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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

25.12.10

政府、高校生の扶養控除の縮小を検討か…高市総理は「指示していない」と否定

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の学習院大学・非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


【政府、高校生の扶養控除の縮小を検討か…高市総理は「指示していない」と否定】

吉田:高市総理は今月6日、政府・与党が2026年度税制改正で高校生の子どもを持つ親らの扶養控除を縮小する方向で検討に入ったという報道を否定しました。自身のXに「私が縮減に関する指示を出したことはない。与党税制調査会で本件について決定した事実もない」と記しています。塚越さん、「高校生の子どもを持つ親らの扶養控除」と、これに関する動きについて、詳しく教えてください。


塚越さん:はい。まずですね、現在16歳から18歳の子どもがいる親は、課税額から所得税で38万円、住民税で33万円が控除されます。2024年から児童手当の対象が高校生の年代にも拡大されたということを受けて、控除額に関する見直しの議論というのがあって、所得税の控除額を現在の38万円から25万円、住民税は33万円から12万円に下げる案があるということです。報道によると、この動きは高校無償化の財源確保のためと言われています。このニュースが報じられますと、SNSでは多くの批判がありまして、ご紹介があったように高市総理がXでこれを否定しました。子育て支援に全力で取り組むとも投稿しているので、総理としては批判を否定したということですね。また与党内でも縮小には反対意見がありまして、公明党や国民民主党も縮小に反対姿勢を示しています。確かにこのところ、児童手当の拡充や高校無償化など、子育て世帯の支援は続いていますよね。また控除という仕組みは、仕組み上、高所得者ほど減税額が高くなるので、今回の控除額の縮小というのは、「今が高所得者優遇になってないか?」という問題を受けての議論になります。その点については理解できるものの、子育て支援を強く表明してきたなかで、ここで親の控除額を引き下げるというのは、やはり私もおかしいなと思います。というのも、それなりに高所得であっても、子育てにはお金かかりますし、控除といっても数10万円ということですから、超富裕層を別にすると、多くの家計には重要な政策だと思いますので、このままであるべきかなと私は思いますね。


吉田:負担が増えると言えば、先週は「防衛増税」に関しても、動きがありましたよね?


塚越さん:はい、そうなんです。岸田政権の頃から防衛力強化が盛んに言われていましたが、政府、与党は財源確保のために、所得税を2027年1月に1%増税する方向で調整に入りました。ただし、これにあたっては、東日本大震災の復興財源である「復興特別所得税」、いわゆる「復興税」を同じく1%引き下げることで、単年度としては税負担が変わらないようにする方針です。しかし、一時的に復興税を下げても、いずれまた徴収されるため、所得税も含めれば「増税」になるところです。これについては、2023年度に「税制改正大綱」というのがあって、この時に防衛力強化というのを目的に、法人税やたばこ税、そして所得税を引き上げて、2027年度に1兆円強の財源を確保するということが盛り込まれていました。そのなかで法人税とたばこ税は来年4月に増税が決まっているんですね。所得税は増税開始の決定が先送りされていたということなので、2027年からということになります。つまり、少なくとも来年からは、たばこ税などで増税になり、これが決まれば所得税も2027年から、再来年からですね、「増税」ということになります。また、「復興税」というのはもともと2037年までの時限措置でしたが、政府は延長を検討しているということです。私は「復興税」が、かつてのガソリンの暫定税率みたいに、最初は時限措置だったものが、ずっと長く延長されて50年とか続くことを懸念しています。また「復興税」でありながら復興以外に使われる可能性もあります。さらに言うと、防衛のための増税は期間を定めない恒久的な措置になる見込みということなので、やはり長期的に国民負担は増えると思います。自民党では様々な税制の調査会の会合がありましたが、自民党としては防衛増税のための所得税引き上げには異論なかったそうですが、連立を組む維新ではちょっと賛否が割れているということなので、こういった推移も見なきゃいけないのですが、いずれにしても、もともと決まっていたこともあり、来年からまた税の負担は増えていくと思います。


ユージ:国民の「負担」に関する2つの動き、塚越さんは、どうご覧になっていますか?


塚越さん:そうですね、やはり防衛というテーマは、多くの人が気になっている点であり、ある程度は仕方ないのかなと私も思います。ただ、やはり気になるのは、防衛費がどのように使われているかという点です。急激に増額されていますが、必要だとは思うものの、やみくもに上げていいのか、また、効率的なお金が使われているかをしっかりとチェックすることですよね。人件費や装備品の調達が、どのような優先順位で使われているかということを我々報道もきちんと伝えて、それは国民的な理解を促していく必要があります。なぜならば、適切に知らなければ、政治や政治家が他国との緊張を煽り、防衛費の増額と増税がセットになりやすい傾向があるからです。こういった緊張に関するものは、上げるにしても、どのくらい何が必要なのかということを議論しないといけません。そして、アメリカですよね。アメリカも最近、残念ながら「リスク国家」になっていると言えます。中国もそうですが、様々なリスクのある中で、どういう外交的な関係を築いていくかというところも、我々が考えないといけない点かと思います。

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