26.03.31
年度内の予算成立は困難か… 11年ぶりの「暫定予算」について

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターはダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんです。
神庭さんに取り上げていただく話題はこちら!
【年度内の予算成立は困難か… 11年ぶりの「暫定予算」について】
吉田:2026年度暫定予算が、昨日の参議院本会議で与党や立憲民主党などの賛成多数により11年ぶりに可決成立しました。今朝は、高市総理が目指していた年度内の予算成立が難しくなった背景や、国民生活への影響について神庭さんに解説してもらいます。神庭さん、まず、来年度予算案が年度内に成立しなかった背景から教えて下さい。
神庭さん:最大の原因は、高市さんが1月に衆院解散を打ったから。そりゃそうなるよね、という当然の結果なんですけれども国会日程が厳しくなることは目に見えていたのですが、高市総理は予算案の「年度内の成立を目指す」「あきらめていない」と述べ、並々ならぬ意欲を見せてきました。政治空白をつくって物価高対策や経済対策が滞ってしまうと、国民生活に影響が出るし、野党から批判も出てしまいます。だからこそ、高市さんのメンツにかけてギリギリまで年度内成立の可能性を模索したのかなと思います。
ユージ:審議時間を短縮して成立を急いでいるようなことも報じられているようです。間に合わなかった理由は何でしょうか。
神庭さん:審議時間は例年に比べて大幅に短かったですね。日経新聞によると、衆院の審議時間は約59時間で昨年より35%も減少しました。2000年以降で最も短かったということです。最短が2007年の66時間30分だそうですから、59時間は異例の短さと言えます。審議が長ければいいというものではないですし、野党のクイズ大会みたいな質問や、週刊誌のスクープを読み上げるだけの質問は正直どうかと思います。ただ、短すぎるのもそれはそれで問題で野党は国会軽視だと強く反発しました。それでも衆院は自民が定数の3分の2を超える316議席を占めていますから、強引なドリブルで押し切ってスピード採決できてしまいます。ところが、参院でそのしっぺ返しを受けてしまったわけです。
吉田:参議院でうまくいかなかったのはなぜでしょうか。
神庭さん:参院では自民と維新を合わせても、過半数に4議席足りませんから、衆院のような無茶はできないんですね。北風と太陽じゃないですが、衆院で北風をビュンビュン吹かせまくったら、参院で野党がコートを着込んじゃった、みたいな状況で。高市さんにもメンツがありますし、野党や参院議員の側にもメンツがあると。メンツ対メンツで暗礁に乗り上げてしまった結果が今、ということですね。
ユージ:そうなると、心配なのが国民生活への影響ですけれど。どんなことが考えられますか?
神庭さん:結論から言うと、大きな影響は出ませんでした。というか、影響が出ないようにするために暫定予算を通したんですね。予算というのは年度ごとに編成されます。本来であれば新年度が始まる4月1日より前に成立させておかないと、年金や生活保護、公務員の人件費などがストップして関係各所に影響が出てしまう。そこで暫定予算の出番になります。共同通信によると4月1〜11日の11日間分で総額が8兆5,641億円。内訳をみると、自治体に配る地方交付税交付金が5兆1,000億円あまり、社会保障関係費が2兆7,500億円あまり、高校授業料の無償化に477億円、小学校給食無償化に149億円となっています。
吉田:話題の高校授業料の無償化もピンチだったのですね。
神庭さん:松本洋平文科大臣が週刊文春に不倫疑惑をスクープされてしまい、高校授業料無償化などの目玉法案の審議が滞りました。JNNによれば松本大臣は参院の文教科学委員会で「文部科学省として非常に重要な2つの法案をご審議いただくという重要な局面であります。大変申し訳なく思っております」と謝罪しました。子どもの教育をつかさどる文科大臣が不倫疑惑ってどうなのか、という批判はありつつ、無償化自体は野党も賛成していたのでギリギリで審議に応じ、法案が成立する運びとなりました。私は私立も含めた完全無償化は公立高校の空洞化を招くので反対の立場なんですけれども、ただ、こういう形で土壇場で法案がポシャってしまうと全国の教育現場や保護者に混乱が広がってしまいます。野党が適切なタイミングで矛を収めたのは、現実的な対応で良かったんじゃないかなと思います。
ユージ:そして、暫定予算の期限が4月11日まで、というのは何か意味があるのでしょうか。
神庭さん:これは、憲法で「衆議院の優越」というものが定められていまして、衆院が可決した予算案を、参院が受け取って30日以内に議決しない場合は「自然成立」と言って、衆院の予算案が自動的に成立します。今回、予算案は3月13日に衆院を通過していますので、30日後の4月11日に自然成立となります。ですから暫定予算は11日まで組んでおけば大丈夫なんですね。ちなみに本予算が成立すると、その段階で暫定予算は失効します。2つの予算が重複して存在するわけではなくて、本予算に吸収される形になるんですね。
吉田:予算をめぐる、今回のドタバタ、神庭さんはどう受け止められていますか?
神庭さん:「高市さん」対「野党」のメンツをかけた日程闘争。どこまで行っても国民不在で、我々は何を見させられているのかという気もちょっとしました。衆院では1強の高市自民なんですけれども、参院では与党で過半数を確保できていません。衆院と違って解散がありませんから、連立工作や一本釣りを仕掛けない限りは、2028年の次回参院選までこの状況が続くということになります。数の力が通じない以上、急がば回れで丁寧な合意形成を進めて熟議を尽くすことが大切になってくると思います。