26.03.11
東日本大震災の被災地の“インフラ”維持管理費の増加

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
情報社会学がご専門の学習院大学 非常勤講師の塚越健司さんにお話を伺います。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら!
『インフラの維持管理費、東日本大震災前の1.8倍に増加…岩手、宮城、福島の財政を圧迫』
吉田:東日本大震災後に設けたインフラの維持管理費が膨らんでいます。日経新聞の調査によりますと、岩手、宮城、福島の3県と、沿岸の市町村の年間支出は震災前の1.8倍に増えました。塚越さん、この3県のインフラの維持管理費が膨らんでいる現状について、詳しく教えてください。
塚越さん:まず日経新聞は、震災で被害が大きかった東北3県と沿岸の37市町村を対象に調査を行いました。内容としては、『道路』、『公営住宅』、また、堤防や水門といった海岸の『保全施設』、そして、『学校・医療施設』です。これらの維持管理費の変化を調べますと、やはり管理費は膨らんでいました。震災前の2010年度は総額で805億円でしたが、直近の2024年度だと1,437億円と、だいたい1.8倍に増えています。県ごとにみると、宮城県が2.8倍、岩手県が1.6倍、福島県が1.3倍に増えています。分野別にみても、公営住宅が2.8倍、道路が1.9倍に増えていまして、要因としては、被災地に新たな道路や建物ができたことや建設業の人材不足に資材高騰、もちろん、既存の施設の整備など様々な要因があります。震災直後の道路や仮設住宅といった初期のインフラ整備は国が負担したのですが、今は基本的に、県や市町村が管理や維持を担っていまして、8割の自治体は今後の負担に懸念があると回答しています。さらに、震災前と比べた人口減少率というのがありまして、全国平均だと2%とどこでも人口が減っているんですけれども、宮城が4%、特に岩手県と福島県が14%も震災前に比べて人口が減っているんですね。つまり、人が少なくなるのに管理費は増えるという非常に重い財政的課題があります。さらに課題が続いて心苦しいのですが、震災後は急ピッチでインフラを整備したので、2040年代にはこれらが同時に老朽化して、修繕や更新時期が集中する可能性が指摘されています。少し先の未来には、さらに重い課題があるわけですが、その頃にはベテランの技術系職員も退職していることが予想されるので、自治体として大きな課題です。
吉田:こうしたなか、維持管理費のコスト軽減を図る動きもあるようですね?
塚越さん:そうですね。維持管理のコストを削減するには、壊れてからではなく、壊れる前に補修することで支出が抑えられるんですね。例えば、19の自治体はインフラの『長寿命化』と『予防保全』を対策として挙げています。昨今は、ドローンを使ってある程度自動で定期的な検査が可能なので、コストをかけずに予防保全ができると思います。一方、日経新聞によると、岩手県釜石市は、老朽化した公営住宅を解体して震災後に整備した復興住宅に集約することで点検や修繕費用を抑え、戸建ての復興住宅は、住民が希望する場合は売却するということです。人口減少は避けられないので、使わない建物は早めに解体して、のちのちの費用を抑えておこうということですね。これに関連して読売新聞は、補修も建て替えもしない橋を住民に説明した上で決めること、つまり『インフラの終活』を行う高知県大豊町の取り組みも紹介しています。自治体によっては、不便になっても今後を考えて、残すものと使い終えるインフラを選択する段階に入っているということですね。
ユージ:東日本大震災の被災地でインフラの維持管理費が膨らんでいること、塚越さんはどうご覧になっていますか?
塚越さん:これから人口減少が抑えられない中で、今、話したように維持管理費が膨らんできてしまうのは課題ですよね。最近は『スマートシュリンク』という言葉が自治体や知事会など、主に地方から聞かれるんですね。直訳すると“賢く縮む”。つまり、人口減少を前提とした社会づくりを行いましょうということです。少子化と言われていますけど、実際はもう『少子社会』ですよね。これから絶対に人口は減っていくことになっているので、東日本大震災のときもそうですけど、復興というとまずは原状回復するという考え方にどうしてもなってしまうんですけれども、専門家も指摘されていますが、震災前の段階で人口が減っていくことはある程度わかっていたので、復興といっても、原状回復ではなくて、将来を見据えたものにしていく必要があります。つまり、どのインフラを残し、どう整備していくかを含めた復興というのを、今回のことを教訓にして、残念ながらこれからも災害が起こりますので備え、考えていかないといけないということですね。
ユージ:さっきおっしゃっていた高知県の橋はスマートシュリンクのいい例ですよね。全部の橋を直すのではなく、もしかしたら、この橋は改修しなくてもいいかな?って住民と話し合ったうえで、全部を直すんじゃなくて、ここは直さないという判断をね。
塚越さん:そうですね。地域がどういうふうにスマートに小さくなっていくかを住民みんなで決めていくということが重要ですね。