26.01.07
2026年の税制…主な内容と課題は?

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の学習院大学・非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
「2026年の税制…主な内容と課題は?」
吉田:塚越さん、まずは政府が2025年12月、決定した「2026年度税制改正大綱」について、改めて教えてください。
塚越さん:政府は2025年12月26日の閣議で税制改正大綱を決定しまして、1月の通常国会に関連法案を提出することになります。全体としてはやはり減税に関するものが注目されました。まずは年収の壁問題ですね。現在は160万円になっているのですが、これを国民民主党などが求めた178万円に引き上げになります。ただし、単に引き上げても、現在の基準では基礎控除を最大限受けられる人は年収200万円以下となっており、対象となる人が少ないんですね。そこで、2026年と2027年の時限措置として、この対象を年収665万円以下に広げることで、納税者のおよそ8割が壁の引き上げの恩恵を受けることになるということです。特に中間層に恩恵がいく内容になっていまして、大和総研によりますと、単身世帯、または配偶者控除を受けていない共働き世帯ですと、年収600万円の層で減税額は年3万7,000円になると試算しています。ただ、時限的な措置なので、今後どうなるかはわからないところですね。もうひとつは企業向けで、工場などの設備投資に対して、最大で7%の法人税の減税をする制度が導入されます。ほかにも、住宅ローン減税を2030年末まで5年間延長。また中古住宅を購入した人の控除期間も、新築と同じ最大13年に延ばして、減税対象となる借入額も最大で4,500万円に引き上げるということです。また、自動車を購入した際に、自動車の環境性能に応じて最大で価格の3%を課税する環境性能割を2025年度末で廃止することなども盛り込まれています。これは課税の少ないEVなど、環境性能の高い自動車をユーザーに促す法律ですけれども、世界の流れも受けてこれを一旦白紙にするものです。またこれによって国内の自動車の買い替えを促進して、トランプ関税で傷ついた国内の自動車業界を活性化させる意図もあると思います。他にもいろいろとありますが、全体としては減税が目立つ内容だと思います。また、現状はあくまで閣議決定であって、今後は国会で議論があります。全部がひっくり返るようなことは考えづらいですが、細かな修正はあると思います。
吉田:今回の税制改正、塚越さんは、どのようなことに注目しましたか?
塚越さん:先程は減税の話が多くありましたが、同時に増税についても決定がありました。ここも注目しなければなりません。増税で大きいのは防衛増税で、これは2027年から、所得税が1%引き上げになります。すでに2023年度の税制改正大綱で防衛増税は決定しており、今年2026年の4月からは法人税とタバコ税が引き上げられますが、加えて時期が未決定だった所得税が来年2027年から引き上げということです。ただ、所得税の1%分については、現在の東日本大震災の復興特別所得税を1%下げるということなので、実質的な負担は変わりません。ただし、復興税もいずれは徴収されますので、負担が増えることには変わらないと思います。また月曜日に神場さんもお話されてましたけれども、直接の制度ではないですけれども、物価が上がることで実質的に負担が増えるインフレ税、つまり事実上の増税が起きている側面もあると思います。
ユージ:今回の税制改正、塚越さんは、どのようにご覧になっていますか?
塚越さん:やっぱり財源っていうところが重要になってくるということで、高市政権の「責任ある積極財政」で重要なのがバランスですよね。積極すぎると、いろいろなところで長期金利が上がってしまったり、舵取りが難しい部分もあると思いますけれども。減収でいうと、2025年の年末のガソリン減税(暫定税率)の廃止で、年間およそ1.5兆円の減収になります。さらに、年収の壁の引き上げで6,500億円の減収。他にも、設備投資の促進税制で4,000億円、環境性能割で1,900億円程度の減収になるということで、いろいろなところで収入が少なくなります。一方で、税収自体は2025年度も過去最高額になると言われていますし、年収の壁を引き上げて減税をしても、その分消費が促進されて景気が良くなれば、その分良くなるかなというところもあります。また政府としても、超富裕層に対する課税の見直しなど、財源の捻出については実は色々と工夫をしているんですね。こうしたバランスをいかに取れるかということが議論されています。そして、個人的に一番重要だと思っているのは実質賃金が上げられるかどうかなんです。どんなに賃金が上がっても、物価の上昇を計算した上で、実質的な賃金が上がってるかどうか。この実質賃金がずっと下がってしまっていることが問題になっていますよね。これについては、元日から下請法が改正されて取適法(取引適正化法)になりましたが、中小企業が適正な価格転嫁をちゃんと進められるようにしたり、金融課税を進めて現場で働く人に利益を還元したりと、やり方は色々あると思います。世界情勢など不安定な要素もありますが、2026年は実質賃金がちゃんと上がるかどうか、ここに注目していくことが重要と私は強く思います。