26.04.06
政府検討中の給付付き税額控除「簡易型」について

番組コメンテーターと気になるニュースを読み解きます。
コメンテーターはダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
「給付付き税額控除「簡易型」の課題は?」
ユージ:トレンドネット、今朝のテーマは、「給付付き税額控除「簡易型」の課題は?」です。
吉田:政府与党が給付付き税額控除の「簡易型」の導入を検討していると、先週、西日本新聞が報じました。そこで今朝は、給付付き税額控除の狙いや、「簡易型」の課題について神庭さんに解説してもらいます。改めて給付付き税額控除とはどんな制度なのか、教えてください。
神庭:給付付き税額控除ね、何回言っても噛みそうになりますが、減税と給付金を組み合わせたハイブリッドな仕組みなんですね。「10万円減税しますよ」というときに、そもそも10万円も税金を納めてない方っていうのは恩恵を十分に受けることができません。仮にその方が税金を3万円だけ納めているとしたら、まず3万円分は減税しましょう、そのうえで、10引く3で残り7万円は給付しますよ、という制度ですね。低所得者向けに、引ききれなかった税金を現金給付する制度です。
ユージ:この給付付き税額控除、どういう狙いがあるんでしょうか?
神庭:低所得層の生活を下支えし、「貧困の罠」を防ぐのが狙いです。生活保護を脱するために頑張って働くと、それに伴って税金や社会保険料の負担も増えてしまいます。そうすると、働くだけ損だから生活保護をもらった方がマシじゃんという風になってしまう。それだといつまでたっても貧困から抜け出せませんよね。なので、そういった事態を防ぐために、アメリカやカナダ、イギリス、韓国などが給付付き税額控除を導入しているんです。
吉田:今回、その「簡易型」が検討されているということで、簡易型なのはなぜなんでしょうか?
神庭:給付付き税額控除の実施には、国民の所得や資産を正確に把握することが欠かせないんですが、現状はそういったシステムがないんですね。西日本新聞の独自報道によると、資産の把握には国民の反発が予想されていて、マイナンバーを使った完全なシステムを構築するには「10年程度」もかかるという風に政府関係者がみているということです。ただ一方で、政財界からは早く導入してくれよという風に求める声が出ているので、金融所得や資産を問わない「簡易型」っていうのを先行してやるという案が検討されているということなんですね。
ユージ:簡易型は具体的にどんなものになりそうですか?
神庭:これまだ詳細はわかりませんが、西日本新聞は「労働によって得られた勤労所得を基準に支援対象や金額を決める」「事務作業の手間がかかる控除を外して、給付だけに絞る」あとは「社会保険料を還付する」といった案が出てますよ、という風に報じているんですね。
ユージ:課題はなんでしょうか?
神庭:1つ目の課題は「バラマキ給付金と何が違うの?」という点ですね。コロナ禍以降、たびたび給付金が配られました。正確に資産が把握できないので「住民税非課税世帯=困っている人」ということにして、お金を配ったんですね。ところが、非課税世帯というは65歳以上の高齢者が7割超を占めています。高齢者はフローの年金所得だけでみると少なくみえるんですけれども、長年の蓄えとして資産は多く持っている傾向にあって、非課税世帯だけに絞ってお金を配っちゃうと、働く現役世代との世代間格差を広げてしまうんですね。いやそれ不公平じゃないですかという不信感もあって「給付金より減税でしょう」とか「最初から取らずに残してほしい」という切実な声が盛り上がって、その延長線上で給付付き税額控除が検討されています。それなのに、スピード優先で国民の資産の把握を怠ったまま簡易型で進めちゃうと、結局「特に困ってない人」にもお金をバラまくことになって、これまでの給付金と何も変わらなくなってしまう可能性があるということですね。
吉田:他にはどんな問題がありますか?
神庭:2つ目は、消費減税との矛盾です。給付付き税額控除の導入は非常に大きな改革で時間がかかるので、それまでの「つなぎ」として2年限定の「食料品消費税ゼロ」をやろう、というのが高市政権の方針だったはずなんですね。もし簡易型でさっさと給付付き税額控除ができるんだったら「つなぎ」っていらなくなるわけですから、そうすると消費減税を撤回しないと辻褄が合わなくなってくるかなと思います。
吉田:ではどんな形の改革が望ましいんでしょうか?
神庭:対象を現役世代の労働者に絞るということですね。その意味で、勤労所得を基準にするとか、社会保険料を還付するという方向性自体は悪くないと思うんです。なぜかというとそうすると世代間格差の拡大を防ぐことができるからですね。社会保障国民会議の資料によると、35歳の共働き夫婦で、5歳と2歳の子どもがいるケースっていうのは、世帯年収540万円を下回ってしまうと、アメリカ・イギリス・ドイツ・フランスに比べて税や社会保険料の負担率が重くなるそうです。特に400万円台までの世帯で、そういった傾向が顕著にみられました。そもそもが「貧困の罠」を脱して、国民の労働意欲を促進するための制度ですから、生活保護世帯とか年金世帯にダブって給付するということは避けるべきじゃないかなという風に思います。
ユージ:最後に神庭さんはこの簡易型について、どう思われますか?
神庭:そうですね、急ぎ仕事で中途半端な制度にするのは良くないんじゃないかなあと思います。「困っている人にお金を渡す」というのと同じくらい「困っていない人に、余計なお金、ムダなお金をバラまかない」ということが大事です。国民の制度への納得感というものを高めるには、資産の把握をしっかり進めることが不可欠なんですね。これってコロナ禍からずっと言われ続けていたのに、いまだに「10年かかる」なんて言い訳をしているのは甘えでしかないんじゃないかなと思います。政治家のセンセイたちが資産の把握をされたくないだけなんじゃないか、という風にちょっと勘繰りたくもなってくるんですけども、本当にね、いい制度をつくりたいのであれば、多少時間がかかるのはやむを得ないかなと思います。ですから簡易型でお茶を濁すんじゃなくて、いま言ったような課題を全部潰して、完全版・決定版ですよといえるような、納得感のある給付付き税額控除をぜひ、構築していただきたいなと思います。