26.01.14
4月から始まる『子ども・子育て支援金』について

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の学習院大学・非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
【4月から始まる『子ども・子育て支援金』…実質負担ゼロの意味は?】
吉田:「異次元の少子化対策」とされた子育て支援に使うため、「子ども・子育て支援金制度」が4月から始まります。医療保険料と合わせてお金を徴収する仕組みですが、政府は「実質負担ゼロ」と説明しています。塚越さん、改めてこの「子ども・子育て支援金制度」について教えてください。
塚越さん:この数年で聞かれることが多くなりましたこの支援金は、例えば児童手当の所得制限の撤廃や、支給期間の高校生年代までの延長に使われます。他にも、妊産婦さんへの10万円相当の支給や、親が働いていなくても保育所に通える「こども誰でも通園制度」など、子育てに関する政策に使われますが、気になるのは徴収金額ですよね。こども家庭庁が2025年末に試算を示しており、年収によって異なりますが、2026年度は健保組合の会社員の場合、例えば年収600万円だと平均して月額およそ575円ということで、この金額が目安になるかと思います。また、自営業者などが入る国民健康保険だと1世帯で月額およそ300円、75歳以上の後期高齢者医療だと1人月額およそ200円です。これは毎月徴収されるので、1年にすると数千円になります。全体では1年間で6,000億円程度を集めることになります。徴収方法としては、公的医療保険に上乗せして徴収されるということで、会社員の方は5月の給料から、それ以外の人も6月くらいから徴収が始まります。
吉田:医療保険料と合わせて徴収するけれども、政府が「実質負担ゼロ」と説明しているのですよね?
塚越さん:そうなんですね。「実質負担ゼロ」という言葉はややこしいのですが、政府によると、要するに社会保障の歳出改革を進めるので、その削減された効果の範囲内で集めるから「実質負担ゼロ」になると言っていますが、正直よくわからないですよね。実際、2025年末にこども家庭庁で開かれた専門家会議でも、わかりにくいという声が結構あったということです。そもそも、支援金が徴収されるのは確実に決まっているのに、私たちの社会保険料が何円減るのか、その対象もまだ細かく示されていません。今後ある程度示されたとしても、4月から徴収が始まる段階でこれがまかり通るなら、なんだって言えてしまうかと思います。政府のこうした説明が、信頼を損ねるので結構まずいなと私は思います。なぜ、このような分かりにくい説明になるのかというと、この支援金の仕組みは2023年、当時の岸田政権で決定しました。当時は、2030年代に入るまでが少子化を反転させる「ラストチャンス」として、大胆な財政支援を決定したんですね。当時の岸田総理は増税は否定しており、国債発行も限界があるということで、高齢者を含めて幅広く徴収できる社会保険料と合わせて取る、というスキームを作ったわけです。けれども、裏を返せば当時から反発が予想できたから、あえて分かりづらいスキームにしたのかなとも思います。つい数年前の話ですけれども、この頃から増税に対する忌避感がどんどん高まって、2025年は減税を求める声が、本当に大きくなったかなというところがあります。個人的には、本当に大切なことだったら正面切って、説明すべきだったかなと思いますね。
ユージ:「子ども・子育て支援金制度」について2025年にも塚越さんに見解を伺ったんですけども、改めて、この制度をどうご覧になっていますか?
塚越さん:この話は去年、2025年6月にも扱ったのですが、そこでもやはり政府の説明の仕方の問題について指摘してきました。社会保険料に合わせたこのスキームは、ネットでは「独身税」とも批判があがっています。子どものいない人にとっては単純に取られるだけだから、というのが理由ですが、怒っているのは独身だけでなく、子育て世帯からも評判があまり良くないですね。それはやっぱり、「結局、負担が増えるではないか」と。「だったら減税だったりとか、何もしないでください」といったことが言われていますし、あとは、税金を徴収して還元するというのはあまり効率的ではないというところもありますし、政府は少なくとも20年以上、こうした支援をずっと続けているわけですが、一向に状況は改善していませんよね。いろいろな問題はありますが、そこが上手くいっていないのに「どうするの?」という話が1つあります。ですから、子育てだけではなくて、そもそも結婚する人が少なくなっているので「そこの支援も大事だ」という議論もあります。個人的に思うのは、よく「少子化社会」と言われますが、いや、もう「少子社会」と認めませんかと。子どもを増やすことももちろん大事ですが、もう「人が少なくても回る社会設計」を考える時期に来ているのではないかな、と個人的には思います。いろいろな考えがあると思いますけれども、短期的に子どもは増えませんし、では「移民はどうするのか」といっても、移民にも忌避感があるというこの国なので、やはり「省エネならぬ『省人化』で回る社会」のために、ITやロボットを活用しましょうといった話もありますが、そうした「国の人口規模が減ること」を前提にした社会設計を考える段階に来ていると思います。どこにお金を投入するのかといった設計を、もう少し議論していく。厳しい現実ではありますが、そこは議論として重要だと個人的には思います。