26.05.21
生成AIと金融口座のデータ連携について

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターは情報社会学がご専門の、学習院大学・非常勤講師 塚越健司さんです。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら!
「生成AIと金融口座のデータ連携について」
吉田:OpenAIは対話型AI「ChatGPT」で、銀行や証券会社など金融機関の口座とデータ連携する機能をアメリカで始めました。家計や資産形成の相談がしやすくなる一方、意図せぬ情報流出などのリスクも考えられそうです。
ユージ:塚越さん、ChatGPTが始めたこのサービスについて教えてください。
塚越さん:最近の生成AI企業は、いろんなサービスを出しています。OpenAIが最近発表したのが、アメリカの有料ユーザー向けサービスの「Finances」です。これは金融データ連携の専門企業を通して、シティグループやバンク・オブ・アメリカなど、12,000以上の金融機関の口座をChatGPTにつなげることができるんですね。
吉田:ChatGPTと金融口座がつながると何ができるのでしょうか?
塚越さん:簡単に言うと資産管理ができます。収入や支出はもちろん、投資内容などもダッシュボードで一目でわかります。さらに生成AIが隣にいてくれるので、「無駄な出費はどれかな?」などと聞けば答えてくれます。将来的にはですね、例えば「この株を売ったらそれが税金に与える影響はどのくらい?」みたいな質問に、シミュレーションまで出してくれるということで、個人でも今のところやろうと思えばできますけど、ちょっと大変なんですよね。便利なんですけど、セキュリティが気になるところですよね。現状、AIが見えるのは残高と取引履歴のみで、口座番号などは見えず、送金操作もできない「読み取り専用」になっています。また接続を切るとデータは30日以内に削除されますし、データが学習されないようにする設定もあります。まずは相談相手にとどめるっていうところですね。
ユージ:本当ですか。
塚越さん:実際に情報が出ちゃうかどうか、気になる人はやっぱり気になると思います。OpenAIとしてはこういう対策をしているということです。さらにいえば、今回のサービスは今ある資産管理ソフトとかですね、そういったところの代わりになる可能性もありますね。特に「SaaS」企業と呼ばれるところが大変だと言われています。生成AIがいろんな既存のサービスをどんどん塗り替えると言われているので、ソフトウェア企業にとっては打撃かなと思います。
ユージ:日本でも生成AIと金融口座の連携の動きはあるのでしょうか?
塚越さん:三菱UFJフィナンシャル・グループは、自社アプリにChatGPTを組み込んで家計管理や資産のアドバイスができるサービスを2026年度中に導入を目指すと発表しています。なので、他の金融機関が動いてもおかしくないですよね。流れは止まっていなくてですね、国内でも生成AIを使って、ライフプランを提供するスタートアップが登場したり、金融庁が主催するイベントでも、「AIエージェントと金融の融合」が中心テーマになるということで、日本の規制は強いですが、AIと金融の融合の流れがあるのは事実です。一方でアメリカではOpenAI主導で金融機関と連携していますが、日本では現状、金融機関が主導でOpenAIと連携、という動きなんですよね。将来的に生成AI経由でできることは増えるでしょうから、今後は銀行アプリもAIが主導になるのか、いや、あくまで銀行が主でAIを使うのかというところで、使い方をめぐって覇権争いが起きるかもしれないと私は見ています。また、国内の資産管理アプリ会社などもすでに金融機関と連携しているので、うまくAIと接続ができると生き残る道はあるかと思います。
吉田:生成AIと金融口座の連携、気をつけることは何でしょうか?
塚越さん:多くの個人情報が集まるので、セキュリティ漏れなどは確かに危険ですよね。OpenAIはこういう対策をしてるといっているので、そこがどういうレベルなのか、ちょっと個人の判断というところもありますよね。一方で、より大事なのはですね、AIは間違えるということなので、なんでも言うことを鵜呑みにしない。最後は「自分の判断」というところが大事だなと思います。
ユージ:そうは言ったって、私のミスよりは少ないと思うけどね(笑)。
塚越さん:確かにね(笑)。レベルが上がっているのは間違いないです。最後の判断だけちゃんとしましょう。
ユージ:そういうことですよね。塚越さんは、この生成AIと金融口座の連携についてどう思いますか?
塚越さん:私は毎日、本当にたくさんの生成AIを使っていまして、ChatGPTだけでなく金融の相談も含めて、あらゆる相談をしているんですね。生成AIはいろんなことを覚えてくれるんですよ。会話をすればするほど、「あなた1週間前にこういうこと言っていたよね」とか「最近サボっているでしょう」とかって怒られたりもするんですよ。「考えすぎだから、早く手を動かして」なんて言われることもありますが、そういうことまで分かってくれる。この機能は要するに、自分のことを全部わかっている「ファイナンシャルプランナー」が横にいるようなものなんですよね。将来的には「今のうちにこうした方がいいよ」といったアドバイスを、簡単に言ってくれるようになりますよね。だから、お金の勉強も、AIに聞けば全部分かるようになるわけです。ですから、便利になることは間違いないんですけれども、ただやっぱり「AIに従属」するのではなくて、自分が決めるということが大事ですよね。AIに言われたからと全部委ねてしまうのではなく、最後は自分で決めることが大切です。
ユージ:あくまでアドバイスとしてとどめておかないと、鵜呑みにしてすべてAI任せで動いてしまうと、ミスも起こってしまう可能性がありますよね。
塚越さん:「人生の主導権は自分にある」ということを、つい忘れがちになってしまうんですよ。「どうしたらいいの?」とAIに頼り切ってしまうんですね。ですが、連携自体は大事じゃないですか。
ユージ:連携は大事。ですから、良いチームメイトとしてAIをチームワークに取り入れるくらいで、でも「あくまでリーダーは俺だぞ」というスタンスを守らないと、ミスにつながる可能性があるなと思いました。
塚越さん:そうですね。AIをどう使いこなすか、勉強していくということは大事かもしれないですね。