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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

26.03.17

JR東日本が初の値上げ、運賃引き上げラッシュの背景とは

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。

ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんにお話を伺います。
神庭さんに取り上げていただく話題はこちら!


「JR東日本が初の値上げ、運賃引き上げラッシュの背景とは」


吉田:JR東日本は3月14日、運賃を平均7.1%値上げしました。消費税の増税時などを除くと、1987年の民営化以来、初めての値上げです。また、西武鉄道、つくばエクスプレスの運賃も3月14日、引き上げられました。そこで今朝は、鉄道運賃の値上げラッシュの背景について神庭さんに解説してもらいます。


ユージ:JR東日本の運賃の値上げについて教えてください。


神庭さん:値上げ率は普通運賃が7.8%、通勤定期が12%、通学定期が4.9%で、平均7.1%のアップになります。山手線などの初乗り運賃は、切符の場合だと150円から160円に上がります。先ほど通勤定期が値上げ率12%と言いましたけど、山手線内に限ると22.9%の大幅アップということで、都心部の利用者ほど影響が大きいということですね。JR東日本の値上げによって、競合する私鉄と運賃が逆転したり、さらに差が開いたりしています。朝日新聞によると、品川―横浜間はJRだと350円ですが、京急だと320円。新宿―小田原間はJR1,600円、小田急910円。池袋―川越間はJR720円に対して、東武が490円になります。


吉田:こう聞くと結構差がありますね。


神庭さん:新宿―八王子間は、JR620円に対して、京王410円です。で、京王は「安いのも、京王。」というメッセージを打ち出して、特設サイトで「いつもの運賃、見直しどきかも?」とか「『通勤は京王』が、経費削減の最短ルート」と呼びかけるなど、ここぞとばかりに攻勢をかけており、JRの値上げというのは私鉄にとってはチャンスでもあります。


ユージ:JR東日本以外の値上げの状況はどうなっていますか?


神庭さん:はい。西武鉄道もJR東日本と同じ3月14日に24年ぶりの値上げに踏み切りました。平均10.7%の値上げで、ICカードの場合、初乗りは157円から169円に上がります。つくばエクスプレスも3月14日に平均12.2%値上げしています。2005年の開業以来初です。切符の場合の大人の初乗りを170円から180円に上げる一方で、子育て世帯支援のために子供料金は据え置き、あるいは値下げするなどメリハリをつけています。こうした潮流というのはもう鉄道業界全体のもので、ダイヤモンド・オンラインによると2023年以降、東急電鉄、近畿日本鉄道、JR四国、南海電鉄、京急電鉄、京王電鉄、名古屋鉄道、JR九州、JR北海道、京阪電鉄が値上げに踏み切っています。


吉田:こういった値上げラッシュ、理由は何でしょうか。


神庭さん:やっぱり最近の物価高と人件費の高騰、人手不足が大きいです。インフレに対応して、運賃も値上げしていかないと、鉄道会社の経営が持たないんですね。少子化で沿線の人口が減っているという構造的な要因もあります。あとは、コロナ禍でリモート勤務とか増えましたし、長距離の出張も減りましたよね。それがコロナ禍が明けた後も、鉄道需要が完全回復まで至ってないと。JR東日本、今回の値上げでは約880億円の増収となる見通しですが、ウハウハかというと決してそうではなく、安全な運行のためには老朽化した設備の維持、修繕が不可欠です。バリアフリーも進める必要があるということで、こういうことも考えると、値上げもやむを得ないのかなと思います。


ユージ:そうなると、今後も値上げが続く可能性は高いですか。


神庭さん:インフレが続く限りは値上げも続くんじゃないかなと思います。鉄道ジャーナリストの枝久保達也さんは、ダイヤモンド・オンラインの記事で、「デフレで長期にわたって運賃の値上げができなかったことの方が『例外』だった」と指摘していて、「今後は鉄道事業で『過大な利益』を上げられない時代が再来し、インフレに連動して、数年おきに運賃を値上げするのが珍しくなくなるかもしれない」と分析しています。


吉田:さらなる課題は何でしょうか。


神庭さん:イラン戦争と令和のオイルショックで、一段と物価高が加速する可能性が高いです。電気代も上昇すると思います。産経新聞はJR東日本の値上げについてこう主張しています。「運賃は国鉄時代の昭和51年、オイルショックなどの影響を受けて50%超も値上げされた。以来、毎年のように値上げを繰り返して乗客離れを起こし、民営化に追い込まれた過去の教訓を忘れてはならない」と述べています。確かに5割も上がったら相当きついですが、私はどちらかというとスピーディーに値上げできないことの方を心配してます。というのも、鉄道運賃の値上げにあたっては、国土交通大臣の審査と認可が必要になります。日経新聞によれば、今回の値上げの申請から実現まで、実に2年もかかっていると。さらにこれから3年、収支を検証することになるため、今後5年程度はどれだけインフレが急伸しても、値上げは事実上できないということなんですよ。ということは、今の制度だと、鉄道会社は急激なインフレに対応しきれない恐れがあります。


ユージ:それ問題はですよね。どうしたらいいのでしょうか。


神庭さん:ものすごい勢いで今人口減少が進んでいて、今の1億2,200万人が2050年には1億人まで減少する見通しなわけですよ。全国津々浦々に張り巡らされた鉄道網を維持するには、莫大なコストがかかります。ですから、これをどこまで維持するのか、誰が費用を負担するのか、国民的な議論が必要だと思います。「スマートシュリンク(賢く縮む)」ということを鉄道網に関しても考えなきゃいけないかもしれない。こうした状況を考えると、ライドシェアであるとか、あるいは自動運転技術が、鉄道網を補う選択肢の一つになるかもしれませんから、そういった面で大胆な規制緩和であるとか、法整備を急ぐべきじゃないかなと思います。

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