26.02.16
国論を二分する政策 高市総理の肝入り“国家情報戦略”の狙いと課題

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターはダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんです。
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【国論を二分する政策 高市総理の肝入り“国家情報戦略”の狙いと課題】
吉田:今週いよいよ、第2次高市内閣が発足する見通しですが、そうしたなか先週、政府がインテリジェンス機能を強化する為の「国家情報戦略」を年内にも策定する方向で調整していると、共同通信などが報じました。高市総理が衆院選で訴えた「国論を二分する政策」の1つとも言われています。そこで今朝は国家情報戦略の狙いと課題について、神庭さんに解説してもらいます。まずは、そもそもインテリジェンスとは?というところから教えて下さい。
神庭さん:インテリジェンスとは情報収集、分析活動のことです。これまでは「国家安全保障戦略」の一環としてインテリジェンスについて取り扱ってきましたが、そこから切り出して初めてインテリジェンスだけで国家戦略を立てて重点的に取り組もうというのが今回の動きです。朝日新聞によれば、高市政権は2月18日召集の特別国会にインテリジェンス政策の司令塔となる「国家情報局」創設に必要な法案を提出する方針です。
ユージ:これの狙いは何でしょうか?
神庭さん:中国やロシア、北朝鮮も含め、周辺の安全保障環境が悪化しています。一方で日本の情報活動や、海外の諜報活動を防ぐカウンターインテリジェンスは貧弱で、日本は「スパイ天国」とも言われています。情報収集や司令塔機能を強化することで、そこに対抗していこうという狙いがあると思います。
吉田:スパイ天国。ちょっと怖いですね。どんな事件が起きているのでしょうか?
神庭さん:FNNによると、ロシアのスパイとみられる男が日本の工作機械メーカーの元社員に金を渡し、営業秘密を不正入手した疑いで先月、書類送検されています。2023年には、産業技術総合研究所の中国籍の研究者がデータを中国に漏洩したとして逮捕される事件も起きています。スパイ云々は不明ですが、昨年11月、原子力規制庁の職員が中国で業務用のスマホを紛失するという出来事もありました。読売新聞によれば、スマホには機密性が高い核セキュリティの担当者を含む職員の名前・連絡先が登録されていて、上海の空港での保安検査の際に紛失したとみられています。
ユージ:国家情報戦略を策定して、具体的に何をやるのでしょうか?
神庭さん:国家情報戦略に何が盛り込まれるのかはまだ分からないですが、ヒントになる情報はあります。昨年10月に取り交わされた、自民と維新の連立合意書では、インテリジェンス政策に関してかなりの分量が割かれています。先ほど話した国家情報局の設置の他、2027度末までに対外情報庁(仮称)を創設することも謳われています。国内でのインテリジェンス活動に留まらず、アメリカのCIAやイギリスのMI6、イスラエルのモサドのように海外でも情報収集を行うことを想定しているようです。合意書にはさらに、27年度末までに情報要員の養成機関をつくる「スパイ防止法」を速やかに成立させるといったことも書かれています。これから策定される国家情報戦略にも、この連立合意書の方針が反映されていくことになるのではないかと思います。
ユージ:CIAやMI6とか聞くと「そんなこと可能なの?」と思いますが、課題とかはあるのでしょうか?
神庭さん:1つ目は、組織と情報をいかに整理・統合するか。日本のインテリジェンス機関は内閣情報調査室、警察庁、防衛省、外務省、公安調査庁など複数の省庁にまたがり、縦割りになっています。ただでさえ組織が乱立気味なところに、縦割りの縦がもう1本増えただけ、みたいなことは避けないといけないです。各組織がそれぞれバラバラに人員を育成し、重複する仕事をするのは無駄です。せっかく国家情報局をつくるなら、そういった無駄を全部無くして、役割分担を明確化して欲しいと思います。2つ目の課題は「情報の精度」です。
ユージ:それはどういうことでしょうか?
神庭さん:アメリカは2003年「大量破壊兵器をつくろうとしている」として、イラク戦争に突き進みました。ところが根拠となったCIAの情報は偽情報で大量破壊兵器は見つからなかったです。CIAですら間違えるってことです。誤った情報は国を誤らせます。情報源を守る必要があるのは当然ですが、情報の信頼性を適切に評価する仕組みや、10年、20年後に検証できるような情報公開のあり方も考えておく必要があります。そこが完全なブラックボックスだと、間違った決定をしても誰も検証できないです。仮に情報機関が正しくても、政治家がボンクラだったら、やはり判断を間違える可能性があります。インテリジェンスに対する政治家のリテラシーも引き上げていかないとまずいです。
吉田:他にはどんな課題がありますか?
神庭さん:それは「人権の保護」です。スパイ対策で通信傍受、ネットの傍受などを無制限に広げていった場合、表現の自由や通信の秘密と衝突する場面も出てきます。外国勢力から国民を守る為のスパイ防止法を悪用して、国民の弾圧に悪用しようと考える輩が出てこないとも限らないです。そういうことが起きないように、規制対象を明確化し、暴走に歯止めをかける仕組みをあらかじめ法律にビルトインしておく必要があります。どういう条件なら傍受が許されるのかなど、諸外国の制度を参考に整理する必要があると思います。高市総理のおっしゃる通り「国論を二分する」テーマだけに、だからこそ丁寧な議論に期待したいです。