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26.04.08

『変形労働時間制』の拡充、働き方改革の論点に浮上…懸念点は?

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターは、情報社会学がご専門の学習院大学・非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


『変形労働時間制』の拡充、働き方改革の論点に浮上…懸念点は?

吉田:繁忙期と閑散期で労働時間を調整し、期間全体で法定労働時間内に収める「変形労働時間制」。こちらの制度の拡充が、政府の働き方改革の論点に浮上しています。日経新聞によりますと、1日8時間の原則が人手不足を助長しているとして、経済界は、働く時間を柔軟に決めやすくするよう、求めています。塚越さん、この「変形労働時間制」について、詳しく教えてください。


塚越さん:まず基本を確認しておくと、労働基準法だと労働時間は原則で1日8時間、週40時間です。ですが必要な労働時間は繁忙期と閑散期で変わったりしますよね。なので「変形労働時間制」は、時期に合わせて働く時間を変えましょうという仕組みです。例えば、忙しいときは1日10時間働き、次の日とかは6時間にしましょう、という感じです。月単位とか年単位など、一定の期間でみれば法定内の労働時間に収まるという風にしましょうということなんです。この制度を利用するには事前に労使で協定を結ぶ必要がありまして、建設業などに多い年単位での適用の場合は、30日前までに締結しなければなりません。また、合意した労働時間は原則として、期間中に変更はできません。厚労省の調査によりますと、この「変形労働時間制」を導入している企業は、2025年時点でおよそ6割です。1週間とか1ヶ月単位でも導入できるんですけれども、年単位で導入しているケースが一番多いということですね。


吉田:メリット、デメリットはそれぞれどのようにあるんでしょうか?


塚越さん:メリットとしては、まず労働時間の調整ということです。観光業とかは典型ですけれども、繁忙期と閑散期で忙しさが違うので、繁忙期に多く働いてもらう代わりに、閑散期は短めに抑えましょうということです。なんでもかんでも1日8時間じゃない、よく言えば「メリハリ」をつけてもらうということですね。また企業のメリットとしては残業代の削減も挙げられます。繁忙期の労働時間を10時間に設定すると、本来だと8時間プラス2時間となって2時間分の残業代が出るんですけれども、これを出さなくてよくなるということなんですね。一方で「変形労働時間制」のデメリットになると、いまの裏返しですけれども「残業代出ないじゃん」ということですよね、労働者にとっては。繁忙期に多く働いても残業代出ない、人によってはやる気に関わる。金銭も関わる。あとはですね、勤怠管理が複雑になるということです。1日8時間の固定と比べると複雑になるので、手作業の場合はミスが増えてしまったり。社内で誰がどのように働いているかわからないのでスケジュールが組みづらくなる、なんていうデメリットもありますね。


ユージ:この「変形労働時間制」について、経済界からは拡充を求める声があがっているようですね?


塚越さん:そうなんです。日本商工会議所は3月に、制度の見直し・拡充を求めています。例えば事前に決めた計画が適用された後でも変更できるようにしたり、労使合意に必要な期間の短縮を求めて、もっと柔軟にやってくださいということなんです。中小の建設業で要望が多いということなんですが、建設は夏は暑すぎて作業を中断するなど、天候によって計画が変わりやすい。あと世界経済の影響で「資材が届かない」といった取引先との都合もある、などの理由で柔軟にしてほしいということで、それはちょっとわかる気がしますよね。さらに、今の法律は残業は月45時間となっていますが、変形労働時間制が柔軟になると残業に頼らず業務ができるということで、中小の経営者としては残業代も昨今の賃上げ社会の中では削りたいといった意向もあるかなと思います。やっぱりといいますか、これに対して労働組合は反発しています。簡単にいうと、こういう「変形労働時間制」ってそもそも「例外」としてつくられていて、だから手続きがいろいろ決まっているわけです。それを緩めるとなると、なんだかんだでもっと「働かせる」社会になってしまうじゃないか、ということでちょっと議論が追われてるということもあり。他にもいろんな議論がありまして5月を目処に議論をとりまとめるということなので、これから両者の論争が本格化するとかなというところですね。


ユージ:「変形労働時間制」の拡充。塚越さんは、どうご覧になっていますか?


塚越さん:私も労働者なので、その立場でいうと、残業時間を組み込むのは少し都合が悪くなってしまうかなあと思ってしまいます。あと制度改革の前に、やるべきこともあります。残業するときには企業が「36協定」というものを組んで、残業代を出すきまりがあるんですが、とくに中小企業ではあまり運用がよくないケースの報告が多いんですよね。なのでまずは制度をちゃんとつくって、ちゃんと制度をやったうえで、それでも足りない場合にこういった「変形労働時間制」を入れていくということが重要かなと思います。あとやはり日本は正社員に限ると、圧倒的に欧米と比べて労働時間が長いです。その中で柔軟にさせること、働かせすぎることは問題になる。やはり働き方改革の目的は働く時間を短くしようということなので、そこのバランスをどう取っていくかということも重要です。個人的には、やはりパートタイマーの方とかが働くための税制を優遇する等で、もっと働く人を増やしていくことも重要かなと思います。


ユージ:塚越さん、ありがとうございました。明日もよろしくお願いします。

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