network
リポビタンD TREND NET

今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

26.02.10

退職代行モームリの摘発から考える「退職」の最新事情

null

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターはダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんです。
神庭さんに取り上げていただく話題はこちら!


【退職代行モームリの摘発から考える「退職」の最新事情】

吉田:警視庁は先週、弁護士法違反容疑で「退職代行モームリ」の運営会社の代表ら2人を逮捕しました。弁護士資格がないにもかかわらず、報酬を得る目的で退職交渉に関する法律事務を弁護士に紹介した疑いが持たれています。今朝はこのモームリの事件を入口に「退職」の最新事情を考えます。


ユージ:以前から、退職代行はかなり話題にはなっていましたが、今回のモームリの事件には驚きましたね。


神庭さん:逮捕された社長と妻は否認していますが、非弁行為があったのなら問題だと思います。一方で退職代行というビジネスに根強いニーズがあるのも確かです。2024年のマイナビの調査によれば、転職者のうち退職代行を利用した人は16.6%。「引き留められたから」とか「退職を言い出せる環境にない」といった理由が上位を占めました。また4社に1社が「退職代行を利用して退職した人がいた」と回答しています。業種別で見ると「金融・保険・コンサルティング」が31.4%で最も多く、以下「IT・通信・インターネット」や「メーカー」が続きます。


吉田:実はすでに結構、浸透しているのですね。


神庭さん:理屈のうえでは、別に退職代行なんて使わなくても退職届を個人で出しさえすればすぐに辞められるわけですが、実際にはメンタルが限界だったり、想像を超えるブラック企業だったりすると、それすらもできないケースがあるのかなと思います。だとしたら、法的にクリーンな形でどうやったら存在できるのか、業界として一度立ち止まって考え直す必要があるのかなと思います。


吉田:この退職について、神庭さんが気になっているニュースがあるのですよね。


神庭さん:少し前に「あけおめ退職」が続出しているというニュースが話題になっていたのですよ。年明けに出社して「あけましておめでとう」と挨拶しようと思ったら、同僚や先輩、後輩が辞めていた……みたいなちょっと悲しい話です。マイナビの2025年末の調査では、正社員の5人に1人以上が「あけおめ退職」を経験しており、20代では約4割と特に割合が高かったそうです。正社員の約3人に1人が年末年始の休み中に「会社を辞めたい」と思ったことがあるそうです。久々に家族に会って「今のままでいいのかな」と感じたり、くたびれ果てて寝ていたら親に激務を心配されたり、キッカケは色々です。学生時代の友人に会って、触発されるというパターンもあるということなんですね。


ユージ:そう考えると結構前向きな決断なのかなとも思いますよね。


神庭さん:去られる側からしたらちょっと寂しいですが、去る側からしたら心機一転、前向きな決断とも言えるかなとも思います。いやらしい話、冬のボーナスをキッチリもらって、有休を全部消化して、4月の新年度から新しい職場で働きたいと考えたら、「あけおめ退職」は意外といいタイミングなのかもしれません。ただ、人手不足に苦しむ会社側からすると、なかなか「良かったね」とも言っていられなくて、帝国データバンクによると、2025年に判明した人手不足倒産427件のうち、従業員、経営幹部らの退職が引き金になった「従業員退職型」の倒産は124件に達しました。前年から34件も増えているんです。


ユージ:これはちょっとビックリな数字ですね。企業側は大変ですね。


神庭さん:「従業員退職型」の倒産が最も多かったのが、建設業の37件。次いで、老人福祉施設やIT産業、美容室などを含むサービス業が29件だったということです。そんな中、会社側の取り組みで面白いなと思ったのが、ネット広告会社「ダッシュボード」がやっている「おせち補助制度」です。AERA DIGITALによると、社員が好きなおせちを1人3万円以内で経費精算できる制度で、社員の7割が「会社について家族に自慢できた」と回答したということで、結果的に、「あけおめ退職」の防止にもつながっているようですね。


吉田:最近は、「リベンジ退職」というものも増えているそうですが、「リベンジ退職」というのは何ですか。


神庭さん:職場で嫌な目に遭って、辞める時に復讐を果たそうとするのが「リベンジ退職」です。わざと引き継ぎをしない。SNSや転職サイトに罵詈雑言を書く。これくらいならまだ可愛いものですが、業務に必要なデータを削除するとか、社外に持ち出すとかまでエスカレートすると犯罪性を帯びてきますね。辞めた会社を事実に基づいて論評すること自体は表現の自由ですが、うっかり企業秘密を漏らしたり、不確かな情報が混ざっていたりすると訴訟沙汰など深刻なトラブルになる可能性もあります。めぐりめぐって転職先の企業に迷惑をかけたり、自分への悪評になって跳ね返ってくるリスクもありますので、一時の怒りにかられての「リベンジ退職」は私はあまりオススメしません。もちろん、セクハラやパワハラ、残業代の未払いなどブラック企業に対して異議申し立てをすること自体はいいのですけれども、労働審判や裁判といった正規の手段で正面から戦うべきではないかなと思います。


ユージ:この一連の退職問題色々あると思いますが、神庭さんはどう見ていますか。


神庭さん:退職自体は決してマイナスなものではないですよね。きれいごとかもしれないですが、社員は次のキャリアを目指し、会社は新たな巣立ちを応援するという「最高の退職」を目指せると一番いいんじゃないかなと思います。「いつでも帰っておいで」と言えるように、退職社員をネットワーク化したアルムナイ制度を整えておくことも大事なんじゃないかなと思います。

  • X
  • Facebook
  • LINE
Top