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26.03.10

深刻化する教員不足、AIは切り札になるのか?

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。

ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんにお話を伺います。
神庭さんに取り上げていただく話題はこちら!


「深刻化する教員不足、AIは切り札になるのか?」


吉田:公立の小・中・高校や特別支援学校のうち、2,828校で、2025年度の始業日時点で、合計4,317人の教員が不足していたことが、文部科学省の実態調査でわかりました。そこで今朝は、教員不足の背景にある問題やAI活用の可能性について神庭さんに解説してもらいます。


ユージ:まず今回の文部科学省の調査でわかったことをまとめていただけますか。


神庭さん:教員不足が深刻化している状況が改めて浮き彫りになりました。「教員不足」というのは、実際に学校に配置されている教員の数が、教育委員会が配置することにしている教員数を満たしておらず、欠員が生じている状態のことです。文部科学省の調査によれば、昨年度の始業日の段階で小学校で1,911人、中学校で1,157人、高校で571人、特別支援学校で678人、合計4,317人の教員不足が判明したんですね。学校全体の8.8%で不足が生じていました。共同通信によると、2021年度の前回調査では2,558人、5.8%だったそうですから、明らかに悪化していますよね。


吉田:どの業界でも人手不足は深刻と言われていますけれども、教員不足の原因はどういったところにあるのでしょうか?


神庭さん:1つは需要の増加です。団塊世代の大量退職に合わせて、若手教員の採用を増やした結果、産休・育休をとる教員が増えました。お休みの間に、代わりを務める臨時講師の需要が増しているけれども、ここが全然足りていないんです。教員採用試験に何度もチャレンジしていた臨時教員が正規教員としてどんどん採用されました。それ自体は喜ばしいところではあるけれども、結果として臨時講師の方が手薄になっていると。また、特別支援教育を受ける児童・生徒の数は過去10年で2倍に増えていまして、それをサポートする教員もより多く必要になっている実情がありますね。


ユージ:子どもの数は減っていると言われるなかで、需要が多様化したことで、足りなくなっているわけですね。


神庭さん:2つ目の原因というのが供給、つまり教員のなり手の減少です。昨年度の公立学校の教員採用試験の受験者総数は10万9,000人あまりで、前年度から7,000人あまりも減って過去最少になってしまいました。採用倍率も2.9倍で過去最低を記録しています。


吉田:とにかく先生がたの仕事が大変というニュースもよく聞きますけれども、なり手が減ってしまった原因は何でしょうか?


神庭さん:やはり教員のブラック労働が広く知れ渡ったこともありますし、民間企業に流れるかたも増えているんですよね。2022年度の勤務実態調査では、教員が平日に学校にいる時間が小学校で10時間45分、中学校で11時間1分に達しました。部活動などで土日の勤務も常態化しており、中学校では土日の在校時間が2時間18分となっています。働き方改革で減少傾向にはあるものの、まだまだ長時間労働が続いているという状況。2024年度の精神疾患による病気休職者数は、年間7,087人で過去2番目に多かったです。職場で誰かが倒れてしまう。代わりの臨時講師も集まらず、残っている人に負担のしわ寄せがいって、最悪その人まで倒れてしまう。そんな負の連鎖が心配されるところですね。


ユージ:先生たちの負担を軽くするために、最近、教育現場はデジタル化や、AIの活用が試されていますけれど、それは切り札になりそうですか?


神庭さん:「10%はイエス」ですが、「90%はノー」というふうに思います。10%のイエスから先に説明すると、確かに生成AIで業務が効率化されている面はあります。文部科学省のサイトでは、生成AIパイロット校の取り組みとして、こんな事例が紹介されています。「学園祭や運動会の保護者アンケートを生成AIに分析させてまとめさせた」「通知表の所見欄を作成する際にGoogle Geminiで文章構成を補助してもらった」「学校通信の原案をMicrosoft Copilotで作成した」これらはいずれも業務軽減につながっておりますから、成功事例と言えると思います。


吉田:「90%はノー」だったのですね。それはなぜでしょうか?


神庭さん:AIは魔法の杖ではないからです。結局AIに任せられるのは「たたき台」や「原案」をつくるところまでで、最終的には人間のジャッジが必要になります。生徒指導や保護者対応も高度なヒューマンスキルが必要ですから、とてもじゃないですがAIでは代替できないわけです。もうひとつ懸念しているのは、AI活用がかえって労務強化や労働密度の上昇につながらないかという点です。「AIでできるんだったらもっと数を増やせ」とか「浮いた時間をこっちの仕事に回せ」となると、結局、先生の仕事は楽にならないし、残業時間も減らないですよね。


ユージ:たしかにそうですよね。子どもたちにとっても、先生たちの役割はとても大切ですから。どうしたらいいのでしょうか?


神庭さん:文部科学省は学校の業務を「学校以外が担うべき業務」「教師以外が積極的に参画すべき業務」「教師の業務だが負担軽減を促進すべき業務」の3つに分類していますが、現実には給食費の徴収や広報資料の作成、部活動の対応など、教員じゃなくてもできるようなことをいまだにやらされています。この分類をもっと徹底すべきだと思いますし、AIを使うと学級通信が楽に作れるぞではなくて、そもそも学級通信が必要なのか、体育祭のアンケートを取らないといけないのかという根本に立ち返って、教員の仕事を精査した方がいいと思っていまして、本当に真っ先にやるべきは、働き方改革でもAI活用でもなく、教員の給与を上げることなんですよ。あえて極論を言わせてもらうと、給料を1.5倍にして残業代をしっかりつければ、教員不足は一瞬で解決するはずです。答えのわかっているクイズに、延々とピントのズレた答えを出し続けた結果が、今の教員不足につながっているんじゃないかなと思います。

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