26.01.12
地震火災対策の切り札『感震ブレーカー』とは?

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんにお話を伺います。
神庭さんに取り上げていただく話題はこちら!
『地震火災対策の切り札「感震ブレーカー」とは?』
吉田:先日、鳥取・島根でも大きな地震がありましたが、30年以内に70%の確率で起きるといわれている首都直下地震。政府が昨年末に公表した被害想定によると、およそ1万8000人の死者の3分の2を火災による死者が占めると予測されています。そこで今朝は、地震火災を防ぐ“切り札”と目されている『感震ブレーカー』について、神庭さんに解説してもらいます。まずは、そもそも、感震ブレーカーとはどんなものなのか教えてください。
神庭さん:地震の強い揺れを感知すると自動的に電気を止めるブレーカーのことですね。2011年の東日本大震災の本震によって起きた火災のうち、約半数を電気関係が占めました。特に怖いのが『通電火災』です。通電火災というのは、一度停電したあとに、電気が通った瞬間に時間差で火災が起きることです。たとえば、地震で電気ストーブが倒れて、そのまま停電したとします、復旧した際に紙や衣類などの燃えやすいものに着火して、火事になってしまうケースです。ほかにも通電した瞬間にコードがショートしてしまう可能性もあります。こうした通電火災を防ぐために、感震ブレーカーが強い味方になります。
吉田:その『感震ブレーカー』のお値段は大体いくらぐらいなんでしょうか?
神庭さん:消防庁のサイトによりますと、分電盤にもともと内蔵されているタイプだと、標準的なもので5万円〜8万円。後付けタイプだと2万円ほどで電気工事が必要になります。バネや重りの落下でブレーカーを落とす簡易タイプだと電気工事ナシで設置できて、値段も3,000円〜4,000円程度とかなりお手軽です。そのほか、コンセントに内蔵されたセンサーが揺れを検知し、電気を遮断するコンセントタイプの感震ブレーカーもあります。こちらは5,000円〜2万円程度。電気工事が必要なものと、コンセントに差し込むだけのものがあるということです。
ユージ:“防災の切り札”として期待されている『感震ブレーカー』、どれくらい普及しているんでしょうか?
神庭さん:地震の際に延焼の恐れがあるエリアを『危険密集地域』というんですけれども、内閣府の調査によると、感震ブレーカー普及率は危険密集地域で3割、それ以外の地域だと2割ほどにとどまります。政府は2015年度からの10年間で普及率25%を目指していたので、危険密集地域に関してはなんとか達成したことになるんですが、まだまだ道半ばという状況です。
ユージ:なぜなかなか普及しないのでしょう?
神庭さん:まず、『感震ブレーカー』が何なのかを知らない人が多いということですよね。先ほどの内閣府の調査だと、防災意識が比較的高いであろう危険密集地域の方であっても3割以上の人が知らないと…。それ以外の地域だと56.6%が知らない。感震ブレーカーを設置しようと思わない理由については、「よく知らないから」とか「必要性を感じないから」、「周囲の様子を見てから考えたい」、「価格が高いから」、「設置が面倒だから」、「入手方法がわからないから」といった答えが多くを占めています。
吉田:まだまだ認知度が低いんですね。
神庭さん:知らないからこそ必要だと思えないし、入手方法や設置方法もわからない。そして、ちょっと割高にも感じてしまうということなのかなと思います。実際には先ほど言ったように簡易型なら3,000円〜4,000円で購入できますが、そういう情報が知られていないんですよね。感震ブレーカー自体を知っていても、実際に地震が起きた時のことを考えると不安を感じる方もいると思います。災害時はただでさえ心細いです。ブレーカーが落ちて室内が暗いままだと避難に支障をきたすのではないか?とか、テレビやラジオから情報が取れなくなるんじゃないか?といった点に引っかかりを覚える方もいるんですね。あとは、人工呼吸器などの医療機器を使っている方であれば、電源が取れなくなってしまうのはすごい恐怖だと思います。感震ブレーカーの普及啓発と同時に、防災ランタンや予備のバッテリーの準備なども進めていく必要があるのかなと思います。
ユージ:確かにそうですよね。ほかにはどんな対策が必要?
神庭さん:「周囲の様子を見てから考えたい」というアンケート結果からは、自分の家だけ対策しても周りの家も感震ブレーカーにしなきゃ意味ないんじゃないの?という疑問がうかがえますよね。ただ皆がそれを言い始めるといつまで経っても普及が進まないですよね。政府の試算では、首都直下地震で想定される死者約1万8000人のうち、1万2000人を火災による死者が占めるとされています。建物の倒壊よりも火災による死者の方がずっと多いです。仮に感震ブレーカーの普及率が現状の20%から100%に上昇した場合、火災による死者数は3,400人に抑えられ、焼失棟数もおよそ26万8000棟から7万4000棟まで7割も減少するといわれています。政府・自治体としては、こうした劇的な効果を粘り強く伝えていくしかないのかなと思います。
ユージ:神庭さんご自身は何が課題だと思いますか?
神庭さん:そうは言っても「お金ないし、高いし、無理だよ…」という方も多いと思うんですよね。現状でも感震ブレーカーを配布したり、補助金を出したりしている自治体も結構多いですが、普及率をさらに上げるには、もっともっと支援を充実させる必要があるのかなと思います。特に『木密』と呼ばれる“木造住宅密集地域”には、思い切った対策として、全世帯にタダで配るくらいやってもいいのかなと思いますし、それくらい思い切ったことをやらないと、ここから劇的に普及率を上げていくのは難しいんじゃないかなという気もするんですよね。
ユージ:正直言うと、この『感震ブレーカー』というのを僕は知りませんでした。これを機に注目していこうと思います。