25.12.17
政府、税収の地域格差を是正へ…東京都の小池知事は反論

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の学習院大学・非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
「政府、税収の地域格差を是正へ…東京都の小池知事は反論」
吉田:地方の税収が東京都に集中しているとして、政府・与党は、東京都と46道府県の「税収格差」の是正策を検討しています。この是正策について、東京都の小池知事は先週金曜日の定例会見で「不合理な見直し、改悪に断固反対する」と批判しました。塚越さん、まずは東京都と46道府県の「税収格差」について教えてください。
塚越さん:はい。まず総務省によりますと、2023年度の地方税収は計45兆7,000億円あったのですが、そのうち東京都は8兆円と、17.6%を占めています。また、この地方税収を税目別でみますと、土地の固定資産税については東京都が25.1%を占めていて、非常に大きいですね。さらに、2025年度の税収は過去最高になる見込みもあるということです。中でも、法人事業税と法人住民税という法人の2つの税が、他と比べて突出して高くなっていまして、2023年度は東京だけで日本全体の3割を占めているということです。こうした税は地方に支店があれば従業員の数などで分散されるのですが、やはり大企業が多い東京は税収が多いですね。背景としましては、例えば総務省によると、資本金が50億円以上の法人のうち、64.6%が東京に本社を置いている。さらにその中の多くは、他の道府県に事務所を置いていないので、東京に税収が偏るということですね。
ユージ:大きい会社が東京にあるってことですよね。
塚越さん:そう。さらに最近はネット通販なども多く、支店を置かない企業も増えているのも背景にあります。こうしたこともあって、東京都は都道府県で唯一、国から地方に分配される「地方交付税」を与えられていない自治体になっています。要するに、自前でなんとかなっているでしょうと。財政的に潤っているということです。
ユージ:東京都だけがもらえていないのですね。
塚越さん:昨今は私立高校の実質無償化だったり、夏には水道料金の基本料を4カ月無料にすることができていますよね。こうした格差についてはやはり不満も多く、特に千葉、埼玉、神奈川の3県は東京への人口流出を懸念しまして、3県の知事が今年の8月、総務省と財務省に、この一極集中の是正を申し入れました。
吉田:「税収」のこうした状況を踏まえ、政府は、どのような是正策を検討しているのでしょうか?
塚越さん:政府・与党は東京都に入る「法人税」や「固定資産税」の一部を地方に配分する仕組みを検討しています。例えば地方法人税は、税収の一部を譲与税として、自治体間で再配分する仕組みが今もありますが、これをもっと拡充するということです。また、固定資産税はそうした制度がありませんので、新しい仕組みを検討する見通しということです。政府は今後1年をかけて検討して、2027年度の税制改正に向けて進めるということです。
ユージ:こうした政府・与党の動きを受け、東京都の小池知事は反論した、ということなんですね?
塚越さん:そうなんですよね。当然といえば当然ですけれども、小池知事は先週金曜日の定例記者会見で、この仕組みに対し反対の姿勢を示しました。知事によりますと、東京に人や企業が集中するという指摘に対しては、国の2024年の「住民基本台帳人口移動報告」からみると、札幌や仙台、名古屋や大阪、福岡市にも人口が流入していると主張しています。東京だけではないということです。ただし、流入数だけで見ると、東京が圧倒的に多いというところです。次に総務省によると、東京都が財源として使えるお金は1人あたり年間28.1万円のところ、東京以外の46道府県の平均は1人あたり7.8万円と、3.6倍の差があるとしています。これについても小池知事は反論しています。それによると、地方交付税などを含めた財源で計算すると、東京が23.8万円で、全国平均は22.9万円と、ほぼ平均ということです。これに関して、東京都の公式Xでは、1.5兆円の都税が地方交付税として国に「奪われる」という風に、かなり強い言葉を使っていまして、この投稿は800万回以上も閲覧されています。一方で、地方交付税の分配は、地域間の基本的なサービスの水準を保証するためにあるものです。なので、その点を考慮すると主張を鵜呑みにはできないかなと思います。実際、東京都の主張を千葉県の熊谷知事などが反論しています。それらをまとめると、東京のように人が密集していると、大量の輸送ができたり、基本的に行政は効率化します。しかし、山間部地域などの場合はお金が掛かります。その違いもあり、財源はそんな簡単に一緒に計算はできないということです。だから、東京の1人当たりの財源が全国平均レベルといっても、内実はまったく違うということです。東京都の主張もわかりますが、東京が潤っているとも思います。
ユージ:東京都と地方の「税収格差」と、その是正策、塚越さんは、どうご覧になっていますか?
塚越さん:この先を考えると、人口減少しながらも東京に人が集まる一極集中は多分起きるんですよね。私、ずっと東京生まれ東京育ちで、潤ってる財政はありがたいですけれども。でも、インフラ面など、全体で考えた時に、東京都の反論も分かりますけど、集中している部分はあるので、ある程度は分散化する必要はあるのかなと思います。一方で、あとは国がどうしたいか。一極集中か、分散化か。「地方創生2.0」と石破さんも言っていましたけど、本当に進めるのであれば、東京都にも理解を示してもらって進めていくのか。国の舵取りがどちらで行くのか、問われていると思います。