26.05.20
フリーランスから会社員への転職が増加…その背景は?

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターは情報社会学がご専門の、学習院大学・非常勤講師 塚越健司さんです。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら!
フリーランスから会社員への転職が増加…その背景は?
吉田:ITmedia ビジネスオンラインによりますと、フリーランスから正社員に戻る人が増えている、ということです。塚越さん、こちらについて詳しく教えて下さい。
塚越さん:まず転職支援サービス「リクルートエージェント」の仲介実績によると、2024年の4月〜9月に正社員に転職した人は、5年前と比べて2.8倍になっています。こちらは競合の「doda」のデータでも2.7倍になっているので、やはり高くなっています。中でも、IT系のフリーランスの方がIT企業や建設・不動産業界などに転職するケースが目立ったということで、今回はフリーランスの中でも、特にIT系に転職するケースに注目したいと思います。そんなフリーランスですが、市場自体は拡大しています。ウェブ上での仕事仲介サイト「ランサーズ」によると、2024年、副業等も含めた広い意味でのフリーランス人口はおよそ1300万人で、10年前に比べて40%程度増えているということです。つまり、フリーランス市場は成長しているけれど、正社員に戻る人も増えている状況になっています。
吉田:こちらは、どのような背景があるのでしょうか?
塚越さん:フリーランスに特化した人材サービス企業「Hajimari」の担当者は、要因を2つあげています。1つ目はコロナの反動です。2020年〜2021年はステイホームということでIT需要が一気に増えたので、IT分野では経験の浅い人でもフリーランスでたくさん仕事ができる環境になりました。一方で2023年以降、コロナも落ち着くとともに市場の成長が鈍化して、収入的に厳しくなって正社員に戻りたいという相談が増えたということです。2つ目は、やはり「AI」です。AIで仕事が減ることに不安を感じて、IT分野では正社員に戻る人が増えているということです。また、フリーランスから正社員に戻る人にはいくつかのパターンがあります。例えば、スキルが十分ではないままコロナ禍で独立した2、30代の若手。また、AIの台頭で今後が厳しくなることを見越した人達。さらに、技術はあるので、それを組織に深くコミットして収入を増やそうと考える、どちらかといえば上昇志向のパターンもあります。
ユージ:何か独立ブームみたいなものがありましたよね。
塚越さん:そうですよね。
ユージ:勢いがあるなと思いました。
塚越さん:そういった人が沢山いるのですが、いろんなケースがありますが共通しているのは、フリーランスの収入構造があまり恵まれていないという点です。もちろん、フリーランスといっても様々で、今回のようなITエンジニアでスキルが高い場合は、年収が1000万円を超えるケースも結構あります。実際に「1000万円超えられそうですか?」と聞くと「超えられそうです」と考えるIT系の人が、38%「そう思う」というデータもあります。これは一部の業種に限る部分もあると思いますが、「それだけ稼げるならフリーランスでいいじゃないか」と思う人もいらっしゃると思いますが、状況は複雑です。フリーランスは基本的に自営業なので、会社員の方とは違って社会保障とか会社が半分折半してくれないです。私も学生さんに言うのですが、正社員で一番違うのは会社が社会保険を半分折半してくれるということで、これはやっぱり結構大きいです。特に退職金や有給もなく、ボーナスもフリーランスもないです。身体を壊したら一気に収入が無くなります。なので、金額的に言うなら一般的な会社員の1.5倍〜2倍を稼いで、やっと生活水準が会社員の方と同じになる構造的な問題もあります。さらに、AIに関する仕事も二極化しています。例えば生成AIを使って、AIにどう仕事をさせるかを決める「設計者」の人は、他の方より月収が10万円〜20万円多くなる傾向がありますが、従来のプログラミングのような仕事はAIが代わりにできるようなって下がり、仕事が減っていきます。なので、若手の方が「今のうちに正社員に戻ろう」なんて思うことも分かると思います。逆にスキルの高い方はフリーランスでも活躍できますが、大事なのは企業に入ると、より深いデータにアクセスできます。持っているスキルを使って、AIと組み合わせる。そうするとさらに業績があがって、逆に言えば収入があがるのでスキルの高い人にとっても正社員がちょっと魅力になっている部分もあると思います。
ユージ:「フリーランスから正社員に戻る人の増加」。塚越さんは、どうご覧になりましたか?
塚越さん:企業は人材不足なので、特に若手の方を正社員にして、社内研修をしても良いと思います。若手の方も地道に力をつけていく選択肢もあるので良いと思います。一方で、フリーランスの方に転職の条件を聞くと給料面よりもリモートワークなど、労働環境を重視している方が多いです。でも今は会社員でもリモートワークとかできるので、そういう意味ですと一時期みたいな「会社員=不自由」「フリーランス=自由」という単純な構図ではなくなってきている状況だと思います。自由に選ぶということで、フリーランスから会社員に戻る方もいますし、逆に状況が変わればまたフリーランスに戻るとか、割と自分で決められる社会になってきていると思います。それでも選ぶって大変ですよね。
ユージ:大変ですよね。
塚越さん:転職もそうですけど、選ぶことって力がいるのでそこで疲れているところもあると思います。
ユージ:言われたことを対応する仕事のほうが楽だったりする場合もありますからね。
塚越さん:そうですね。それも反映していると思いますが、いろいろ状況を見て考えていきましょう。