26.02.04
およそ40年ぶりの労働基準法大改正。働き方、どう変わる?

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
情報社会学がご専門の学習院大学 非常勤講師の塚越健司さんにお話を伺います。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら!
『およそ40年ぶりの労働基準法大改正…「副業・兼業者の労働時間ルールの見直し」と「法定労働時間の特例措置の廃止」』
吉田:およそ40年ぶりとなる労働基準法の改正に向けて議論が進んでいます。その改正の中から、『副業・兼業者の労働時間ルールの見直し』と『法定労働時間の特例措置の廃止』について、塚越さんに解説してもらいます。まずは『副業・兼業者の労働時間ルールの見直し』について。こちらは、どのような見直しなのでしょうか?
塚越さん:最近は副業とか兼業をする人が増えているということをよく聞きますよね。ただ、労働時間が増えると、時間外労働として、通常の25%の割増賃金が発生します。現在の労働基準法では、働く場所が違っても労働時間は規定の適用となります。どういうことかと簡単に言うと、本業と副業の労働時間は合算して、1日8時間・週40時間を超えると割増賃金が発生します。なので、企業としては本業であれ副業であれ、2つの労働時間を企業がそれぞれチェックして、いろいろ話し合って割増賃金を出さなければいけません。例えば、Aさんが本業で6時間、副業先で4時間働いた場合、8時間を超えた2時間分が時間外労働なので、割増賃金を払わなければなりません。これをどうする?って話なんですよね。この細かい調整が企業間で必要で、手続きが大変でした。こうした課題もあるので、副業を禁止にしている企業もあったわけなんですよね。もっと言うと、副業が解禁されないならと、労働者が会社に内緒で副業をしてトラブルになるという問題もありました。そこで今回の見直しでは、両方の労働時間を通算するルールを適用しない方向で検討されています。簡単に言うと、今の制度だと企業の負担が多いので、時間外労働のカウントはそれぞれの企業ごとで行いましょうということです。ただし、労働者の健康管理は重要なので、労働者の健康を守るために、副業を含めた総労働時間の管理は続ける方針です。この改正については、労働者が働きやすくなって利益になるという見方もありますが、一方で、割増賃金が出にくくなるという側面もあります。そうなると経営側としては、割増賃金を出さずに安く働かせられる、という見方もできてしまいます。なので、法律だけでなく、現場も副業を前提に安全に働ける仕組みをつくる必要があるということで、副業ができる上限を設定したり、本業・副業のそれぞれの勤務時間を報告してもらって、それを前提として企業側の健康管理体制が求められるかなと思います。
吉田:続いて、『法定労働時間の特例措置の廃止』。こちらは、どういった内容なのでしょうか?
塚越さん:こちらは、基本的に週40時間を超えると時間外労働になるのですが、従業員10人未満の一部の商業やサービス業、小売や飲食、理容・美容、旅館業などについては、週44時間までが法定内労働になるという特例がありました。ただ、実際には、対象企業の8割以上が通常の40時間で運用しているので、今回の改正でこの特例を廃止して、週40時間で統一しようということですね。これも一見すると良いようにも見えますが、従業員10人未満の現場は、なかなか経営的に大変なところもあり、課題もあります。例えば、従業員5名の小売業でこのルールが適用されると、年間で約60万円〜120万円の追加コストがかかるといった試算もあって、人件費がかさんじゃうわけですよね。また、小売や飲食などは、ただでさえ人材不足と言われている業界です。残業させられないなら人を増やさなければいけない。でも、賃金を上げないと人が集まらないので、どうやってもコストが増えちゃうわけです。そうすると、例えば、経営者の方が過度に働かざるを得ない可能性もあって、それはそれで問題ですよね。なので、社会全体として長時間労働は許さないという環境をつくるのは良いのですが、現場が疲弊しちゃうと元も子もないので、シフト設計の見直しとかいろいろな対策が必要だと思います。
ユージ:『副業・兼業者の労働時間ルールの見直し』と『法定労働時間の特例措置の廃止』。塚越さんは、どうご覧になっていますか?
塚越さん:改革自体は良いことだと思うんですけど、やっぱり、働く方の健康管理が大事です。例えば、副業をしすぎて労働者の過労死が起きてしまった場合、どちらの企業に責任を問えるのか?といった、細かい制度づくりも必要だと思います。実は、過労死など労災認定が増えているということで社会的に問題になっています。今回の話は確定ではなくて、これから詳細を詰めていくところもあります。なので、今回の話を聞いてみると、いいかな?と思えるところもあれば、副作用も感じられた方もいらっしゃると思います。バランス調整がかなり難しいところなので、本格的なところまで法律をつくるまでには綿密な調整が必要だと思います。