25.12.04
“こどもNISA”向いているのはどんな家庭?

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
引き続きコメンテーターは、情報社会学がご専門の学習院大学・非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
「“こどもNISA”向いているのはどんな家庭?」
吉田: 政府、与党が少額投資非課税制度「NISA」に関し、18歳未満の未成年が利用できるようにする、「こどもNISA」制度の創設を検討しています。そこで今朝は「こどもNISA」ついて、塚越さんと考えます。
ユージ:塚越さん、まず「こどもNISA」がどんな制度か教えてください。
塚越さん:この数年で一気に普及してきた「NISA」について、改めて説明しますと、NISAは簡単に言えば株や投資信託で得られた利益が、一定金額までは非課税。つまり確定申告の時に課税されなくなる国の制度です。未成年のNISAというのは、2016年から導入された「ジュニアNISA」というものが既にあります。ただ、これは大人、18歳になるまで投資した資金を引き出せなかったり、年間の投資額もいろいろ制約があり、人気もあまり出なかったことから2023年末で事実上廃止となりました。その課題を踏まえて、今回打ち出したのが「こどもNISA」です。ジュニアではなくこどもです。現状は、まだ確定ではなく検討段階という報道になりますが、それによると、18歳未満の未成年も利用できるもので、親が子ども名義で口座を開設して「つみたて投資枠」を使うことを想定しています。年間投資額の上限は60万円で、0歳から利用できて、12歳になるとお金を引き出せるという案も出ています。また最新の報道では、投資額の上限は600万円という案もあるということです。いずれにせよ、子どもにそんなお金はありませんから、親と話し合いながら投資を子どもの頃から親が使って勉強する事になると思います。
ユージ:では「こどもNISA」は、どんな家庭に向いているのでしょうか?
塚越さん:こどもNISAは、主に学校や社会人など、将来に向けた資金の準備という側面があります。子どもが大人になるまで、10年以上かけてコツコツ投資をしようという家庭には相性がいいですよね。子どもの頃は、お年玉をもらうと「お母さん銀行」というのがあったと思います。
ユージ:うちはその銀行が倒産しました(笑)。
塚越さん:「何なんだろう?」って思いましたよね(笑)。
ユージ:「あのお金は何処にいったの?」って思いました(笑)。
塚越さん:「こどもNISA」という事をちゃんと見せるのが大事です。親が既にNISAや資産運用をしているタイプの家庭だとやりやすいと思いました。大事な注意点としては、子どもNISAには元本保証がないのでリスクがあります。元本保証のある「学資保険」とは異なります。そうしたリスクも踏まえた上で、積極的な家庭にはいいと思います。個人的には子どもの「金融教育」という側面、子どもの頃から「あなたの将来のお金をこうして運用している」という事を、中学生くらいから教える事はメリットがあると思います。
ユージ:子どもの金融教育もこれから大事になりますよね。
吉田:では「こどもNISA」に慎重になった方がいいケースはいかがでしょうか?
塚越さん:こちらは「経済的に投資にまわしている余裕はちょっと厳しい」という家庭には向かないです。株価は上昇傾向にあると言っても、元本割れのリスクがあるので、余裕がない中で生活資金まで投資にまわすのは危険です。その場合は「元本保証のある定期預金や貯蓄がいい」という場合もあります。あと、子どもへの説明だったり親が管理せずに放置してしまうと、単に子ども名義の「投資枠」になってしまいます。なので、こちらも子どもへの金融教育とセットが望ましいと思います。
ユージ:塚越さんは「こどもNISA」どう思いますか?
塚越さん:国が全体的に「貯蓄」から「投資へ」という動きを推進している事もありますので「子供もそういう事をやりましょう」という意図があると思います。それとは別で、私も大人になって「もっと子どもの頃から金融に知識がほしかった」と思います。多くの方がそう思っていると思うので、子どもの頃からの教育って大事だと思います。一方で、子どもNISAは、NISAの非課税枠が増えるだけなので、結局、最初から金融リテラシーやある程度余裕のある、言ってしまえば富裕層とそうでない層の間の格差拡大という懸念もあります。もっと言えば、こどもNISAは「子ども向け」ではなく「親の資産運用枠を増やす制度」になってしまう可能性があります。こうした懸念を踏まえるならば、やはり学校などでの金融教育は重要です。実は2022年度からは、高校の家庭科などで株式などの金融教育が始まっていますが、まだ普及している感じはありません。そうした中で家庭に丸投げすると、さらに格差が広がってしまうと思います。何度も言っていますが、元本割れのリスクはありますし、現在も「AIはバブルじゃないか」と言われているので、金融がどうなっていくのか分からない状態なので、そういう意味でも大人も含めて、ちゃんと金融の事を勉強していく事が第一になっていくと思います。そう考えると、今回の話は「こどもNISA」という枠の話になっていますが、これは大人に向けた話だと思います。国民全体で金融の事を知っていって「やる人はやる」「やらない人はやらない」。どっちにしても理解をして知っていくが重要になってくると強く思います。