26.04.07
SNS上の偽動画やフェイクニュースなどの「収益化」問題について

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターは、ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんです。
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SNS上の偽動画やフェイクニュースなどの「収益化」問題について
吉田:選挙運動に関する与野党の協議会が、YouTubeを運営するGoogleから見解を聴取しました。出席した議員から「選挙中の偽動画などの投稿による収益化は止められないのか」といった意見が出たということです。そこで、SNS上の偽動画やフェイクニュースなどの「収益化」の問題について、神庭さんと考えます。
ユージ:偽動画の問題について、国会でも議論されているようですよね。
神庭:共同通信によると、与野党の協議会で自民の逢沢一郎衆院議員は「SNSと政治の健全な在り方に向き合い、法改正などを念頭に置きながら与野党の議論を詰めたい」と発言。日経によれば、中道の落合貴之政調会長代行は、記者団に対して「2027年春に統一地方選がある。今国会中の法的措置も選択肢としてある」と述べたということです。選挙前は、やはりどこの政党が有利だ不利だという党利党略もありますから、どうしても突っ込んだ話し合いが難しいです。政局的に落ちついている今のような時期に、与野党が立場を超えて議論しておくというのはいいことじゃないかなと思います。
吉田:ところで、政治関連のフェイクニュース、過去にどんな問題が起きたのですか?
神庭:いくつかあるのでパターン分けしてみましょう。1つ目は「悪ふざけタイプ」です。2023年には岸田元総理に卑猥なことをしゃべらせたニュース画面風のクソコラ動画が、日テレのロゴを勝手に使って問題になりました。そして2つ目が「確信犯タイプ」。1月にアメリカでデモに参加した弁護士の女性が逮捕された際に、ホワイトハウスがこの女性が号泣しているかのように加工してXで公開したんですね。ホワイトハウスの広報担当者は「法の執行は続きます。ネット上のネタも続くでしょう。本件にご注目いただき、ありがとうございます」と投稿したということです。そして3つ目が、「金儲けタイプ」。実はこれが一番、収益化問題と関係してくるんですね。
ユージ:金儲けタイプについて、詳しく教えてもらっていいですか。
神庭:はい。これはYouTubeとかTikTokの切り抜き動画などが最たる例ですね。政治系の切り抜き動画、ここ数年で急増しています。NHKの調査によれば、332のチャンネルで切り抜き動画や関連動画も合わせた総再生数が35億回超に達したということです。再生数1億超えのチャンネルも5つあったということです。もちろんマジメにやっている人もいるんですけど、とにかくクリックさせるために、過激な編集とかミスリードの発信をしている投稿者も少なくありません。なかにはですね、年収3000万円を稼ぎ出す切り抜き職人もいるということなんですね。
ユージ・吉田:3000万円!すごいですね。
神庭:悪ふざけとか確信犯でやっている人とか組織の場合、金銭と関係なく投稿を続けると思うんですよ。でも、金儲けでやっている場合は、収益化を止められて広告が入らなくなったり、広告単価が激落ちしちゃったら商売あがったりですから。「じゃあやめようか」となる可能性が高いです。だからこそ、フェイク対策での「収益化停止」というのが真剣に国会でも議論されているわけですね。衆院選のときに、「AIおばあちゃんに気をつけて」とお伝えしたのを覚えてますでしょうか。架空のAIおばあちゃんが街頭インタビューで、どぎつい政治批判を繰り広げて拍手喝采を浴びたり、テレビのスタジオで党派色の強いコメントをしているかのような動画が選挙の前後に拡散されていたんですけれども、ああいうものも収益化が止まれば一掃されるかもしれません。
吉田:選挙や政治以外でも収益化停止というのはあるんですか?
神庭:もちろんあります。Googleは昨年、YouTubeの収益化ポリシーを変更して、大量生産されたコンテンツや繰り返しの多いコンテンツを収益化の対象外とすることを明確化しました。これはAIによる粗製濫造を念頭に置いた対応だとみられています。ITジャーナリストの篠原修司さんに取材したFRIDAYデジタルの記事によれば、規制強化に巻き込まれる形で、音声合成ソフトを使った「ゆっくり解説」の動画まで収益化を止められるケースが続出しているということです。またイラン戦争を受けてか、Xは先月、戦争に関するフェイク動画の収益化を止める方針を打ち出しました。AIで生成したことを明示しないと90日間の収益化停止。2回目以降は、永久停止という厳しい対応です。これとてもいいことだなと思う反面、いや本気出せばそこまでできたんかい!というのが正直なところ。戦争以外での災害だとか選挙のときも同じような対応してくれよという風に思いますけどね。
ユージ:広がっていく一方のこの偽動画、どう対策するべきなんですか。
神庭:そうですね、選挙や政治は民主主義の土台ですから。外国勢力からの世論操作などの懸念もあるわけなんで、まったくの野放しというのはまずいんじゃないかなと思います。いまやYouTubeって地上波のテレビ局1つ分くらいの影響力がある、という風にもいわれてるんですよね。テレビだって放送法の外資規制があるわけで、SNSとかYouTubeがほとんど外資の企業が多いですからね。これが無法地帯になっていることの方がおかしいんじゃないかと思います。じゃあね、「選挙期間以外はどうするんだよ」とか「オールドメディアだけ例外扱いはズルいだろう」とかもちろん色々な論点があるんですが、少なくとも選挙期間に関しては、オールドメディアも全部ひっくるめて政治・選挙関連は収益化停止、というのがシンプルかつ平等でいいんじゃないかなという気もするんですけどね。
ユージ:どうしてもお金がもらえるってなると、話題に取り上げてお金になりそうな記事ばかりが増えていってそれで結局その公平性が保てないっていうことがあるんで、確かにその「政治期間中は」っていう考え方はあるかもしれないですね。