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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

26.03.26

エネルギー市場の危機、各国の動き

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。

情報社会学がご専門の学習院大学 非常勤講師の塚越健司さんにお話を伺います。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら!


「エネルギー市場の危機、各国の動き」


吉田:イランとイスラエルの軍事衝突によって世界のエネルギー市場が大きく揺れるなか、国際エネルギー機関(IEA)が異例の提言を出しました。揺れるエネルギー市場で各国は、どんな動きを見せているのでしょうか。塚越さんに解説いただきます。


ユージ:まず国際エネルギー機関であるIEAは、どんな発言をしたのでしょうか?


塚越さん:IEAは先週、今回のエネルギー危機に対して、政府や企業だけでなく、家庭でもいわゆる「節電」対策を提言しています。具体的には、可能な限り在宅勤務にしたり、高速道路の制限速度を時速10キロ以上引き下げて燃費効率を改善させること。また、公共交通機関を利用したり、代替手段があるなら航空機の利用は避けることなども呼びかけられています。飛行機は特に燃料を使いますよね。またIEAは加盟国による石油備蓄の協調放出も始めています。石油がなくなるという話が大きくなると、市場がパニックになって価格が高騰します。それを抑えるためにも、国家の備蓄を市場に放出することによって、一時的には価格を抑えて混乱を回避しようということです。日本はこの協調放出をするのはもちろん、世界に先立ってよりはやく放出を始めたというニュースもありましたよね。ただ、供給側の対策だけでは抑えることのできない規模の石油危機になっていますので、今回は消費者の対応も強調したことになります。もちろん、経済を動かすためにエネルギーは必要なのですが、できるところは節約して、メリハリを出していきましょうということですね。


吉田:世界的な機関が、家庭にまでエネルギーの節約を求める状況で、世界の国々はどんな動きを見せているのでしょうか?


塚越さん:このIEAの提言には法的拘束力はありません。なので、基本的には各国政府の判断に委ねられます。放出を続けると価格はある程度抑えられますが、備蓄が底をついても戦争が終わらなければさらに高騰しますし、逆に出し渋っても高騰します。さらにいうと備蓄量や輸入先など、国ごとの事情があるので、対応が分かれるんですね。その上で、まずエネルギー自給率が低く中東依存度が高いのがアジア諸国です。例えばタイでは、企業に対して週3〜4日のテレワークを強く要請したり、公務員にはテレワークを義務化するところもあります。まるでコロナ禍の頃のようですね。他にもスリランカでは、車両情報と連動したQRコードを使って「デジタル燃料パス」を導入して、1週間に給油できる上限をつくって、買い占め防止策を行っています。これは2022年にスリランカが燃料不足になった時にできた仕組みだそうで、今後も同様の仕組みが動きだしたということですね。フィリピンは、「国家エネルギー非常事態」を宣言するなど、こうした国々は石油の備蓄が少ないところが多いのですが、日本と比べると危機感が「段違い」という感じですよね。


ユージ:EUの国々の動きはどうでしょうか?


塚越さん:EUは中東への依存はアジアほど高くありませんが、全体として脱ロシアの動きもあり、中東からのLNG(天然ガス)供給に頼る部分もあります。ただ、その中東のLNGは主にアジアに輸出されることが多いのですが、今回その一部が寸断されたので、EU圏にも影響が出ています。国ごとでも例えばドイツは、ロシアからのエネルギー供給を断ったこともあってアメリカからのLNGへの依存が増えています。それでも中東の影響を受けてガソリン価格が高騰しています。イタリアもLNGの依存が大きいので、中東ルートが寸断されている状況で燃料費が上がっています。一方で、フランスはちょっと特殊で、電力全体のおよそ7割を原子力で賄っています。今回の危機でも、ゼロではないにしても、相対的に電力価格の影響を受けにくい国のひとつになっています。


吉田:他に気になる動きを見せた国はどこでしょうか。


塚越さん:インドが独自色を強めているなと注目してます。もともとインドは、ウクライナ戦争の時にも、ロシアの安くなった石油を買いつつ欧米ともコミュニケーションをしてきた国です。今回もインド海軍の護衛のもと、ホルムズ海峡をインド籍のタンカーが通過しています。こうした商業船の通過は他に中国やパキスタンなどの一部の国に限られています。インドはイランとも友好的な関係をつくりつつ、なんとかトランプ大統領とも欧米とも話しているところに注目しています。


ユージ:エネルギー市場の危機、塚越さん、これからどうなっていくと見ていますか?


塚越さん:もうなんとも見通しが立たない状況なんですが、石油危機で日本はすぐにガソリン代の補助を打ち出しましたが、ちょっとどうなのかな、というところがあります。日本は2022年のウクライナ問題以降、電気やガス、ガソリンの補助が結構「平常運転」になってますよね。一方で70年代のオイルショックの時には、省エネに特化して危機を乗り越えたこともありました。補助を長期化すると当たり前になって、逆にみんなもっと使ってしまうじゃないですか。世界が抑えろと言っているときに使うのも問題ですよね。なので、業種とか困窮者に限って支援をするなど、的を絞ったやり方もあり得ると思います。あとは省エネを徹底して、技術開発を進めていくということが必要だと思いますね。

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