26.03.25
再エネ賦課金の引き上げについて

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
情報社会学がご専門の学習院大学 非常勤講師の塚越健司さんにお話を伺います。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら!
『「再エネ賦課金」引き上げで年間2万円超え…その背景とイラン情勢が電気料金に与える影響』
吉田:経済産業省は先週木曜日、再生可能エネルギーの普及に向けて電気料金に上乗せしている『再エネ賦課金』の単価を、2026年度は1キロワット時当たり4.18円にすると発表しました。標準世帯の負担額は、年間2万64円となり、2012年度の制度開始以来 初めて2万円を超えます。塚越さん、まずは『再エネ賦課金』について、改めて詳しく教えてください。
塚越さん:再エネ賦課金というのは、簡単に言うと、再生可能エネルギーを使った発電を促進するために電気料金に加算される費用のことです。電力会社から請求されるもので、電気の使用量のお知らせといった料金の内訳に書かれています。また、この金額は、毎年設定される再エネ促進のための費用と電力使用量から算出されるもので、電力会社による違いはありません。再エネ賦課金制度の背景には、そもそも政府が再エネを促進するため、2012年に導入した『固定価格買取制度=FIT制度』というものがあります。この制度は、再エネで発電された電力を一定期間、固定価格で買い取るという仕組みで、高く電気を買い取ることで再エネ業者を呼び込むためのものです。近年は『FIP制度』というものもできていますが、こうした制度の財源として再エネ賦課金があるということです。
吉田:この『再エネ賦課金』、2026年度は引き上げられるんですね?
塚越さん:そうですね。経産省が毎年単価を決めている賦課金の値段ですが、2026年度は1キロワットあたり4.18円で、前年度より0.2円上がりました。すごく上がったわけではないんですけれども、平均的な家庭だと、前年度より月80円あがって月額1,672円、年間だと2万64円で、初めて2万円を超えますし、年間2万円はなかなか…って感じですよね。再エネ賦課金は再エネの買い取り費用から、市場で売れた分などを差し引いて計算するんですが、2026年度は引ける分が小さくなったため、負担が増える形になりました。
ユージ:そして、イラン情勢ですよ…。こちらは電気料金に影響はあるのでしょうか?
塚越さん:電力会社でつくられる事業者団体の『電気事業連合会』は先週の記者会見で、イラン情勢の悪化が電気料金に反映されるのは夏前ぐらいと述べています。なので、夏は去年より電気代が上がると予想されますね。ちなみに、電源構成ですが、火力が7割近くで、再エネが2割、原子力が1割くらいなんですね。石油は火力発電で使われますが、実は全体の5%程度で少ないんですね。火力には石炭と液化天然ガス(=LNG)が多く使われています。そのLNGですが、中東からの輸入は全体の1割程度で、調達は多様化しており、すぐに影響がでることはないということなのですが、石油が調達困難になればLNGの価格も上がるでしょうし、やはり影響は避けられないですよね。
ユージ:『再エネ賦課金の引き上げ』と『イラン情勢が電気料金に与える影響』、塚越さんは、どうご覧になっていますか?
塚越さん:最初に申し上げた『FIT制度』ですが、2012年の導入当初は、電気の買取価格を相場より高くした上で、太陽光は家庭では10年、企業では20年間といった固定の買取期間を設定したので、事業者がたくさん参入してバブルになりました。ですから、再エネの導入量は増えても、長期間買取価格が高くなるんです。これらが再エネ賦課金として私たちが負担することにもなり、電気代は下がらないのに賦課金が増える要因になっています。これは再エネそのものというよりも、最初のFITという制度に失敗があったかなと言わざるを得ないですよね。最近では変わってきていますが、制度の問題で今も価格に影響を受けていますし、メガソーラーの問題もあり、ネガティブな印象を持つ人も多いと思うんですよね。それでもヨーロッパなどでは、太陽光や風力のコストが下がって、蓄電池の普及で、電源に占める再エネの割合が増えているというのは間違いありません。日本では景観や送電網など、取り組むべき課題もありますが、やはり海外は参考になると思います。ただ、全部再エネで良いかというと、そんなこともなく、石油というのは、発電の燃料だけでなく、服やプラスチックなどの“原料”にもなります。世の中、石油で作られており、システムを全部変えるというのはなかなか難しいので、簡単に石油への依存は減らせないんですね。ですが、再エネへの批判はあっても、今回みたいな石油への過度の依存を分散させるためにある程度、再エネを広めていく必要があると思います。初期のFIT制度の影響もあって買取価格が高くなっていますが、固定の買取期間がこれから満了を迎えるため、少しずつ収まっていくかなと思いますけれども、そうなったときに、新しい制度をどうするの?ということで、批判するうえでも、肯定するうえでも、再エネの制度がどういうふうになっているのかをもっともっと知っていく必要がありますね。
ユージ:知ったうえで意見を言うことが大事ですよね。
塚越さん:そこが細かく難しいんですよね。でも、もっと知っていく必要はあると思います。