26.01.15
世界初!海底から採掘する国産レアアース始動!実用化への道筋は?

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
情報社会学がご専門の学習院大学 非常勤講師の塚越健司さんにお話を伺います。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら!
『世界初!海底から採掘する国産レアアース始動!実用化への道筋は?』
吉田:電気自動車や医療機器などの製造に欠かせない『レアアース』。世界のレアアースの生産量の多くを中国が占める中、日本が国産のレアアースの実用化に向けて世界初の試みを進めています。
ユージ:塚越さん、改めて『レアアース』について教えてください。身近なところにもあるってよく聞きますよね?
塚越さん:最近よく聞くけど、『レアアース』ってなんだろう?ってことですよね。『レアアース』というのは、そもそも、鉱物に含まれている金属のことで、特に重要な17種類の元素をまとめた総称なんですね。そのレアアースは、スマホやEV、ドローンや半導体製造装置といった先端技術に使われているほか、防衛分野ですと戦闘機、医療分野ではMRIの検査装置や、あるいはLED照明なども含め、幅広く使われています。中国の世界シェアが高いわけですが、報道があった通り、中国政府は先日、軍事にも使えるデュアルユース(軍民両用品)用のレアアースの輸出については管理を強化すると発表しています。民間用のものがどうなるかはまだわかりませんが、先行きが不透明ということで不安感が出ています。そんな中で、先日のG7の会合では、レアアースの中国依存を低減するために、資源国と供給網の多様化で連携する動きが出ています。つまり、レアアースは経済安全保障の問題なので、中国の依存度を下げて、供給の多様化や国産化も視野に入れるということですね。
ユージ:そこで、日本の『国産レアアース』が注目されているんですね?
塚越さん:そうなんです。実は東京大学や早稲田大学の研究チームが2010年代に入っていろいろ調査した結果、小笠原諸島の南東にある『南鳥島沖』の海底にレアアースを多く含んだ泥があることを突き止めたんですね。しかも、これが世界のレアアース需要を数十年から数百年を賄う規模のものというすごいことなんですよね。
ユージ:そこに“ある”ということはわかったんですね?
塚越さん:そうなんです。ということで、今週月曜日に、国立の研究機関である『海洋研究開発機構(JAMSTEC)』の地球深部探査船「ちきゅう」が、内閣府のプログラムの一環で出発しました。日本の排他的経済水域の水深およそ6,000メートルからレアアースの泥を回収するということで、南鳥島沖ではすでに6種類以上のレアアースを高濃度で含む泥が見つかっていて、今回は実証実験に向けて装置の動作確認などをするということです。
吉田:今回の採掘が成功すると、『国産レアアース』はどうなっていくんでしょうか?
塚越さん:今回の実験が成功すれば、来年の2027年の2月以降、この海域で1日あたり350トンの採取ができるかどうかといった試験に進む予定です。また、レアアースを泥から分離して精錬するための工程やコスト計算も進めます。全体としては、2030年代の商業化を目指して施設の整備なども進めるということですね。
ユージ:これはね、世界初のチャレンジ、6,000メートルの深さ、さらにプラスアルファを含め、2030年を目安にってあと4年ですよね?あっという間じゃないですか?
塚越さん:4年後と考えるとかなり早いなと思いますけど、実際にどこまでできるのかと思うのと、商業化は2030年代ということなので、どれくらい実現できるのかなってこともあるし、あとは、目下の日中のレアアース問題はすぐに解消できないので、それは覚えておくべきかなと思いますね。
ユージ:塚越さんは、『国産レアアース』についてどうお考えですか?
塚越さん:実は世界のレアアース埋蔵量だけでいえば、中国は半分程度なんですね。ですが、レアアースを鉱物から取り出すために精錬すると、放射性物質を含めた有害な元素が出てきてしまうんですね。なので、精錬後の廃棄物の処理が必要で、これに大きな環境負荷がかかります。精錬そのものは中国以外でもできるんですが、環境規制が高い欧米はやりたがらず、結局、中国が続けた結果、精錬量でいうと中国の世界シェアは9割となっています。だから、中国が強いということなんですよね。見方によっては、これまでは環境負荷を中国に頼ってきてしまったという部分もあるかと思います。だからといって、外交の武器に使っていいかどうかというのはありますけれども…。その点でいうと、今回発見されたレアアースの泥には、そうした放射性物質がかなり少ないということで、これは日本が世界へ輸出も視野に入れられると思います。そもそも、レアアースは日本の産業にとって非常に重要ですし、国産化は望ましいです。中国が外交交渉に使うということもあるので、それがなくなるのも日本としては手段が増えますよね。ただしですね、6,000メートル下から取ってくることだったり、生態系の影響もあるし、やっぱり、コストもかかるわけじゃないですか?だから、そのコストを下げて、中国との競争力があるものを作れるのかというところが焦点になるかと思います。あと個人的には、小笠原諸島は日本の南東にあって、尖閣諸島などと違って他国と揉めにくい場所かなと思うんですよね。なので、日本が集中して作業できるところにありますので、いずれにせよ、明るいニュースなので頑張ってほしいですよね!
ユージ:そうですよね。うまくいってほしいと思います!