26.03.23
日米首脳会談の成果と艦船派遣の行方

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターはダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
【日米首脳会談の成果と艦船派遣の行方】
吉田:高市早苗総理とアメリカのトランプ大統領が3月19日に会談し、高市総理は「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけ」と述べました。そこで今朝は、日米首脳会談の成果や艦船派遣の行方について、神庭さんに解説してもらいます。まずは、日米首脳会談、ズバリ成功したのでしょうか?
神庭さん:最初から大きな「成功」は期待できず、いかに失敗、失点を減らすかという過酷なレースでした。いかにトランプ氏のご機嫌を損ねずに会談を終えるかが全てでした。トランプ氏に無理難題を言い出さないように、こちらも口を滑らせて余計なことを言わないようにする。例えるなら「イライラ棒」みたいなものです。失敗したらトランプ氏の怒りが爆発して電流が流れるみたいな状態です。日本国民の命運がかかったイライラ棒。しかも誰も100万円をくれず、失敗のリスクしかない。全世界が固唾を飲んで見守るなかで、炎のチャレンジャー高市さんが何とかイライラ棒をクリアした状態です。かなり神経を使ったのではないかと思います。
ユージ:「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけ」という高市総理の発言も話題になっていましたよね?
神庭さん:そうですね。ドラゴンクエストの冒頭で王様が言うセリフみたいでした。Xでは「いつもトイレを綺麗にご利用いただきありがとうございます」と同じ言い方、という投稿がバズっていました。京言葉で「はんなり」と伝えたんだろうと言っている人もいました。私なりの理解で勝手に意訳させてもらうと「世界中でイスラエルを止められるのはアンタだけ。さっさと何とかしてや!」。これをそのまま伝えると角が立ちます。何せトランプイライラ棒なので、こうやって何重にもオブラートに包んでドラクエ構文で伝えるしかなかったんだろうと思います。高市さんや日本の事務方の苦労が偲ばれる一言でした。正面切って批判してもキレられるだけなので、「褒めて育てる」作戦にしたのではないかと思います。
吉田:焦点の1つだった、ホルムズ海峡への自衛隊の艦戦の派遣についてはどうでしょうか?
神庭さん:高市総理は「日本の法律の範囲内でできること、できないことがあるので、詳細にきっちりと説明した」と話していました。NNNが独自報道した会談出席者や政権幹部の話によると、高市さんは停戦合意までは自衛隊の派遣は難しいという認識を伝え、トランプ氏も理解を示しました。説明の際には憲法9条による制約があることにも触れたという。最低限伝えるべきことは伝え、ホルムズ海峡で自衛隊員の血が流れるような最悪の事態は避けられました。私は自衛隊の存在を明記する形で憲法を改正した方がいいと考えている立場ですが、今回は憲法9条があって本当に良かったとホッとしました。憲法がなければ、トランプ氏の言うがままに自衛隊を戦地に派遣させられていたかもしれないです。そもそも、半分メイド・イン・USAみたいな日本国憲法について、わざわざアメリカにご説明差し上げるというのもおかしな話だとは思いました。
ユージ:トランプ大統領はその説明で納得したのでしょうか?
神庭さん:そこは全然、油断できないです。トランプ氏は言うことがコロコロ変わります。日米首脳会談の後に受けたFOXニュースのインタビューで「日本には憲法上の制約があるが、我々が必要とあらば支援してくれるだろう」という趣旨のことを語っています。日本側の主張をきちんと理解しているのか、全部分かったうえで揺さぶりをかけているのかは分からないです。会談のなかでも日本に対して「ステップアップ」という言葉を繰り返し使っていました。
ユージ:「ステップアップ」それは、どういう意味でしょうか?
神庭さん:トランプ氏はNATOを「臆病者」と非難して「日本はNATOと違う」と一定の評価はしています。でも、完全に満足はしているわけではないです。「もっとステップアップして、本気を見せてくれ」と思っていると思います。首脳会談は何とか乗り切りましたが、今後また圧力を強めてくる可能性もあります。とはいえ、憲法上、日本側で取れるオプションはあまり多くないです。日本は2020年に「調査・研究」目的でホルムズ海峡ではなくオマーン湾やアラビア海に護衛艦を出しました。実はこの活動は今も続いています。護衛艦や哨戒機の展開数を増やす、人員を増強する、海上警備行動発令の為の要件を整理するなど、何ができて何ができないのか、今のうちから頭の体操をしておく必要があると思います。
ユージ:日本はどうするべきでしょうか?
神庭さん:非常に難しい立場ですが、最近イランのアラグチ外務大臣は共同通信のインタビューでホルムズ海峡について「日本側との協議を経て日本関連船舶の通過を認める用意がある」という意向を示しました。日本は長年、イランとそこそこ良好な関係を築いてきました。アラグチ氏の提案にはアメリカと日本の分断を誘う意図も恐らくあると思います。アメリカと日本がべったりくっつかれても困るので、こうやって楔を打ち込んでいると思うのですが、そうは言っても国益を考えれば交渉しない手はないと思います。ホルムズ海峡封鎖が長引けば、日本経済へ甚大なダメージがあります。ここで、アメリカの尻馬に乗って、過度にイランを敵視する必要はないですし、かと言って、トランプ氏に「裏切り者!」みたいな感じで刺激するのも、ちょっとまずいという部分で非常に綱渡りの繊細な外交が求められていると思います。
ユージ:そして、しばらく気を遣うというか、発言の1つ1つを考えないといけないような交渉が続きそうですね。
神庭さん:そうですね。一言もミスができないような状況だと思います。