齢者の保険料負担を増やして、現役世代の保険料上昇を抑える方向で制度づくりが進んでいます。また、「子ども・子育て支援金」を社会保険料と合わせて徴収することで、独身や高齢者を含めて、全世代で負担しましょうという制度も来年から始まります。2028年度まで段階的に徴収金額を上げていきますが、年収によって変わりますが月額数百円程度がとられるということですよね。一方で25日にも特集がありましたが、出産や教育・給食などの無償化も進んでいるということですね。


ユージ:各世代がこの負担を公平に感じることはできるのでしょうか?


塚越さん:なかなか難しいですよね。色々なところで、不公平じゃないかという議論もあります。実際、多様な人もいて現役世代と言いましたけど、現役vs高齢者になりがちですが、現役の中にも沢山いますよね。独身の方もいれば、非正規の方もいたり、色々なタイプがいるということで、その中での公平性は課題です。私が重要だと思うのは、「見える化する」ということです。我々もこのまま大丈夫かな?と思いますよね。そんな中でどのくらい払ってもらえれば、このくらいの給付になりますよ、などそういうマップ化する、見える化する、データ化する。これによって我々の負担を和らげていくということ。こういうことをちゃんと見せることによって、わたしたち全体の社会で支えていく構図を見ていく必要があるかなと思います。


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