26.10.08
街から消えるガソリンスタンド。“40年問題”とこれから

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターは情報社会学がご専門の、学習院大学・非常勤講師 塚越健司さんです。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら
「街から消えるガソリンスタンド。“40年問題”とこれから」
吉田:帝国データバンクによりますと、2026年に倒産や廃業となったガソリンスタンド事業者は、8月までで、全国で144件と、去年と比べ1割ほど増えていて、過去10年で最多ペースとなっています。
ユージ:確かにうちの近所でもね、本当に長年お世話になっていたガソリンスタンドが、ちょっと今年で閉めますということでご挨拶されましたよ。身近でも起こっているのですが、塚越さん、なぜガソリンスタンドが減っているのでしょうか?
塚越さん:まず、ガソリンスタンドのピークは1990年代の半ばで、6万軒を超えていました。それが2025年度は2万6,000軒程度と、ピークの半分以下になっています。原因はいくつかありますが、まずは自動車の燃費が向上したことや、ハイブリッド車やEVなどが登場して、ガソリンの需要が減っていること。次に、やはり人口減少でそもそもお客さんが減っていることです。もう一つは、人手不足や後継者不足、経営者の高齢化という供給側の人手の問題があります。加えて、ガソリンスタンドというのは価格競争が厳しくて、1リットル売ったときの利益が小さいので、洗車や車検などガソリン以外の収入がないと経営が難しい店舗もあります。これに重なってくるのが、いわゆるガソリンスタンドの「40年問題」です。ガソリンスタンドにあるガソリンタンクは地下に埋まっているのですが、設置から40年を超えると内部のコーティングなど、漏えいを防ぐための対策が必要になります。昨今の水道管などと同じ、インフラの問題です。ただ、これらの費用は数百万円〜1,000万円程度かかる場合があるということで、「ここで1,000万円近く投資して店を続けるのか、それとも自分の代で廃業するのか」という判断を迫られている方がいるということなんですね。
吉田:ガソリンスタンドの減少、車社会、地域インフラへの影響はどうでしょうか?
塚越さん:まず資源エネルギー庁によると、町や村にスタンドが3軒以下しかない市町村は、2025年3月末の時点で381市町村で、全国の市町村の2割を超えています。地方では車が単なる移動手段ではなくて、通勤、通院、買い物に欠かせない生活インフラです。さらに農業機械、漁業、物流トラック、そして冬の灯油の配送にも燃料が必要です。そのため、ガソリンスタンドがなくなるというのは、「ちょっと給油が不便になる」という話ではなく、生活そのものの基盤が維持できるかという問題になってきます。もう一つ重要なのが災害時です。地震や台風で停電したときにも、自家発電設備を使って給油を続けられる「住民拠点SS(サービスステーション)」が全国に整備されています。2026年3月末時点で1万4,000か所以上ありますので、スタンドは災害時の燃料供給拠点という役割も持っています。
ユージ:他にも、給油以外で地域に貢献していたこともありますよね?
塚越さん:そうですね。これは特に地方で重要なのですが、ガソリンスタンドは「人がいる地域の拠点」になっています。例えば地域によっては、高齢者のおうちに灯油を配達するときに、あわせて安否を確認する、見守りをする活動も行っています。ほかにも多くの都道府県で、ガソリンスタンドが子どもや女性が危険を感じたときに逃げ込める「かけこみ110番」になっています。単にガソリンを売るだけではなく、コンビニや郵便局と同じように人がいる、地域に残っている数少ない拠点になっているという側面があるわけですね。
ユージ:そんなガソリンスタンドの跡地は、どんな使い方が考えられるでしょうか?
塚越さん:難しいのが、先ほどお話しした地下のタンクです。これを除去して土壌を調査したり浄化するのに費用がかかります。そのため、すぐには活用できない跡地もありますが、立地がいいのでコンビニや駐車場になるケースがあります。一方でこれから重要になってくるのは、全部やめて別の店にするのではなく、今あるガソリンスタンドを「複合施設」に変えていくことです。地域の拠点として、カフェやコミュニティスペースなど、次世代型のサービスステーションとして、給油だけでなくEVの充電やコンビニ、コインランドリーなども設置した複合施設にするなどの活用方法があります。大手ではコンビニなどを併設する動きがありますし、地方では移動販売や高齢者の見守り、コミュニティカフェなどと組み合わせて、地域の拠点にしているところがあります。結局のところ、人口が減る中でこれまで通りとはいきません。ただ、大手ではない独立経営のスタンドが、自前で複合施設をつくることはなかなか難しいですよね。国の調査でも、スタンドが少ない自治体の6割が、スタンドの維持を問題だと感じているのに、実際に対策をしているのは1割ほどです。
やはり自治体が動いていって、ここは重要だというところには、別の業種との連携を促すとか、今後対応が迫られていくと思います。どうやって作っていくか、人口は減っていきますけれど、進めることは重要です。ユージさんどうでしょう。ガソリンスタンドはどんな場所ですか?
ユージ:僕にとっても車に乗るので欠かせない場所ですが、ガソリンスタンドだったのだろうという跡地が中古車店や駐車場になっているのを見かけると、ガソリンスタンドの数が減っているなと思います。給油が必要な車にとってはまだまだ必要なインフラだと思う。
塚越さん:やっぱり顔見知りになるじゃないですか。
ユージ:なりますなります。
塚越さん:そこは結構大きいのでね、なんとか活用していただきたいですね。