network
リポビタンD TREND NET

今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

26.10.07

世界各地で摘発が相次ぐ『スマホ農場』…情報操作への懸念

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。

情報社会学がご専門の学習院大学 非常勤講師の塚越健司さんにお話を伺います。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら!


『世界各地で摘発が相次ぐ『スマホ農場』…情報操作への懸念』

吉田:「スマホ農場」という言葉、最近よく目にしたり耳にしたりすることが増えましたが、何なのか詳しく教えてください。


塚越さん:「農場」という言葉ですが、要は大量のスマホやスマホの内部にある基板を一カ所に集めて、パソコンから一斉に操作する拠点のことを「スマホ農場」と呼んでいます。


ユージ:農場のようにスマホがぶわーっとあるイメージですね。


塚越さん:そういうイメージですよね。スマホを何百台、何千台、ときには何万台と置いて、SNSの「いいね」や動画の再生、広告のクリックなどを人為的に増やすことができます。世界各地にあるとされていて、こうした数字の水増しだけでなく、海外では詐欺やサイバー犯罪などに利用され、捜査機関に摘発されるケースもあります。朝日新聞がYouTubeでスマホ農場の仕組みを解説しているグループに連絡を取り、実際に取材しています。取材現場に現れたのは、春から大学に入学した18歳の男性で、記者が自分のXのアカウントを伝えると、1分もたたないうちに、ある投稿の表示回数が8,000件近く増えたとのことで、すぐに水増しができることを実証しました。この男性によると、茨城県つくば市周辺の建物3軒に、1,000台を超えるスマホや基板を集め、パソコンにつないで一斉に操作して、YouTubeの再生やXの「いいね」などを繰り返していると言います。この再生数やいいねはインフルエンサーや一般企業に販売していて、YouTubeの場合、再生1,000回で175円から750円くらいだということでして、2024年ごろから運営を始めて、年間の注文件数は「数千万~数億単位」。同年代を中心としたグループで運営しているということです。取材には応じていますが、実際の拠点を見せることは断っていました。男性の説明によると、拠点の二重扉の先には棚が60台並び、スマホ本体や内部の基板が収められているということです。24時間稼働させるため、熱くなっちゃうので基板などは特殊な液体に浸して冷却しているということです。通信環境や電力も必要なので、ある程度の設備や運営費はかかるということですね。


吉田:スマホではなく、スマホに入れる「SIMカード」を何十枚も収め、まとめて操作する機器を大量に使う、「SIMファーム」というものも存在しているんですか?


塚越さん:そうなんです!実はスマホ本体が必要というわけではなくて、大事なのは「SIMカード」なんですね。その「SIMカード」だけを大量にまとめて動かす「SIMファーム」というものもあります。例えば去年、バルト三国のラトビアで大規模なSIMファームが摘発されています。ここでは、世界80カ国以上の電話番号を犯罪者などに貸し出すサービスが提供されていたと言います。これを使うと、SNSなどの本人確認を行って偽のアカウントを大量に作ることができてしまい、実際、ラトビアのケースでは、4,900万件を超えるアカウントが作られて、詐欺や恐喝などさまざまな犯罪に悪用されていたとされています。さらに今は、大がかりではなく小規模なスマホ農場を作ることができてしまうということで、アメリカのセキュリティー会社が調べたところ、スマホの基板20枚が入っていて、パソコンで一括操作できる装置が一般の通販サイトで購入できたとのことで、そういった端末を操作するソフトもネット上で提供されているということです。これで大量のいいねが押せるわけですが、必要に応じてSIMカードなどを組み合わせれば、大量のアカウント作成にも利用できます。この調査では、詐欺まで一式で行う構成でも初期費用は79万円ほど、月の運営費は6万~7万円ほどと試算されています。生成AIによって操作を自動化するプログラムも作りやすくなっていますので、スマホ農場を動かすハードルそのものが下がっているんですよね。


ユージ:「スマホ農場」の目的は何なんでしょうか?


塚越さん:一番分かりやすいのは、先ほどお話ししたように、SNSの「いいね」や動画の再生数などを増やして、それを売ることですね。ただ、大量の偽アカウントを作って詐欺などに利用したり、特定の情報を大量に拡散して、実際よりも多くの人が支持しているように見せることは問題ですよね。大量のいいねがついていたりすると、すごいことなのかなと思いがちですが、その裏には1人とか1組織がいて、それが何十万ビューという数を稼いでいるだけで、本当はみんなが思っているんじゃなくて、ただ見えているだけ、でも、影響力があるのかなと思っちゃう可能性がありますよね。特に政治の投稿だとちょっとまずいかなということで、こういった仕組みも覚えておいてほしいと思います。


ユージ:「スマホ農場」について、塚越さんはどうご覧になっていますか?


塚越さん:基本はSNSなどのプラットフォームの規制は大事で、進んではいるんですけれども、やはり、いたちごっこでなかなか難しいですよね。なので私たち、「数字がすべてではない」ということを頭に入れておきましょう。たくさんいいねが押されていても、本当かな?と思わないといけない。かといって、全部が全部、うそということではないし、その辺は人間心理として難しいじゃないですか。なので、現実の人とも話をして、特に政治の話はなかなか話しづらいこともありますけれども、ネットではこうなってるけど、現実でしゃべってみたら、そう思ってない人もいっぱいいるとか、そういうところでバランスを取っていくことも重要かなと思うので、「ネットの多数派が必ずしも現実の多数派ではない」ということも、頭に入れておくことも必要だと思います。

  • X
  • Facebook
  • LINE
Top