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26.03.18

健康保険法などの改正案と、社会保険料の負担削減

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。

情報社会学がご専門の学習院大学 非常勤講師の塚越健司さんにお話を伺います。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら!


『健康保険法などの改正案を閣議決定…社会保険料の負担削減につながるのか?』


吉田:政府は先週金曜日、健康保険法などの改正案を閣議決定しました。膨張する医療費を抑制し、現役世代の社会保険料負担の上昇を緩和する狙いがあります。塚越さん、こちらの改正案のポイントを教えてください。


塚越さん:いろいろとありますが、まずは最近よく聞かれる『OTC類似薬』ですね。OTC類似薬を簡単に言うと、頭痛薬や湿布など市販薬と成分や効果が似ているものです。新制度では、このOTC類似薬が処方された場合、市販薬とあまり変わらないものであれば、薬剤価格のうち25%は自己負担として追加されます。対象となるのは77成分、およそ1,100品目で、来年3月の施行を予定しています。ただし、子供や難病患者の方には配慮措置も検討するということです。次に、『高齢者の支払い能力に応じた負担』ということで、こちらは75歳以上の後期高齢者について株式配当などの金融所得も計算して、支払い能力がある、つまり、ある程度収入がある人は、1割ではなく2割など相応の負担をお願いするということですね。そのため、金融所得についても行政が把握できる仕組みを整備します。なぜこうするかというと、現状は金融所得については確定申告しないと反映されないので、余裕があるのに1割負担というのは不公平ではないかという指摘があったからなんですね。一方、出産費用は無償化に向けて、『正常分娩』に全国一律で基本単価を設定して、保険で全額を賄う新制度の導入を目指すということで、この価格は今後実態調査した上で厚労省が決定します。また、子育て世帯の負担軽減に向けて、国民健康保険料の減額範囲を広げます。子供を含めて人数に応じた負担がありますが、現在は未就学児分は5割を公費が負担するんですが、これを高校生年代まで広げるということで、これも来年4月から施行されます。他にもいくつかありますが、代表的なところだけみてもいろいろありますね。


吉田:この改正案が今の国会で成立したら、社会保険料の負担軽減につながるのでしょうか?


塚越さん:実際にどの程度下がるかはわかりませんが試算は出ていまして、社会保険料の加入者一人当たり、年間でおよそ2,200円削減できるということです。年間で2,200円か…というところなんですけれども、ちょっと詳しくみていくと、まず高額な医療費の患者負担を抑える『高額療養費制度』の月額上限の引き上げです。高額療養費制度については去年からよく議論になっていますが簡単に言うと、大きな病気などで医療費が高額になった際に患者負担を抑える仕組みです。厚労省は去年の議論を踏まえて、今年の8月には患者負担の上限額を最大で7%引き上げ、来年8月には最大で38%引き上げる方向です。これには反対の声も多かったのですが、厚労省によれば来年8月からの引き上げによって、今の医療費と比べて年間2,450億円が削減できるという試算を出しています。これを保険料でみると、年間でおよそ1,400円下がります。ただ、年間1,400円保険料が下がっても、高額な医療が必要な人は、最大とはいえ今より38%負担が増えるわけです。病気は誰でもかかる可能性があるので、私はちょっとどうかな?と思いますね。次に『OTC類似薬』ですが、先ほどお話ししたように、処方された薬の25%分の代金を患者に求めるということで、この場合は、保険料は一人当たり年間400円程度の削減ができるということです。最後に、今年の6月からは、ジェネリック医薬品があるのに先発の薬を選んだ患者への負担が、現行の倍になります。また長期の処方を可能にする処方箋を普及させるといった運用の変更も合わせると、これで年間400円削減できるということなので、高額療養費制度で1,400円、OTC類似薬で400円、ジェネリック医薬品関連で400円。合わせて年間2,200円の削減ということですね。


ユージ:『健康保険法などの改正案』と『社会保険料の負担軽減の試算』について、塚越さんはどうご覧になっていますか?


塚越さん:医療費が高いので削減は大事なんですけど、年間2,200円。月額200円もいかないということで、ちょっとインパクトに欠けるかなと…。


ユージ:そこですよね!しかも全部合わせてですからね。手間のわりに削減額が…っていうね。


塚越さん:しかも、人によっては負担がかなり増えちゃうケースもあるので、ここはやはり議論がまだ必要なのかなと思います。一方で政府は、軽い症状については市販薬なども活用する『セルフメディケーション』を推進しています。こうした政策を進めることで、市販薬、いわゆる『OTC医薬品』の役割が大きくなる可能性もあって、競争も進むと思うのでここも一つ注目かなと思います。あとは、制度だけではなく医療全体として、患者さんとどう向き合っていくかということですよね。医療全体を含めて長い議論になっていますけれども、なんとかして削減していくという方向自体は我々もしっかり見ていかないといけないところですよね。

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