26.02.05
およそ40年ぶりの労働基準法大改正。働き方、どう変わる?

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
情報社会学がご専門の学習院大学 非常勤講師の塚越健司さんにお話を伺います。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら!
『およそ40年ぶりの労働基準法大改正…企業はどうする?』
吉田:労働基準法の改正に向けて議論が進んでいます。番組では月曜日から『勤務間インターバル制度』『つながらない権利』『副業・兼業者の労働時間の見直し』『法定労働時間の特例措置の廃止』を取り上げてきました。今朝は、“企業の対応”について塚越さんに解説してもらいます。昨日は「企業の調整や準備が必要」とおっしゃっていましたね。
塚越さん:そうですね。今週は月・火・水と細かくお話してきましたが、全体として今回の見直しは、現状の社会の変化を踏まえたもので、単なる労務管理ルールの変更という枠には収まらないと思います。例えば、副業や兼業、テレワークに業務委託、そして、フリーランスといった様々な働き方が一般化しています。そんな中で、どうやって人材を雇って、管理して、責任を負うかということで企業には大きな影響があります。こうした影響は、大きく分けて3つに言えるかなと思います。1つ目は、“就業規則や契約の見直し”です。今回の見直しでは、番組でお話してきた、連続勤務の上限やインターバル時間の設定、あとは、副業や兼業に関する扱いが変わります。なので、企業も就業規則や雇用契約書に詳しく記載する必要がありますし、また、『みなし残業』や『裁量労働』の運用なども、改正した後の基準に沿うように再設計が必要になります。そして、2つ目は、勤怠やシフト、つまり、“業務フローの見直し”です。今まで何となく見てきた勤務時間の実態を、PCのログを確認したり、会社に入る時にICカードで認証することで、連勤や残業の偏り、インターバルを適正においているかなどを“見える化”する必要があるということです。また、シフトの組み方や人員配置も、AIなどいろいろなツールを使って、法定ラインを超えなくても回るように作り変える必要があります。ただ、実際は難しいところがありますよね。社員ひとりひとりの個性の把握は、どうしてもAIにはわからないところもありますし、勤怠管理も徹底すればするほど『監視社会』のように感じられてしまうと仕事の士気にも関わります。コロナ禍の在宅ワークでも議論になりましたけれども社員から信頼される設計も必要です。3つ目は、“従業員への説明や教育”です。残業申請や副業申告、在宅時の労働時間の管理方法など、明文化するだけでなく、従業員にちゃんと説明して、管理職にもルールを徹底してもらう必要があります。あとは、労働者の代表の選出や労使協定など、なんとなくでやってきた企業もあるかと思いますが、実態を伴った体制をつくる必要があります。簡単にいえば、コロナ禍で出来てきたルールを、ここにきて一段ブーストをかけていく必要があるということですね。
ユージ:対応する企業も大変ですね…。
塚越さん:そうなんですよね、「実際に…」というところが本当にね…。理想と現実がありますから。もちろん、私も情報社会学をやっていますから、「DXだ!」とか「生成AIを導入しましょう!」「生成AIと相談して、業務効率を改善しましょう!」とかをお話しするんですよね。なんですけれども、とはいえ、生成AIの勉強するにも知識が必要になったりしますし、どこまで従業員に広げて教育するのか?など、お金も時間もかかるということで、現実的に難しいかなと思いますし、人材に関しても、大企業はある程度人員を割けますが中小企業はさらに大変ですよね。なので、『生存戦略』が求められると思います。まずは、中小企業でいうと、今年の1月に、『下請法』から名前も変わって施行された『取適法』というのがあります。それを武器にして、新しい法律で、例えば、コストが増える場合は、それを含めて価格転嫁できるように大企業と交渉する必要がありますし、人材不足なので、テレワークや副業を受け入れるなど、柔軟な働き方ができるような対応が必要になるかなと思います。ただ、これもやはり難しい点もあるかなと思います。ただしですね、厳しいですけれども、これができないと、これからの生き残りが厳しくなるというのもあるので、時間的にもまだまだ多少余裕があると言われていますし、いつ改正になるのか?というところもありますので、時間があるうちに、対応していく、準備しておく、頭に入れておくことが必要ですね。
吉田:議論中の労働基準法大改正で、我々の生活はどう変わるのでしょうか?
塚越さん:影響を大きく受ける人もいて、働き方が変わって、人によっては手取りが減っちゃう場合もありますけれども、中長期的な健康管理とか長期の働き方を考えたときに重要な変化かなと思います。もちろん、制度の中には良いところ悪いところはまだまだあります。あとは、選挙期間ということもありますし、短期的なことでお金ということももちろん大事ですけれども、中長期的な視点で労働を見ていくことも大事だと思いますので、そのあたりも含めて考えていくことも必要かなと思います。