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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

26.03.12

売り手市場の新卒採用の変化

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。

情報社会学がご専門の学習院大学 非常勤講師の塚越健司さんにお話を伺います。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら!


『売り手市場の新卒採用“量より質”へ、企業や学生が求められる質』


吉田:2027年に卒業を予定する大学3年生の採用広報活動が今月1日に解禁されました。少子高齢化などを背景に学生優位の『売り手市場』の状況が続いていますが、新卒の採用人数を減らす企業も目立ってきました。そこで今回は、売り手市場の新卒採用の変化について塚越さんに解説いただきます。


ユージ:新卒の採用人数を減らす企業も出てきているんですね?


塚越さん:そうなんですね。マイナビが2月に公表した調査によると、全体としては5年連続で、採用を増やすと答えた企業の方が、減らすと答えた企業より多いので、売り手市場と言えば売り手市場なんですね。ただし、2027年卒の採用予定者を「増やす」と回答した企業は23%なんですが、これは前の年から6ポイント減っているんです。逆に、採用を「減らす」と答えた企業は7%で1ポイント増えています。直近ですと、理系も文系も「増やす」の回答のピークは2024年卒だったんですが、そこから10ポイント以上減っています。つまり、ちょっとずつ『売り手市場』に変化が出てきたという兆候が読み取れると思います。


吉田:変化の背景には、何があるのでしょうか?


塚越さん:日経新聞によりますと、まず、大企業はコロナ後に新卒を増やして一定数を確保したところが多くなったことが挙げられます。一方で、中堅〜中小企業になりますと、そもそも採用しようとしても人が集まらず、かといって1人を採用するためにも、広告費や面接、インターンの運営など給料以外にもいろいろとお金がかかります。実際、企業が想定した採用人数をどれだけ確保できたかという『採用充足率』というのがあるんですが、2026年卒で69.7%と、今のスケジュールとなった2017年以降で最低となっています。中小企業に限るともっと厳しいということですよね。つまり、お金をかけても人が集まらないので、だったら採用自体を減らす計画にシフトしているということですね。さらにいうと、じわじわとAIの影響も出始めています。例えば、SBIホールディングスの北尾社長は、AI活用を進めて採用を抑制する方針を示しています。また、みずほフィナンシャルグループも、AIで業務効率化を進めるため、今後10年で最大5,000人分の事務業務を削減するとしています。AIの活用で業務時間が削減できるなら人も…ということです。これは今すぐというわけではありませんが、アメリカでは、すでにホワイトカラーの若手の就職が厳しくなっていると言われていますので、人手不足とはいえ、日本にも確実に影響は出てくるでしょう。あと、私の世代だとですね、大卒の初任給は20万円なんていう意識がある方もいらっしゃると思いますが、これはもう完全に過去のものです…。今や新卒で30万円や場合によっては40万円なんていう数字を掲げる企業も出てきましたので、先程、話したように、企業が1人を採用するためにはいろいろとお金がかかる中で、人件費も上がっているのでちょっと厳しくなってきたというところもありますよね。


ユージ:新卒採用に関して、大手と中小企業で違いはありますか?


塚越さん:大手はそれでも採用を維持・拡大する動きがありますが、中小企業となると先ほど話したような初任給や福利厚生の面で不利になります。中小企業の中には採用が長いことうまくいかないところもあって、だったら大卒採用をあきらめるといった企業が増えていると分析されています。なので、逆に大卒にこだわらず、中小企業では高卒採用にシフトする動きも広がっていまして、こうした動きが広まると、いずれ大卒の売り手市場という構造も変わっていくのかなと思います。


吉田:新卒採用“量より質”への変化はどう見ますか?


塚越さん:まず前提として、今の大卒は、それでもかなりの売り手市場です。よく話していますが、就職氷河期世代で一番大変だった2003年卒の内定率はだいたい55%程度だったんです。対して、2025年卒は98%と大きな差があります。ここは押さえておきましょう。その上で、やはりコロナからの反動も落ち着くでしょうし、ホワイトカラーは特にAIで人を削減できます。新卒の給料が高くなると採用人数は絞られるので、今後は、量より質が問われるのかなというところです。そうなると、大学生はこれまで以上に学生段階から即戦力が求められますので、大学教員としては、大学の勉強をしてくれと思うのですが、なかなか難しいところですよね…。AIに使われるのではなく、AIと協業して、ちゃんとその場の面接で答えられるなど、即戦力としてのニーズが高まってくるのかなと思います。


ユージ:学生や企業は、これから何を意識していけばいいと思いますか?


塚越さん:学生さんに言えるのは、大人はいろいろ言いますけれども、まずは自分が大事、『自分ファースト』ですね。これからは転職もしやすい社会ですから、そういったことも考えて、自分ファーストでいいと思います。一方で、企業にとっては、学生に選ばれる時代なので、給料以外にもキャリアや働き方、あとは『成長』ですね。「この企業なら自分が成長できる」と感じられる企業になるということですね。やはり、学生に選ばれるという部分では、今後も変わらないかなと思いますので、いずれにしても、学生も企業も、どちらも質が問われる時代だということですね。

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