26.03.19
国産半導体は生活インフラ。売上高2040年40兆円達成へ正念場

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
情報社会学がご専門の学習院大学 非常勤講師の塚越健司さんにお話を伺います。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら!
「国産半導体は生活インフラ。売上高2040年40兆円達成へ正念場」
吉田:政府は、国内で生産される半導体の売上高を2040年に40兆円まで増やす目標にする方針です。AIやデータセンターの需要拡大に備え、最先端半導体の研究、開発拠点を整備に向けて、国が方向性を示し、民間企業が投資しやすい環境をつくろうとしています。そこで今朝は国産半導体について塚越さんに解説いただきます。
ユージ:政府が国産半導体に力を入れていますね。
塚越さん:今ですね、国内で生産される日本の半導体の売上はおよそ8兆円なんですが、これを2030年に15兆円、2040年に40兆円にする目標を掲げています。およそ40兆円というと、規模感でいうと現在の不動産業と同じくらいの規模で、自動車産業の70兆円規模に次ぐ産業になります。半導体はスマホから家電に車など、あらゆる製品に搭載されていて、そういう意味では「生活インフラ」になっています。一方で、半導体も汎用性のある必需品だけではなく、AIやデータセンター向けなどの「最先端技術」として重宝されるものもあり、ビジネスとしても重要な産業なんですね。つまり、日常用と最先端技術の両方で半導体は必要です。ただ、昨今の世界情勢は荒れてますよね。最先端の半導体は台湾で多くつくられていますが、台湾は中国との関係でリスクがあり、アメリカも自国で最先端の半導体をつくることも考えています。そう考えると、半導体は国内で日常用のものを量産する必要があります。要するに、半導体は安全保障の意味でも生産体制を整える必要があるわけです。実際、高市総理が主導する「日本成長戦略会議」でも、官民で促進する17分野の投資でも、AIと半導体が重視されています。最先端の半導体は高く売れますので、輸出も視野に入れて、今回は大きな目標を掲げているといえます。
吉田:日本の半導体産業、世界と比べるといかがでしょうか。
塚越さん:よく言われていることですが、1980年代までは日本は半導体分野で世界を牽引していました。先ほど話したように、半導体といっても実際は様々な分野があるのですが、例えば特にコンピューターに使われる「DRAM」と呼ばれる半導体でいうと80年代の終わりで世界シェアの5割以上、それどころか7割を占めていたとも言われるんですよ。世界シェアのトップだったんですよ。
ユージ:トップだったんですね。
塚越さん:ただし、90年代に入るとアメリカの圧力で、日本の半導体価格を実質的に上げたり、アメリカなどの外国産半導体を、一定割合国内でシェアを確保するように求められたりする、いわゆる「日米半導体摩擦」が起きてシェアが下がりました。その隙間で韓国等が低価格で競争に参入したこともあり、DRAMのシェアはどんどん下がっていき、全体として日本の半導体は世界でも目立たなくなった、とも指摘されています。様々な理由はありますけれども、交渉ができず結果的に競争力を失ったという苦い経験があるわけです。半導体にはたくさんの分野があり、今でも強いところがあるんですね。例えば半導体チップをつくる装置の世界シェアはおよそ3割で世界第2位になっていたり、半導体をつくる時に使われる、「フォトレジスト」という薬剤など、特定の材料では日本がシェア8割を超えるものもあります。目立たなくなってはいるものの、ものによっては競争力は健在です。
ユージ:聞いていると優位な点もある日本の半導体の強みは何でしょうか?
塚越さん:政府が後押しをしている点ですね。国内では台湾のTSMCを熊本に誘致していますよね。海外の企業ではありますけれども、産業を育成するには必要ですし、現地の経済は基本的に盛り上がっています。あとは北海道に「ラピダス」という、国も後押しする半官半民の半導体企業も動いています。とにかく頑張ろうという風になっていますので、あとは人材不足やコスト面をどう克服できるかが問われています。
吉田:現状の課題、怖い点というのは何でしょうか。
塚越さん:一言でいうと、どこを目指すかなんですよ。例えばラピダスは2027年に量産体制を目指している半導体は、すでにTSMCが2025年から量産体制に入っています。半導体産業は何兆円という資金が必要なので、全方位で頑張るよりは勝てる分野に絞って力を注いで独走させて、絶対に負けない分野をつくっていくことが大事だと思いますね。
ユージ:国産半導体産業自体についてはどう思いますか?
塚越さん:最初に言った通り、安全保障としても重要になってくるんですよね。何かあった時に国内でつくれないといけない。そんな中で、官民挙げて頑張ろうって言って、何十兆円を国も投資するとのことですが、何でもやればいいというわけではなく、本当に勝てる部分を強くして、将来の人型ロボットなどにも使える分野を伸ばしていく。そういった勝てる部分に注力して頑張っていくことが重要かなと思います。